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10章「狩人たちの見る夢」
やり残したことをしに行く
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―――――
狩人の夢に戻る。
助言者の家に入ると、車椅子の狩人/助言者は眠り込んでいた。人形さんは相変わらず部屋の片隅でカタカタ動いている。起こさないように一旦外に出て、備え付けられていたベンチに2人並んで座った。
「どうしようかね…」
「………………」
アイテム的には先に進んでも大丈夫っぽいが、よくよく考えてみると今まで踏破したエリアで少々やり残したことが残っていることに思い至った。今の今までエリア主戦のはずみですっかり頭から抜けていたのだ。
「じゃ、それをやりに行くとして……、だ」
「?」
不意にヒビキが立ち上がる。それを見て?マークを頭上に浮かべるクロノ。
「銃器を新調しようぜ!」
…
ということで、2人は水盆の使者の前に来た。隣には「啓蒙取引」とやらができる水盆がある。あとでそちらもラインナップだけは見るつもりだ。ある程度狩人証を手に入れたため、使者の売る品揃えが大幅に増えているのが嬉しい。輸血液・水銀弾を始めとした消耗品、トニトルスやローゲリウスの車輪、パイルハンマーなど、見覚えのありすぎる右手武器が並んでいる。だが、今回は左手武器である銃器が目的だ。
ちなみに、使者がいつの間にか増えていた。鎮静剤を持っていたり白い丸薬を持っていたり、見ていると可愛く思えてくる。
――――十分近くうんうん悩んだ後、ヒビキは《銃槍》と《ルドウィークの長銃》を買う。クロノは《銃槍》と《火炎放射器》を買った。ルドウィークの長銃と暗殺者の弓剣を背にクロスさせて背負うと、なかなか様になる。銃槍は厳密にいえば左手武器ではないのだが……物理攻撃と銃撃の両方ができる武器は魅力的だ。
狩人証を持っていないのでラインナップには無かったが、アルフレートの《教会の連装銃》や助言者がちらりと言っていた《ロスマリヌス》や《エヴェリン》、《教会砲》や《大砲》に《貫通銃》。あとデュラの仲間のうちいなかった者が使っていたという携行型の《ガトリング銃》。特殊なものとして雷属性を帯びた《雷撃銃》なんかが左手武器に属するようだ。
火炎放射器は加速度的に水銀弾の消費がかさむ代わり、一定時間炎を噴射し続けられる。ロスマリヌスはその神秘属性版……これを聞いて(神秘の霧吹き……)と思ったのは秘密。
「まあ、いいか」
「………………」
銃槍
製作者:??? 種別:ギミック武器
ランク:S+
工房の異端「火薬庫」の手になる「仕掛け武器」
簡易な銃と、槍を組み合わせた試作品であり、失われたカインハーストの武器を見真似たものともいわれている。
単体としても特筆すべき性能を持つ武器ではないが、銃にもなる「仕掛け武器」は他にはない特別なものだ
ルドウィークの長銃
製作者:??? 種別:獣狩りの銃器
ランク:S+
特に医療教会の狩人が用いる銃器
教会の最初の狩人、ルドウィークが用いたことで知られ
長く重い砲身は、速射性を犠牲に射程距離を高めるものである
ルドウィークを端とする医療教会の工房は、狩人に老ゲールマンとは違う流れを生み出した
より恐ろしい獣、あるいは怪異を狩るために
火炎放射器
製作者:??? 種別:獣狩りの銃器(特殊)
ランク:S+
医療教会の一部が用いる特殊銃器
血の混じった水銀弾を特殊な触媒とし、高熱の火炎を放射し続ける
決して効率の良い武器とは言えないが、時には炎の海が必要なこともある。何よりこの街、ヤーナムは、不浄な獣に満ちているのだから
買った武器のテキストはこうなっていた。
…
―――現在、買った銃器の試し撃ちも兼ねて隠し街ヤハグルに来ている。元から持っていた暗殺者の弓剣と月光の聖剣は、血石の欠片や二欠片を使って強化&修理しておいた。因みに、医療教会の工房の塔の一番下で待ち構えていた巨大な人獣の敵―獣憑きは討伐済みである。倒すとカレル「獣」を落とした。
―パァン!パパパン!!
