最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

文字の大きさ
101 / 120
10章「狩人たちの見る夢」

「醜い獣、ルドウイーク」戦、醜い獣の夢

しおりを挟む
――――――
目を覚まし、全員揃ってから灯り「悪夢の教会」へ転移する。何故かアカだけは浮かない顔をしていたが、何も話さなかった。無論2人はフクロウ形態になってから、定位置へ移動した後である。

灯りのある建物からは、登り斜面が先に続いている。斜面の先にまた大きな建物があった。

『グゥォオオオ――――ン!!』

今までの獣の、腹の底に響く重低音の咆哮とは違ってやや高い、得体のしれない獣の咆哮の声。ヒビキはそれに首を傾げながらも、その建物に足を踏み入れた。…………建物の中はそんなに複雑ではなく、その獣の声が聞こえる付近へかなり容易く辿り着ける。ついでに斜面の途中に目玉を抉ろうとしてくる老婆―アイコレクターがいたため処理しておいた。

「…………!」
「あれは…………」

とうとうその声の聞こえる部屋の前まで来た。その前の通路を、血の跡を引きながら這いずりこちらへ来ようとしている身を窶した狩人―――シモンを見つけた。表情はかなり怯えている。

「…あ、ああ、あんた……助けてくれ…
あいつが…おぞましい、醜い獣がやってくる……
ああっ………呪われたルドウイークが……
赦してくれ……赦して…くれ……」

シモンはどうやら気絶してしまったようだ…。壁の方に寄り掛からせておいて、ヒビキはクロノと人形態に戻ったルクスとアカの方を向く。

「…………行くか?」
「おう」
「そうですね」
「(こくり)」

扉を、開けた。



―――――――

濃密な血の香りが充満している。

大量の血塗れた死体が無造作に転がっている。

ぬめりを持った鉄臭い赤い海が床一面に広がっている。

窓から差し込む赤く穢れた月の斜光が、不気味にを照らし出す。

――血に塗れた白い、馬のようなナニカを。

「……………う、わぁ」

確かにそれは醜悪で、巨大で、かつそのナニカの中にある血塗れた白帯を巻かれた剣が、弱々しく不安定に暗い光を発していた。間違いなくあれは「月光の聖剣」、だ。隣に同じ武器を持つクロノが居るので、大体の形状でわかってしまう。

「なんだあれ……………」
「………ッ」

常人が見れば狂気検査SAN値チェック一直線間違いなしなその光景に、暫く4人は立ち尽くす。が、獣の方がそれを許さなかった。

『グオォオオォ―――――ン!!』

獣にしては高い咆哮をあげ、一直線にこちらに走ってくる!

「…………うおっ!?」
「!…動きが異常すぎます!」
「少なくとも見た目通り馬のようにしか動けねぇわけじゃねぇのか…」
「!」

馬のような見た目とは裏腹に、動きはスライムのように滑らかだ。白く濁った赤い瞳の焦点は定まっておらず、何をするのかも読めない。案の定、突進直線上にいたヒビキが対応しきれずもろに直撃を喰らった。HPの半分近くが消し飛び、激しい痛みが一瞬全身を駆け抜ける。

「………………ぐ、うっ!?」
「大丈夫ですか!?」

察したアカがすぐに《聖歌の鐘》を鳴らし、ヒビキは崩れた体勢から無理矢理曲剣で殴ってリゲインである程度回復する。返り血が頬に散り、馬のような獣は直ぐに大きく後ろへ飛び退った。

「…やっべぇな!?」
「………………………!?」

ヒビキは肩で息をしながらもHPを削って血弾を補充し、アカは《彼方への呼びかけ》を取り出していつでも発動できるように構えている。再起動したルクスは《精霊の抜け殻》を使ってから駆け出した。クロノは光波を撃つために剣を掲げて溜めている。

『グルルァアアアア――――!』

獣がまた咆哮をあげた。しかしその声は、どこか人間的な苦悶する声のようにも聞こえる…。

それに気づかず、腕を使った叩きおろしの兆候を察したルクスが咄嗟に飛び退って距離を取る。丁度それと入れ替わるようにアカが《彼方への呼びかけ》を展開して星の弾が幾つも飛んでいき、クロノの大きな光波も発射された。神秘属性に対して異様に弱いのは車椅子の狩人が言った通りで、HPが一気に1割近く削れる。たった2撃でと考えれば、大したものだ。

「…………喰らえっ!」

ヒビキとルクスで順番に剣撃を連続で叩き込む。すると意外に怯み、アカが今度は《エーブリエタースの先触れ》を脚部にぶち入れた。それを見て気づいたかクロノも光波を逆の脚部に入れている。

