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10章「狩人たちの見る夢」
殉教者、悲願、固執、救済
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――――――――
「ついたみたいだぞ」
いかにもな門をくぐると、その奥にいた。大きな王座のような椅子に座り、深く俯く、長身の処刑隊装束を纏ったその人物が。片手に、刃はやや小ぶりのようだが赤黒い大鎌。もう片方の手に直剣が握られている。
そして鈍い金に輝くサークレットに近い形の冠を被っていた。
………………
…………………
……………………!!
ゆっくりと立ち上がったその人物は、もうどこからどう見ても半ばまでミイラ化していた。赤黒い怨念の煙が、濃く揺らめいている…。
「もう、やるしかねぇな。行くぞ!」
「おう!」
ヒビキは弓剣、ルクスは聖剣と幻影銀剣を構える。
こちらを認識するや否や、相手は大鎌を一振りし魔法を撃ってきた。赤黒い煙のような髑髏を放射状に飛ばすもののようだが、髑髏はゆっくり追尾してくる。…それは剣で斬り払い打ち消すことができた。
「よっと!」
ローリングで避けざま《彼方への呼びかけ》を撃ったのだが、HPに動きは無い。ルクスは空気を読んだか《小さなトニトルス》を撃ったが、こちらもHPを減らすことはできていない。
少なくとも、神秘属性と雷属性は全く効かないことが分かった。怨念は元はカインハーストの穢れた血族のものであるため血属性、そして獣ではないので炎属性も効くまい。これは属性に頼らず純粋な正攻法で倒すしかなさそうだ。
「いっくぞー!」
放射状髑髏を掻い潜り、ルクスは一気に接近して剣撃を加える。上空から落ちてくる軌道の髑髏を先読みし、幾つか撃ちぬく。それだと消せなかったが、やや動きが鈍った。
ローゲリウスは今のところは動きはゆっくりであまり近づいてこず、赤黒い煙のような髑髏の魔法を多用してくる。かといってその怨念髑髏のダメージがかなり大きく、今の自分たちのHPだと数発直撃を貰えば死ぬ。
唐突に近づいて正面に髑髏を撃ったり、さっきの放射髑髏や上空髑髏、下がりながらの髑髏発射。鎌での上左右2連続づつの攻撃、剣での連撃。魔法主体の中に後者2つを不意を突くように織り込んでくるので、本当に気が抜けない。今までのエリア主も気が抜けなかったが、それでも厄介だ。ただただ本能のままに攻撃してくる技術の無い獣とは数段上の強さがある。
しかし、対ルドウイーク戦の後半よりは気が乗らない。所詮はただの怨念か。
ヒビキはあまり近寄らずに水銀矢を撃って対処し、ルクスは剣で髑髏を滑らせたり斬り飛ばして対処している。その調子で僅かな隙をついてちまちま攻撃を加えていくと、数十分後にHPを70%にまで減らすことに成功した。
『………………!!』
唐突に距離を取ったかと思うと、鎌の柄を地に突き刺し”溜め”始めた。数秒後、赤黒い煙が収束しきり爆発する。
「うおっ!?」
かなり至近距離にいたルクスが巻き込まれたようだが、HPの減りは微々たるものだ。
「!!」
銃弾を撃つが、軌道が逸れて当たらない。
「ルクス!さっきの攻撃が来そうなら後ろからタメバックスタブからの内臓攻撃狙ってくれ!」
「了解!できるだけやってみる!」
先ほどまでローゲリウスは髑髏の魔法を多用して戦い、殆ど接近戦はしてこなかったのだが……
「ちっ、やっぱそう甘くはねぇよな!」
ここで戦い方がほぼ180度反転。ヒビキとルクスのどちらかに積極的に接近し、手に握る鎌や直剣で近接戦を狙ってくる。神経を尖らせていれば2人とも何とか受け流しはできるのだが、鎌も直剣も振りが異様に速い。2人同時に斬りかかっても、鎌と直剣それぞれで何てことないように対応されてしまう。
改めて言おう。そして断言できる。ローゲリウスはルドウイーク戦(後半)に劣らないほど強敵だ。