結論から言うと、銃槍は名前通りの見た目と性能で変形前は槍として、変形後は銃として扱える。ルドウィークの長銃は着弾直前に弾が破裂する仕組みらしく、射程はライフルと見紛うほど長い。火炎放射器は連続して炎を放射し続けられるが、水銀弾をバンバン消費してしまう。ただ獣は大体炎に弱いのが多いので、いざという時は使えそうだ。
前来た時にはあまり意識していなかったのだが、そこらの物陰にヘムウィックの魔女とよく似た外見の老婆や狂犬がいた。老婆はこちらに飛び掛かって目を抉ろうとしてくるし、狂犬はジグザク回避を行うので銃撃が当てにくい。ただどちらも迫ってくる直前は隙だらけなので、そこを利用することで倒すことができた。
――――その調子でヤハグルの敵を倒していると、ある場所で異質な敵を見つけた。それは何とも言い難い異形で、骨のごとく細い手が3本、前左右に生えている。感じられる気配からして希少な敵か?
(…………何かレアアイテム落としそうな感じだな。逃がしても出直しで戻ってるんだろうか)
「…………?」
「いやなんでもねぇ。あれ見てくれ」
クロノの意識を視界の先で蠢くその敵に向けさせる。
「…………??」
あれがなんなのかわからない、といった感じで首を傾げてこちらを見てくる。「そんな顔で見るな俺だって分かんねぇんだから、とにかく倒すぞ」と言い返し、まだ気づいていないその敵の背後に回り込んで2人で挟み撃つ位置に移動する。
「…………行くぞ!」
囁くような音量で、呟く。同時に、銃声が鳴り響いた。
…
―――――異形の敵(さまよう悪夢というらしいが)をさくっと倒し、ドロップしたのは《血の岩》や《血石の二欠片》。レアな強化素材だ。予想外の収穫にテンションがやや上がり、そのまま隠し街を逆行する。今現在隠し街の探索できる範囲はかなり狭く、全てを探索し終えるのにそんなに時間はかからない。
最初の地下牢近くに差し掛かった時、クロノが何かに気づいた。
「!」
ヒビキの装束の裾を掴んで、ある一点に視線を向けている。
「?…………誰かの声?」
声というよりか非常に儚い息遣いが聞こえる。その元に向かうと、牢の陰に黒い衣装に身を包んだ女性が蹲っていた。酷く怯えているようで、「あのー?」と声をかけても返事がない。
(教会の信徒か…?)