近接2人はぴったり張り付いて次々に連撃を入れているが、そうすると獣の方は下がりながらの2連撃を加えてくる。また前の動作からワンテンポ遅れて次の攻撃が来たりもするので、ルクスが1回薙ぎ払いに、正面遠方にいたクロノが1回飛びつき右手殴りで吹き飛ばされ、輸血液を使う場面もある。

「……………?、!やべぇ、突進来るぞ!」
「おう!」

一度短く咆哮した後の頭突き突進。いち早く気づいたヒビキとルクス、クロノは斜めに避けたが、丁度《エーブリエタースの先触れ》発動中の硬直で避けきれなかったアカが直撃を貰った。大きく後ろに吹き飛ばされ、壁に衝突してHPが一気に半分余り消し飛ぶ。

「…………っ!」
「アカ!大丈夫か!?」
「だい、じょうぶ、です……」

白い装束の所々に血がじんわりと滲むが、本人の気力的には大丈夫なようだ。すぐに輸血液でHPを回復する。秘儀アイテムは威力が高いものが多く(特に《彼方への呼びかけ》は消費弾数も威力も馬鹿高い)、カレル文字「オドンの蠢き」などで水銀弾をなんとかできれば心強い火力源になる。が、欠点がまさに先ほどの秘儀使用中の硬直なのだ。

その後も、今までのエリア主とは一癖も二癖もある動きでこちらを翻弄する醜い獣。しかしヒビキたちも負けずに反撃し、獣のHPは7割を割り込んだ。



―――――――

『グォォオオオ――――ン!!!!』

獣が吠え、中にある聖剣から漏れる光がより一層強く明滅する。苦悶するように身を捩るその獣の白く濁った赤い瞳の濁りが少し薄まっているような気がした。

「…………!」

獣が、跳んだ。かなり長く滞空しているようで、上から血が落ちて血の海で飛沫を上げる。その血飛沫の2回目が上がった後、獣が段々と落ち始めた。

「来るぞ!」

ドォォンと、短い轟音が響いて軽く床が揺れた。

「そりゃっ!舐めるなよな!」

着地の衝撃を紙一重レベルで避けたルクスが、神秘属性を纏った溜め攻撃で迎撃する。因みに遠方から秘儀と光波も断続的に飛んできており、獣のHPは僅かずつではあれど着実に減ってきていた。

『グルルァッ!!』

獣はこちらを向いたかと思うと、首を振りかぶり謎の白い液体をビームよろしく噴射してきた。左から右に薙ぎ払うような軌道で、これには近接にいた2人だけでなくクロノとアカも回避を強いられる。

「…………!!」
「………来ますね」

謎の白い液体噴射の後、『グォォオ――――ン!』と咆哮をあげたかと思うと遠距離攻撃組2人の方へ突進する。落ち着いてステップで避けてから、振り返る間に更に攻撃を叩き込んだ。

―――――他にも暴れながらの踏み付けからの殴り、連続の噛みつき、謎の白い液体の直線噴射などを繰り出す醜い獣。しかも前の動作と次の動作の間が数テンポほど遅れる場合があり、それにタイミングをずらされ巻き込まれてHPを半分以上吹き飛ばされることも。即座にリゲイン+輸血液で回復はしたが、精神的に疲れが溜まってくる。

また、馬のような見た目のため後ろ蹴りは容易に想像できた。故に4人とも決して真後ろには陣取らないように慎重に動く。と、獣がまた大ジャンプをした。しかしこのパターンは既知なので落ち着いて対処できる。どころか、ヒビキはあることを考えていた。

獣が着地した直後、衝撃波の届かないギリギリの場所でヒビキは

「《グルルァァアァア――――ッ!!》」

およそ人が出すものと思えない、獣の悲鳴があたりに圧を伴って響き渡る。秘儀アイテム「獣の咆哮」の力により、ダメージはなかったものの醜い獣は怯む。その隙に全力で頭部に攻撃を叩き込んだ。しかし怯む時間は短く、内臓攻撃が決まるまでには至らない。

その調子でヒビキとルクスの近接戦闘組とクロノとアカの遠距離攻撃組に分かれて、白い醜い獣のHPを少しづつ削っていく。



…………とうとう醜い獣のHPが半分を切った。







******
ヴァルトールさん呼んでも良かったんですけど、それだと大所帯になりすぎてしまいますし……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン
ファンタジー
 ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。  たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...