どうやら怨念はあくまで彼の骸を補助的に動かしているだけに過ぎないらしい。赤黒い煙に覆い隠された、強烈な狩人の本能が感じられる。狩人の悪夢で出会った蕩けた瞳の狩人たちと同じ、戦いと狩りに狂った本能が。どうやら彼の遺志が、血族の怨念に操られる肉人形になることを否定したらしい。
実に厄介だ。ああ厄介。しかし、…………こうであるなら高ぶらずにはおれない。
「どうする?」
「攻撃の隙を縫って何とか捻じ込んでいくか……?」
接近戦に方針転換してからの攻撃は鎌と直剣での直接攻撃が主だが、空中から突撃してきたり武器を袈裟懸けに振り下ろしてきたり、連撃の後に衝撃波が来たりと、やっぱり油断できない。自然と笑みがこぼれる。
甲高い金属音が鳴り響き、斬られた傷口から血が零れる。2人の息遣いと、足場を蹴る音、刃が打ち鳴らされる音以外は何も聞こえない。深々と満ちる冷気が肌を刺す。
遠距離主体で戦おうにもこの足場がどこからどうみても屋根の上でしかないので、逃げ回っているうちに足を踏み外して転落なんてことになったら笑えない。しかし普通の屋根より平らな場所が多いので、戦いやすくはある。しかし今までのように接近しすぎても空中からの攻撃がよけきれないので、ある程度距離はとることにした。
「はぁ、はぁ………」
「大丈夫か!?」
疲弊した感覚、出血と併せ疲労した身体、かなり満身創痍の状態。まだ少し余裕がありそうなルクスが慌てた様に声をかけてくる。
「まだ大丈夫だ、それよりルクスも平気か?」
「オレはもう少しいけるぞ!」
戦闘中に甘ったれたことなど言ってられない。敵は待ってはくれないのだ。幸いというべきかどういうべきか、ローゲリウスの残りHPは今まで数時間近い戦いで20%近くにまで落ちている。人形態のルドウイークと違い、輸血液は使わないようだ。まあもう生きていないのだから、使っても意味がないのだろうが。
2人のHPも半分近くを割り込んでしまっている。輸血液で回復する暇はなく、もうこうなればどちらが先に死ぬかの問題だ。
ここにきて武器の金属音、足場を蹴る音、乱れた吐息と風切り音の狂った多重奏がより激しさを増す。
血が騒ぐ。
やはり戦いとはこうでなくては。
でももうすぐ終わりが来る……
……
―――――更に数十分後。とうとうローゲリウスのHPが完全に0となり、頽れるように膝をついた後彼は霧のように消えてしまった…。あとには鈍い金色に煌めくサークレットに近い形の王冠が残される。
「終わったか…」
「だな。でも最後……………」
「…………そうだな」
ルクスが言っているのは最後、ローゲリウスのHPが10%近くにまで落ちた時のことだ。より攻勢が激しくなり、動きから技術だけでなく理性を明確に感じられた。唐突に、本能のまま暴れる技術在る獣ではなく狩人らしい、きびきびとした動きになったのだ。何事か、と思いつつ対応しているといつのまにか彼の身体の動きと被るように影が現れていたのだ。
その影の顔は口元しか分からなかったが、武器も服装も体形もまんま一致していたため間違いなくローゲリウス本人の意思体だろう。楽しそうに吊り上がった口角からは、一切の邪念は感じられなかった。
そして完全にHPが0になった時、彼の影も満足そうな笑みを浮かべて消えていった。だけど、まだこの世界のどこかに他の始祖狩人とともに残っているのだろう。何となくだがそんな気がする。
「……………………」
残された王冠を慎重に手に取り、被る。と、今まで道などなかったはずの場所に新たな一本道が現れた。道の先は封じられていた館につながっている。それをしかと見据えた後、不意に耳に届く音に2人は首を傾げた。
「何か聞こえるな」
「…………あ、間違いねぇなアイツだ」
「……………ああ……これは…」
ぐしゃっ、どしゃっなどといった俗に言う撲殺音。狩り武器の中で撲殺主体のものといえば車輪ぐらいしかない=アルフレートはもう既に来ているのだろう。
「……………少し休もう」
先ほどの戦いですっかり疲れ切っていたヒビキは、ぼんやりと紫の光を発する灯りの近くに座り込むとうつらうつらと船をこぎ始めた。ルクスも壁に寄りかかるとぼーっと空を見る。その空からは深々と薄ら寒い粉雪が降ってきていた。
…
――――――――???