背に白い刺繍布が垂れており、そのことから纏っているのは教会装束とわk……というか同じのを持っていたような気がする。装束を換装していなかったのですっかり忘れていたが。ゲーム世界特有の瞬間早着替えで装束を「教会の黒」に替える。
「あのー……大丈夫ですか―…?」
「…………!」
今度は大丈夫だったようだ。黒い髪に水色がかった灰色の瞳が、こちらを向く。
………………………女性はどうやらヒビキたちと同じく人さらいに捕まってここに来たらしい。安全な避難所がないか訊いてきたので、オドン教会を教える。すると、女性(アデーラという名前だそうだ)は教会式の一礼とともに、ありがとうございますと、あるアイテムを2人に1個ずつ渡してきた。
アデーラの血
医療教会の尼僧アデーラの「施しの血」
HP回復に加え、一定時間更にHPを回復し続ける
教会の尼僧たちは、優れた血を宿すべく選ばれ調整された「血の聖女」である
その施しは、医療教会と拝領の価値の象徴なのだ
有難くもらい、アイテムボックスにしまう。アデーラが立ち去ったのを見送って、2人は灯りへと向かった。灯りの傍に腰を下ろし、そういえばこんなのを診療所から見つけていたんだよなと思って一つ取り出す。
ヨセフカの輸血液
ヨセフカの診療所、その女医に渡された輸血液
精製されたそれは感覚効果が高く、より大きくHPを回復する
精製の時間と手間からは、一般的なものではない
恐らくは、女医の自製によるものだろう
***
―――――――灯りからの転移で、2人は聖堂街に来ていた。聖堂街は非常に広く、ざっとしか探索していないので見落としがないかどうか見に来たのだ……って、いきなり顔見知りと遭遇してしまった。きちんと車輪を背負っており、銃器が教会の連装銃からルドウィークの長銃になっている。
(あ)
といっても、相手はどうやら一心に祈っているようでこちらには気づいていない。その前には、精緻な文字や文様が彫り込まれた大きな墓碑が立っていた。その墓碑には《ローゲリウスの車輪》と、長鎌のような武器が立てかけられておりその前に鈍い金色のアルデオが置かれている。それを目にして、前彼と会った時に言っていた一言が脳裏によぎった。
―――「私は師を解放したい。処刑隊の一員として、正しく師を祀りたいのです」
……何とも言えぬ気分になり、少なくとも祈りの邪魔をしてはいけないと2人は頷きあってその場から足音を忍ばせて立ち去った。その後、探索していなかった(と思われる)場所に足を向ける。「教会の黒」シリーズが落ちていた辺りの裏路地に、明かりのついた家が2軒あった。その片方の家の窓越しに話しかける。
「………………………狩人様、ですか?」
若い女性の声だ。
「そうだ」と返すと、長い沈黙の後「安全な場所を探しているのです、どこか教えていただけませんか?」と答えが返ってきた。暫く考え込んだ後、オドン教会を教える。すると、「ありがとうございます、狩人様」と明かりに照らされた人影が一礼し、移動する様子が見えた。あとで教会に行ってみようと思いつつ、向かい側にあるもう片方の家の窓越しに話しかける。
「何だ?」
男性の声だ。何となく、偏屈そうな感じがする。不機嫌そうにも聞こえるその声が次いで発したのは「狩人さん、どうやってアリアンナを避難させたんだ?」という趣旨のものだった。どうやっても何も、避難所を教えてほしいと頼まれたから答えただけなのだが。事実をそのまま答える。その後、向かい側のアリアンナというらしい女性と同じく安全な場所を訊かれた。少しヒビキは考え込む。
(クロノが診療所の女医ともやりとりしてたからな…、診療所も教えることはできるのだけども)
クロノ曰く、最初に狩人の夢から直行した後に壁越しに話した時とは、声音が若干違っていたらしい。最初の時は何回か話すとその度に《ヨセフカの輸血液》を1個ずつくれはしたものの、診療所に人を入れようとはしなかった。クロノがやりとりした時にはもう最初の女医ではない偽物が成り代わっている可能性がある。この辺りは他のゲームで似たようなことがあった、そこからの経験だ。
(………………)
色々な可能性を考慮して、「ヨセフカ診療所だな」と答えた。「…………そうか。あんがとさん」とその男は答え、移動する様子が見られた。2人はその場から離れる。そして灯りまで歩き、その傍で座り込んだ。
「………………【なんでオドン教会を教えなかったんだ?】」
