宵闇王と精霊の竜刀

火の無い灰

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5章【終わりは始まり、始まりは終わり】

戦場という名の複雑極まる遊戯盤

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やがて月も地平線の向こう側に姿を消し、また、朝は訪れる。
乾いた赤茶色の土が陽光を受けて、明るく輝く。
その眩しい光の中を進むは、濃密な黒い霧を纏う怪物たちと、煌びやかな鎧を纏う騎士たち。
どちらも戦意、――士気は、塵一粒分すらも、衰えてはいない。

それは、どちらが先だっただろうか。
否、もはやそんな些末事などどうでもいい。向かい合った刹那の瞬間に戦意、敵意は臨界の域にまで沸騰し、一気に爆発した。

それまでピクリとも揺らいでいなかった大気が、走音、叫び、咆哮、爆発、斬撃、打撃、気合、ありとあらゆる音の暴力に打ち震える。
どちらが優勢とも言い切れない。又は、どちらが劣勢だとも言い切れない。
ああ、そんな中、やはり目立ちたがり屋が大半を占めておりまっとうな者が少数な、少々暴走気味の神様陣営の中でも最精鋭の数名。内訳は常識人2名アテナ&オーディン派手好き1名トール、そして。
――――――快楽殺害者シュヴァル(文字通りの意味で)が只今絶賛降臨中。
『あははははははァ!その命頂戴チョウダイ化物バケモノ共ォ!』
口端を思い切り愉悦で吊り上げ、手に特殊系空間魔法と思しき黒いもやを纏わせ、空間ごと魔物の群を削り取っていく。
黒蛇たちも、主の興奮に釣られてか、赤い眼を一層ギラギラ輝かせ、躊躇など欠片もなしに獲物を締め上げ、喰らっていく。
「―――――てか、あっちの総大将は姿すら見えやしねえ…一体いつまで戦えばいいのか」
通常は戦闘中に喋るだけでもかなりのリスクを要求するものなのだが、魔法も併用して戦うレイに傷を負わせられるような魔物は、いない。
『―――後方部隊からの伝令なり!戦闘中に失礼する!』
「―――はわっ!?」
いきなり耳元付近での大声に、驚いたせいで危うく魔法の重ね掛けの為の集中が切れかける。
因みにこれは、別に伝令専用の生物を使っているわけではない。伝令用の耳飾りイヤリング型の魔導具で、時間差タイムラグが無いのが利点だが、音量設定ができないのが難点。
それ故にこのように、いきなり耳元で大声を出された状況になってしまう為、集中が切れかねない状態になりやすい。
『―後方支援部隊の位置まで魔物どもが入り込んでおります!至急、救援を要請致します!』
「(―――――嘘だろ?)」
一瞬、何かの間違いかと思った、けれども、どこからかオーディンが周りの敵を斬り伏せながらこちらまでやってくるのを見ると、その苦々しげな表情から大体読めた。
『どうやら、やつの側近レベルの奴らが突っ込んで攻めてきたようだ。恐らく人間の騎士たちの「精鋭」レベルでも敵わん。この場は私たちが押さえておくから、後ろへ行ってくれないか』
「…了解、です。まあ、あの人達だったら100%大丈夫でしょうけどね」
多分雷神トールが巻き起こしている激烈な白雷と、狂戦士バーサーカー状態の黒蛇神シュヴァル、そして、前2人に比べると堅実さ寄りな戦いをしているらしい戦女神アテナ
ほぼ迷い無しで、レイは今まで発動していた全ての魔法を解除すると、一瞬白い光を纏わせたかと思えば、3と、着地してすぐ全速力で駆ける。


「治癒が追い付かない!魔法薬ポーションを渡してくれ!」
「重傷者は後方へ!擦り傷程度ならもう一番後回しだ!」
「右翼にモンスター接近中!」
――――――そこは、一言で言い表すならば、混沌カオスだった。
人と化物とが秩序の欠片もなく入り乱れ、怒号、叫び、咆哮、それらはもはや只の意味なき騒音だ。
「…………翼獣フェンリル飛竜ワイバーン嵐撃龍トルネイド…数え切れないなどんだけいるんだよ……」
普通のでも名の知れたモンスターの姿がちらほらあり、それら付近の混乱が最も大きい。
一番近い位置にいた飛竜の体へ速力任せに勢いを殺さず走って、駆け上がり。
「……はあッ!」
空中で数回、斬撃を繰り出す。標的は、飛ぶのに使った飛竜と近い位置にいた翼獣、猪王。
斬撃線をなぞって放たれるのは冷気を纏った風の刃。
それらは見事命中すると標的を切り裂く代わりに、命中した場所からパキパキと音を立てて凍り付かせた。
氷属性魔法【氷結刃】+風属性魔法【斬撃飛来】。
その、直後。

          「………………………………あれ誰だ?」
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