宵闇王と精霊の竜刀

火の無い灰

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5章【終わりは始まり、始まりは終わり】

惨劇と戦乱の幕開け

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致命の地、霧の歩哨所側で陣を張る現界連合軍。
彼らの間に満ちる緊張感が徐々に徐々に程度を高めていく。
――――――――――――――不意に。

             ガシャァァァ――…ァアン!!!

ガラスをハンマーで割り砕いた様な、大きな音が大気を震わせた。
それと同時、連合軍と向き合う位置に、大陸に棲む普通のモンスターよりも遥かにおぞましい外見と、それらから闇そのものとしか言いようのない禍々しさを孕んだオーラが陽炎の如く立ち上り、大気をけがしているかの様。
数をカウントする気も失せるほど非常に数が多く、それ故多種多様な個体も多いようだ。
ガラスの破片の様な輝きがきらきらと輝くなか。
―――――――――時は、来たれり。
限界まで引かれた弓のつるが千切れる様に、戦争の狂乱の火蓋が切られた。

大気に渦巻くは魔物の咆哮、戦士たちの鬨の声、魔法の着弾音や爆裂音。
最前線は魔物と人が入り乱れ、もはや秩序などありはしない。
その最前線から闇魔界の魔物たち側へ、かなり突っ込んだ位置で戦う人物がいくつか。
まあ、やはりというか、なんというか。
竜刀を振るうレイと、トールやオーディンなどの有名な神様たちである。
殲滅速度は圧倒的で、一撃で数匹の魔物が、暗赤色の血と奇妙な断末魔をあげて地に倒れる。
「…………くっ」
レイの聴覚は混戦の坩堝にあっても、後ろの方の、騎士たちの声を捉えていた。
各国の騎士たちの中でも所謂「精鋭」の分類に入る騎士たちは単独でも十分戦えているが、そうではない大多数の場合は高ランクの魔物にやられる者が多いらしく、叫び声が頻繁に上がっている。
レイは刀を横方向に一回転させ、一瞬だけ隙を作り出し、
「……はあっ!」気合いとともに左腕を天へと突きあげる。
――レイの足元を基点として、あらゆる方向へ伸びていくのは処女雪を彷彿とさせる白さの光の線。
それは方々で交差し、曲がり、意味のある形へとその姿を成していく。
完成した魔法陣は、その直後。
基点から同じ白さの光の太い線が天へと伸びていき。絡まり合い、天を渡る様に伸び、それらは戦場全体へと縦横無尽に宙を走っていく。
白い光の樹の枝に金と黒、2種類の色をしたこれも光でできた林檎リンゴの実が生り、その林檎の実は樹から落ちて魔物や騎士たちの体に触れた瞬間、光粒となり弾けた。

特殊効果系魔法【白雪の聖樹】+身体能力強化系魔法【全能力強化フルブースト】&阻害罠系魔法【全能力弱体化フルダウン】。

黒い実が触れた魔物たちの動きは格段に遅くなり、逆に金の実が触れた騎士たちの動きが速くなる。
【白雪の聖樹】は、他の魔法を超広範囲に伝播させることができる。が、「戦場」と呼ばれる地はもうキロ単位でないと異常な桁の数値になってしまうほど急速に膨張していた。

それから数時間、斬っても斬っても総数が多過ぎる所為か一向に減る様子の無い闇の魔物たちと、後衛職の補助を受けながら戦い続ける連合軍の、拮抗してるのかどうかわからなくなってくる戦闘は続いた。
そんな時でも夜は来るし、太陽は呑気に地平線の向こう側へと隠れていく。まあ、こんな惨劇を見たくないのかもしれないけれども。
闇に侵されたとはいえやはり元は動物の性質も併せ持つ魔物モンスターである。
真の暗闇が訪れる前に、双方とも一旦退いた。

ここは、その後の事だが。
戦場を俯瞰する視点で見ると、黒色の中に3か所だけ白光が絶えず閃く場所があった。
そこでは雷神トールがノリノリで自らの神器である雷槌ミョルニルを振るっていたり、アテナの聖鎧と彼女の剣が乱戦の中でもしっかり煌きを失ってなかったり、オーディンの振るう神槍グングニルの水晶の様な穂先が陽の光を反射した光だったりした訳だが、やはりまあどんな性格であろうとも神様は神様である。
帰ってきた姿を見てレイが軽くおののいたのも無理はないだろうが。
黒づくめの服と漆黒の髪をよくもまあここまでというほど赤い血で濡らしている、黒蛇たちを引き連れた青年神シュヴァルだ。
『……………シュヴァルお前、何故そんなに血塗れなんだ?』
『ん?そんなに俺血塗れか?』
トールが訊くと、完全に素の表情で首を傾げている。どうやら感性的に食い違いがあるのか。
『いや貴方、快楽殺人者か何かみたいな有様になってるわ』
『そうなのか?』
半信半疑といった感じだが、風属性の【乾風ブロウ】を使って血を乾いた粉にしてはたき落としているのを見ると、彼自身も自分の状態に気づいたのかもしれない。
流石というべきか。現界軍の中にも、臆する者はいないようだ。

しかし、まだ終わったわけではない。むしろ、始まったばかりだ。
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