「…何となく、というかほぼ間違いなくあの男は天邪鬼だろうからな」
あの偏屈そうな男はヨセフカ診療所を教えれば、オドン教会に。オドン教会を教えれば、ヨセフカ診療所に行くのだろう。オドン教会の方が安全そうだから教えただけだ。
「【次はどうするんだ?】」
「…………禁域の森に行ってみるか……。合言葉を一応覚えたとはいえ、忘れねぇうちに行きたいし」
ということで2人は、禁域の森と接続している門番が守っているという門へと足を向けた。
≪入手アイテム≫
・カレル「獣」Lv1
・血石の塊
******
この狩人の夢の世界の現在時刻は月夜です。
狩人の夢に戻る。
助言者の家に入ると、車椅子の狩人/助言者は眠り込んでいた。人形さんは相変わらず部屋の片隅でカタカタ動いている。起こさないように一旦外に出て、備え付けられていたベンチに2人並んで座った。
「どうしようかね…」
「………………」
アイテム的には先に進んでも大丈夫っぽいが、よくよく考えてみると今まで踏破したエリアで少々やり残したことが残っていることに思い至った。今の今までエリア主戦のはずみですっかり頭から抜けていたのだ。
「じゃ、それをやりに行くとして……、だ」
「?」
不意にヒビキが立ち上がる。それを見て?マークを頭上に浮かべるクロノ。
「銃器を新調しようぜ!」
…
ということで、2人は水盆の使者の前に来た。隣には「啓蒙取引」とやらができる水盆がある。あとでそちらもラインナップだけは見るつもりだ。ある程度狩人証を手に入れたため、使者の売る品揃えが大幅に増えているのが嬉しい。輸血液・水銀弾を始めとした消耗品、トニトルスやローゲリウスの車輪、パイルハンマーなど、見覚えのありすぎる右手武器が並んでいる。だが、今回は左手武器である銃器が目的だ。
ちなみに、使者がいつの間にか増えていた。鎮静剤を持っていたり白い丸薬を持っていたり、見ていると可愛く思えてくる。
――――十分近くうんうん悩んだ後、ヒビキは《銃槍》と《ルドウィークの長銃》を買う。クロノは《銃槍》と《火炎放射器》を買った。ルドウィークの長銃と暗殺者の弓剣を背にクロスさせて背負うと、なかなか様になる。銃槍は厳密にいえば左手武器ではないのだが……物理攻撃と銃撃の両方ができる武器は魅力的だ。
狩人証を持っていないのでラインナップには無かったが、アルフレートの《教会の連装銃》や助言者がちらりと言っていた《ロスマリヌス》や《エヴェリン》、《教会砲》や《大砲》に《貫通銃》。あとデュラの仲間のうちいなかった者が使っていたという携行型の《ガトリング銃》。特殊なものとして雷属性を帯びた《雷撃銃》なんかが左手武器に属するようだ。
火炎放射器は加速度的に水銀弾の消費がかさむ代わり、一定時間炎を噴射し続けられる。ロスマリヌスはその神秘属性版……これを聞いて(神秘の霧吹き……)と思ったのは秘密。
「まあ、いいか」
「………………」
銃槍
製作者:??? 種別:ギミック武器
ランク:S+
工房の異端「火薬庫」の手になる「仕掛け武器」
簡易な銃と、槍を組み合わせた試作品であり、失われたカインハーストの武器を見真似たものともいわれている。
単体としても特筆すべき性能を持つ武器ではないが、銃にもなる「仕掛け武器」は他にはない特別なものだ
ルドウィークの長銃
製作者:??? 種別:獣狩りの銃器
ランク:S+
特に医療教会の狩人が用いる銃器
教会の最初の狩人、ルドウィークが用いたことで知られ
長く重い砲身は、速射性を犠牲に射程距離を高めるものである
ルドウィークを端とする医療教会の工房は、狩人に老ゲールマンとは違う流れを生み出した
より恐ろしい獣、あるいは怪異を狩るために
火炎放射器
製作者:??? 種別:獣狩りの銃器(特殊)
ランク:S+
医療教会の一部が用いる特殊銃器
血の混じった水銀弾を特殊な触媒とし、高熱の火炎を放射し続ける
決して効率の良い武器とは言えないが、時には炎の海が必要なこともある。何よりこの街、ヤーナムは、不浄な獣に満ちているのだから
買った武器のテキストはこうなっていた。
…
―――現在、買った銃器の試し撃ちも兼ねて隠し街ヤハグルに来ている。元から持っていた暗殺者の弓剣と月光の聖剣は、血石の欠片や二欠片を使って強化&修理しておいた。因みに、医療教会の工房の塔の一番下で待ち構えていた巨大な人獣の敵―獣憑きは討伐済みである。倒すとカレル「獣」を落とした。
―パァン!パパパン!!