咽せ返りそうなほどに濃密な血の香り、転がるかつての仲間の死体、憎悪すべき仇の残骸、意識が狂いそうなほどの静寂。
悲願は果たさねばならない、果たさないといけない。それが役に立てなかった自分の存在意義。
まだあの女王の血族が、生き残っている。
間違いない。間違いがない。かの血族は殺さなければならない。
まだ自己を保てている。まだ自分は消えたくない。
せめて、あの女王とその血族を復活できないぐらいに皆殺しにするまでは。
「……………もうすぐ…………」
酷く返り血に濡れた凄惨な姿の青年が、血色の瞳を光らせ異様な雰囲気を醸し出して呟いた。
それは明らかな歪んだ義務感と復讐心による、半ばまで狂った呟きだった。
******
~裏世界おまけ(???と???との会話)~
『ああああああああ終わらなかった………あともう少しだけ続きます…』
「というかこの世界でこんなに時間かけて大丈夫なの?」
『時間軸自体が違うからそこは大丈夫…リコード世界より不死世界、狩人世界の方が時の流れは遅いから』
「今更だけど複数の世界を同時展開&管理できるって凄いよね」
『スパコンをマイクロチップ並みに小さくできるほど技術力が高い時代ですから。それと病気にかかっても殆ど治療できますしおすし』
「じゃ、あの子の火傷は何故そのままなの?」
『あまりに酷い火傷だったのと、対処できる期間中に対処できなかったから』
「………………」
『…………………………』
「皮肉ね」
『私、あの人たちからも頼まれてますからね……”恩人へ”の伝言で』
「………………じゃあ、私は仕事に戻るわ」
『了解しました。ではログを切っておきます』
―――ターミナル:ログナンバー■■■■■■が終了されました。
―――(???がターミナルから離れた後、自動的に直前のログは消去されます。続いて自動アップデートが行われます。このアップデートで行われる実施事項は【こちら】を参照してください。また、今回のシステムアップデートで以前に”死亡”した中核AIの聖位置に冥界より選出された新しいAIが再配置されます)
「ついたみたいだぞ」
いかにもな門をくぐると、その奥にいた。大きな王座のような椅子に座り、深く俯く、長身の処刑隊装束を纏ったその人物が。片手に、刃はやや小ぶりのようだが赤黒い大鎌。もう片方の手に直剣が握られている。
そして鈍い金に輝くサークレットに近い形の冠を被っていた。
………………
…………………
……………………!!
ゆっくりと立ち上がったその人物は、もうどこからどう見ても半ばまでミイラ化していた。赤黒い怨念の煙が、濃く揺らめいている…。
「もう、やるしかねぇな。行くぞ!」
「おう!」
ヒビキは弓剣、ルクスは聖剣と幻影銀剣を構える。
こちらを認識するや否や、相手は大鎌を一振りし魔法を撃ってきた。赤黒い煙のような髑髏を放射状に飛ばすもののようだが、髑髏はゆっくり追尾してくる。…それは剣で斬り払い打ち消すことができた。
「よっと!」
ローリングで避けざま《彼方への呼びかけ》を撃ったのだが、HPに動きは無い。ルクスは空気を読んだか《小さなトニトルス》を撃ったが、こちらもHPを減らすことはできていない。
少なくとも、神秘属性と雷属性は全く効かないことが分かった。怨念は元はカインハーストの穢れた血族のものであるため血属性、そして獣ではないので炎属性も効くまい。これは属性に頼らず純粋な正攻法で倒すしかなさそうだ。
「いっくぞー!」
放射状髑髏を掻い潜り、ルクスは一気に接近して剣撃を加える。上空から落ちてくる軌道の髑髏を先読みし、幾つか撃ちぬく。それだと消せなかったが、やや動きが鈍った。
ローゲリウスは今のところは動きはゆっくりであまり近づいてこず、赤黒い煙のような髑髏の魔法を多用してくる。かといってその怨念髑髏のダメージがかなり大きく、今の自分たちのHPだと数発直撃を貰えば死ぬ。
