宵闇王と精霊の竜刀

火の無い灰

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5章【終わりは始まり、始まりは終わり】

開戦前夜

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闇の勢力との開戦前夜、「致命の地」にて。
向こうの方には、「霧の歩哨所」と「禁断の荒野」が広がっている。
夜になり、夕方に各々が設営した薄闇に映える無数の白いテントの中では、それぞれ自由な行動がとられていた。
そんな中、赤っぽく乾いた土を踏みながら、レイは何とはなしにテントの間を歩いてまわっていた。
で、暫く歩いた後に彼が見つけたのは。
『お?お前、こんなとこにも来てたのか』
『……久しぶり、というほども経っていないわね』
「…………………………何故貴方がたがこんなところにいるんですか」
トールやアテナ、他にも十人近い神様たちの姿だった。
アテナは若干苦笑気味な表情で、
私たちの世界天聖界では私の様な戦いを司る神が結構いるのよ。おまけに大体は血気盛んで戦い好きなのが多いから、主神長ゼウスも度々抑え込めきれないのよね』
『ここにいるのも大方そういうやつらだからな』
話していると、傍に虚空からぱっといきなり1人の青年の姿が現れた。
『ヘファイストス殿から、トール殿の武器の強化が終わったらしいので届けにきました』
薄い灰色の髪と蒼い眼、羽飾り付きの帽子を被り、まるで郵便屋の制服の様な空色を基調にした服を纏う快活そうな青年である。
『ああ、ありがと。でもヘルメス、いきなり出てくるのはやめろよ…』
「……(もしかして俺は神器の受け渡し現場を見ているのでは)」
もしかしなくても、その通りだった。
ヘルメスが肩にかけた鞄から、大工仕事に使うような普通の物より何倍か大きい、宝石で飾られた黄金づくりの槌を取り出すと、それをトールに渡す。
アテナは、若干硬直しているレイをちらりと横目で見た後、2人にこう言った。
『貴方たちねえ、場所を考えなさいよ。そこの少年以外に見られなかったからいいものの』
やっぱり神様という存在は自由なひとが多いようだ。
レイが改めてその事実を再確認していると、
『お、ヘルメスにアテナ、トール。数十年ひさしぶりだな』
『シュヴァル、お前も来たんだな』
その後暫く彼らの談話は続き、レイは途中でその場から離れて灌木に寄りかかると、空を見上げた。
こんな時でも空は、変わらぬ美しさを保っていた。
無明の夜空をバックに、無数の星々が煌き、地上へささやかに燐光を振り撒く。
相も変わらず一部のテントの中ではどうやら宴をしているらしい騒がしい声、又は武器や防具を手入れしている音が響く中、決戦直前の夜は段々と更けていく。
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