結論から言うと、銃槍は名前通りの見た目と性能で変形前は槍として、変形後は銃として扱える。ルドウィークの長銃は着弾直前に弾が破裂する仕組みらしく、射程はライフルと見紛うほど長い。火炎放射器は連続して炎を放射し続けられるが、水銀弾をバンバン消費してしまう。ただ獣は大体炎に弱いのが多いので、いざという時は使えそうだ。
前来た時にはあまり意識していなかったのだが、そこらの物陰にヘムウィックの魔女とよく似た外見の老婆や狂犬がいた。老婆はこちらに飛び掛かって目を抉ろうとしてくるし、狂犬はジグザク回避を行うので銃撃が当てにくい。ただどちらも迫ってくる直前は隙だらけなので、そこを利用することで倒すことができた。
――――その調子でヤハグルの敵を倒していると、ある場所で異質な敵を見つけた。それは何とも言い難い異形で、骨のごとく細い手が3本、前左右に生えている。感じられる気配からして希少な敵か?
(…………何かレアアイテム落としそうな感じだな。逃がしても出直しで戻ってるんだろうか)
「…………?」
「いやなんでもねぇ。あれ見てくれ」
クロノの意識を視界の先で蠢くその敵に向けさせる。
「…………??」
あれがなんなのかわからない、といった感じで首を傾げてこちらを見てくる。「そんな顔で見るな俺だって分かんねぇんだから、とにかく倒すぞ」と言い返し、まだ気づいていないその敵の背後に回り込んで2人で挟み撃つ位置に移動する。
「…………行くぞ!」
囁くような音量で、呟く。同時に、銃声が鳴り響いた。
…
―――――異形の敵(さまよう悪夢というらしいが)をさくっと倒し、ドロップしたのは《血の岩》や《血石の二欠片》。レアな強化素材だ。予想外の収穫にテンションがやや上がり、そのまま隠し街を逆行する。今現在隠し街の探索できる範囲はかなり狭く、全てを探索し終えるのにそんなに時間はかからない。
最初の地下牢近くに差し掛かった時、クロノが何かに気づいた。
「!」
ヒビキの装束の裾を掴んで、ある一点に視線を向けている。
「?…………誰かの声?」
声というよりか非常に儚い息遣いが聞こえる。その元に向かうと、牢の陰に黒い衣装に身を包んだ女性が蹲っていた。酷く怯えているようで、「あのー?」と声をかけても返事がない。
(教会の信徒か…?)