唐突に近づいて正面に髑髏を撃ったり、さっきの放射髑髏や上空髑髏、下がりながらの髑髏発射。鎌での上左右2連続づつの攻撃、剣での連撃。魔法主体の中に後者2つを不意を突くように織り込んでくるので、本当に気が抜けない。今までのエリア主も気が抜けなかったが、それでも厄介だ。ただただ本能のままに攻撃してくる技術の無い獣とは数段上の強さがある。
しかし、対ルドウイーク戦の後半よりは気が乗らない。所詮はただの怨念か。
ヒビキはあまり近寄らずに水銀矢を撃って対処し、ルクスは剣で髑髏を滑らせたり斬り飛ばして対処している。その調子で僅かな隙をついてちまちま攻撃を加えていくと、数十分後にHPを70%にまで減らすことに成功した。
『………………!!』
唐突に距離を取ったかと思うと、鎌の柄を地に突き刺し”溜め”始めた。数秒後、赤黒い煙が収束しきり爆発する。
「うおっ!?」
かなり至近距離にいたルクスが巻き込まれたようだが、HPの減りは微々たるものだ。
「!!」
銃弾を撃つが、軌道が逸れて当たらない。
「ルクス!さっきの攻撃が来そうなら後ろからタメバックスタブからの内臓攻撃狙ってくれ!」
「了解!できるだけやってみる!」
先ほどまでローゲリウスは髑髏の魔法を多用して戦い、殆ど接近戦はしてこなかったのだが……
「ちっ、やっぱそう甘くはねぇよな!」
ここで戦い方がほぼ180度反転。ヒビキとルクスのどちらかに積極的に接近し、手に握る鎌や直剣で近接戦を狙ってくる。神経を尖らせていれば2人とも何とか受け流しはできるのだが、鎌も直剣も振りが異様に速い。2人同時に斬りかかっても、鎌と直剣それぞれで何てことないように対応されてしまう。
改めて言おう。そして断言できる。ローゲリウスはルドウイーク戦(後半)に劣らないほど強敵だ。
どうやら怨念はあくまで彼の骸を補助的に動かしているだけに過ぎないらしい。赤黒い煙に覆い隠された、強烈な狩人の本能が感じられる。狩人の悪夢で出会った蕩けた瞳の狩人たちと同じ、戦いと狩りに狂った本能が。どうやら彼の遺志が、血族の怨念に操られる肉人形になることを否定したらしい。
実に厄介だ。ああ厄介。しかし、…………こうであるなら高ぶらずにはおれない。
「どうする?」
「攻撃の隙を縫って何とか捻じ込んでいくか……?」
接近戦に方針転換してからの攻撃は鎌と直剣での直接攻撃が主だが、空中から突撃してきたり武器を袈裟懸けに振り下ろしてきたり、連撃の後に衝撃波が来たりと、やっぱり油断できない。自然と笑みがこぼれる。
甲高い金属音が鳴り響き、斬られた傷口から血が零れる。2人の息遣いと、足場を蹴る音、刃が打ち鳴らされる音以外は何も聞こえない。深々と満ちる冷気が肌を刺す。
遠距離主体で戦おうにもこの足場がどこからどうみても屋根の上でしかないので、逃げ回っているうちに足を踏み外して転落なんてことになったら笑えない。しかし普通の屋根より平らな場所が多いので、戦いやすくはある。しかし今までのように接近しすぎても空中からの攻撃がよけきれないので、ある程度距離はとることにした。
「はぁ、はぁ………」
「大丈夫か!?」
疲弊した感覚、出血と併せ疲労した身体、かなり満身創痍の状態。まだ少し余裕がありそうなルクスが慌てた様に声をかけてくる。
「まだ大丈夫だ、それよりルクスも平気か?」
「オレはもう少しいけるぞ!」
戦闘中に甘ったれたことなど言ってられない。敵は待ってはくれないのだ。幸いというべきかどういうべきか、ローゲリウスの残りHPは今まで数時間近い戦いで20%近くにまで落ちている。人形態のルドウイークと違い、輸血液は使わないようだ。まあもう生きていないのだから、使っても意味がないのだろうが。
2人のHPも半分近くを割り込んでしまっている。輸血液で回復する暇はなく、もうこうなればどちらが先に死ぬかの問題だ。
ここにきて武器の金属音、足場を蹴る音、乱れた吐息と風切り音の狂った多重奏がより激しさを増す。
血が騒ぐ。
やはり戦いとはこうでなくては。
でももうすぐ終わりが来る……
……
―――――更に数十分後。とうとうローゲリウスのHPが完全に0となり、頽れるように膝をついた後彼は霧のように消えてしまった…。あとには鈍い金色に煌めくサークレットに近い形の王冠が残される。