背に白い刺繍布が垂れており、そのことから纏っているのは教会装束とわk……というか同じのを持っていたような気がする。装束を換装していなかったのですっかり忘れていたが。ゲーム世界特有の瞬間早着替えで装束を「教会の黒」に替える。
「あのー……大丈夫ですか―…?」
「…………!」
今度は大丈夫だったようだ。黒い髪に水色がかった灰色の瞳が、こちらを向く。
………………………女性はどうやらヒビキたちと同じく人さらいに捕まってここに来たらしい。安全な避難所がないか訊いてきたので、オドン教会を教える。すると、女性(アデーラという名前だそうだ)は教会式の一礼とともに、ありがとうございますと、あるアイテムを2人に1個ずつ渡してきた。
アデーラの血
医療教会の尼僧アデーラの「施しの血」
HP回復に加え、一定時間更にHPを回復し続ける
教会の尼僧たちは、優れた血を宿すべく選ばれ調整された「血の聖女」である
その施しは、医療教会と拝領の価値の象徴なのだ
有難くもらい、アイテムボックスにしまう。アデーラが立ち去ったのを見送って、2人は灯りへと向かった。灯りの傍に腰を下ろし、そういえばこんなのを診療所から見つけていたんだよなと思って一つ取り出す。
ヨセフカの輸血液
ヨセフカの診療所、その女医に渡された輸血液
精製されたそれは感覚効果が高く、より大きくHPを回復する
精製の時間と手間からは、一般的なものではない
恐らくは、女医の自製によるものだろう
***
―――――――灯りからの転移で、2人は聖堂街に来ていた。聖堂街は非常に広く、ざっとしか探索していないので見落としがないかどうか見に来たのだ……って、いきなり顔見知りと遭遇してしまった。きちんと車輪を背負っており、銃器が教会の連装銃からルドウィークの長銃になっている。
(あ)
といっても、相手はどうやら一心に祈っているようでこちらには気づいていない。その前には、精緻な文字や文様が彫り込まれた大きな墓碑が立っていた。その墓碑には《ローゲリウスの車輪》と、長鎌のような武器が立てかけられておりその前に鈍い金色のアルデオが置かれている。それを目にして、前彼と会った時に言っていた一言が脳裏によぎった。
―――「私は師を解放したい。処刑隊の一員として、正しく師を祀りたいのです」
……何とも言えぬ気分になり、少なくとも祈りの邪魔をしてはいけないと2人は頷きあってその場から足音を忍ばせて立ち去った。その後、探索していなかった(と思われる)場所に足を向ける。「教会の黒」シリーズが落ちていた辺りの裏路地に、明かりのついた家が2軒あった。その片方の家の窓越しに話しかける。
「………………………狩人様、ですか?」
若い女性の声だ。
「そうだ」と返すと、長い沈黙の後「安全な場所を探しているのです、どこか教えていただけませんか?」と答えが返ってきた。暫く考え込んだ後、オドン教会を教える。すると、「ありがとうございます、狩人様」と明かりに照らされた人影が一礼し、移動する様子が見えた。あとで教会に行ってみようと思いつつ、向かい側にあるもう片方の家の窓越しに話しかける。
「何だ?」
男性の声だ。何となく、偏屈そうな感じがする。不機嫌そうにも聞こえるその声が次いで発したのは「狩人さん、どうやってアリアンナを避難させたんだ?」という趣旨のものだった。どうやっても何も、避難所を教えてほしいと頼まれたから答えただけなのだが。事実をそのまま答える。その後、向かい側のアリアンナというらしい女性と同じく安全な場所を訊かれた。少しヒビキは考え込む。
(クロノが診療所の女医ともやりとりしてたからな…、診療所も教えることはできるのだけども)
クロノ曰く、最初に狩人の夢から直行した後に壁越しに話した時とは、声音が若干違っていたらしい。最初の時は何回か話すとその度に《ヨセフカの輸血液》を1個ずつくれはしたものの、診療所に人を入れようとはしなかった。クロノがやりとりした時にはもう最初の女医ではない偽物が成り代わっている可能性がある。この辺りは他のゲームで似たようなことがあった、そこからの経験だ。
(………………)
色々な可能性を考慮して、「ヨセフカ診療所だな」と答えた。「…………そうか。あんがとさん」とその男は答え、移動する様子が見られた。2人はその場から離れる。そして灯りまで歩き、その傍で座り込んだ。
「………………【なんでオドン教会を教えなかったんだ?】」
「…何となく、というかほぼ間違いなくあの男は天邪鬼だろうからな」
あの偏屈そうな男はヨセフカ診療所を教えれば、オドン教会に。オドン教会を教えれば、ヨセフカ診療所に行くのだろう。オドン教会の方が安全そうだから教えただけだ。
「【次はどうするんだ?】」
「…………禁域の森に行ってみるか……。合言葉を一応覚えたとはいえ、忘れねぇうちに行きたいし」
ということで2人は、禁域の森と接続している門番が守っているという門へと足を向けた。
≪入手アイテム≫
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