「終わったか…」
「だな。でも最後……………」
「…………そうだな」
ルクスが言っているのは最後、ローゲリウスのHPが10%近くにまで落ちた時のことだ。より攻勢が激しくなり、動きから技術だけでなく理性を明確に感じられた。唐突に、本能のまま暴れる技術在る獣ではなく狩人らしい、きびきびとした動きになったのだ。何事か、と思いつつ対応しているといつのまにか彼の身体の動きと被るように影が現れていたのだ。
その影の顔は口元しか分からなかったが、武器も服装も体形もまんま一致していたため間違いなくローゲリウス本人の意思体だろう。楽しそうに吊り上がった口角からは、一切の邪念は感じられなかった。
そして完全にHPが0になった時、彼の影も満足そうな笑みを浮かべて消えていった。だけど、まだこの世界のどこかに他の始祖狩人とともに残っているのだろう。何となくだがそんな気がする。
「……………………」
残された王冠を慎重に手に取り、被る。と、今まで道などなかったはずの場所に新たな一本道が現れた。道の先は封じられていた館につながっている。それをしかと見据えた後、不意に耳に届く音に2人は首を傾げた。
「何か聞こえるな」
「…………あ、間違いねぇなアイツだ」
「……………ああ……これは…」
ぐしゃっ、どしゃっなどといった俗に言う撲殺音。狩り武器の中で撲殺主体のものといえば車輪ぐらいしかない=アルフレートはもう既に来ているのだろう。
「……………少し休もう」
先ほどの戦いですっかり疲れ切っていたヒビキは、ぼんやりと紫の光を発する灯りの近くに座り込むとうつらうつらと船をこぎ始めた。ルクスも壁に寄りかかるとぼーっと空を見る。その空からは深々と薄ら寒い粉雪が降ってきていた。
…
――――――――???
咽せ返りそうなほどに濃密な血の香り、転がるかつての仲間の死体、憎悪すべき仇の残骸、意識が狂いそうなほどの静寂。
悲願は果たさねばならない、果たさないといけない。それが役に立てなかった自分の存在意義。
まだあの女王の血族が、生き残っている。
間違いない。間違いがない。かの血族は殺さなければならない。
まだ自己を保てている。まだ自分は消えたくない。
せめて、あの女王とその血族を復活できないぐらいに皆殺しにするまでは。
「……………もうすぐ…………」
酷く返り血に濡れた凄惨な姿の青年が、血色の瞳を光らせ異様な雰囲気を醸し出して呟いた。
それは明らかな歪んだ義務感と復讐心による、半ばまで狂った呟きだった。
******
~裏世界おまけ(???と???との会話)~
『ああああああああ終わらなかった………あともう少しだけ続きます…』
「というかこの世界でこんなに時間かけて大丈夫なの?」
『時間軸自体が違うからそこは大丈夫…リコード世界より不死世界、狩人世界の方が時の流れは遅いから』
「今更だけど複数の世界を同時展開&管理できるって凄いよね」
『スパコンをマイクロチップ並みに小さくできるほど技術力が高い時代ですから。それと病気にかかっても殆ど治療できますしおすし』
「じゃ、あの子の火傷は何故そのままなの?」
『あまりに酷い火傷だったのと、対処できる期間中に対処できなかったから』
「………………」
『…………………………』
「皮肉ね」
『私、あの人たちからも頼まれてますからね……”恩人へ”の伝言で』
「………………じゃあ、私は仕事に戻るわ」
『了解しました。ではログを切っておきます』
―――ターミナル:ログナンバー■■■■■■が終了されました。
―――(???がターミナルから離れた後、自動的に直前のログは消去されます。続いて自動アップデートが行われます。このアップデートで行われる実施事項は【こちら】を参照してください。また、今回のシステムアップデートで以前に”死亡”した中核AIの聖位置に冥界より選出された新しいAIが再配置されます)
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