32 / 37
5章【終わりは始まり、始まりは終わり】
唯一つ突き抜ける
しおりを挟む
レイがその姿に気づいた瞬間。その誰かは、異常なスピードで周りのモンスターだけを切り倒していく。
ザシュッという斬撃音に混じって、血の吹き出す音やモンスターが地に倒れる音が響く。
「誰か」は、植物を象った美麗な模様の入った赤い着物の袖をなびかせる黒髪の青年だった。
右手に持つのは長さ約70センチ程の打刀。
「確か、どっかで見たことあるような……………ああ」
心の中で納得する。どこかで見たことあるような気がしていたのは、前世でのことか。
実際、地球では有名な刀である。
「――――――やれやれ、久しぶりに山脈から降りてきたけど、こんなもんか」
手に持つ刀は、【和泉守兼定】。青年の方は、厳密にいえば人ではなく、兼定の現身、刀に宿った精霊みたいなものである。
「あなたは何故ここにいるんですか?普通は天矛山脈から降りてくることはないと聞いてますが」
ここで戦闘という動作をこなしながら初対面の相手にこんな話し方ができるあたり、レイもレイだ。
「―挑戦者がいなくて暇だったからな。因みにあそこにいるのが【三日月宗近】だぜ」
兼定がちらりと視線を向けた先には、白銀に輝く武者鎧を纏った長い黒髪の女性。
あちらも負けず劣らずの殲滅っぷりである。
―――――どれだけ暇だったんだよ神刀の精霊たち。
そして見事なまでに対象が日本刀である。まあわからなくもないが。
そんな思考を巡らせていると、馬に騎乗した1人の騎士団長らしき人物が傍にやってきた。
「こんな場所ですまないが、今から言う事を前線にいるオーディン殿達の内の誰かに伝えてもらえないか?」
「―――――構いませんけど」
「では、【後方部隊にいた神官たちが闇の魔物どものこの数の多さのカラクリを掴んだようだ。「禁断の荒野」のどこかにある漆黒の結界器を全て壊せば、無限湧出は取りあえず停止するらしい。】禁断の荒野は致命の地より見て向こう側だ、行くには魔物共を一点突破するしかないと私は考えている」
「成程。ありがとう、ございますッ!」
――――でも神様たちは確実に知ってるだろうけどなー。
遠くの方で発生している閃光が徐々に「禁断の荒野」の方へと移動している。
でもまあ、自分も荒野へ行った方がいいか。
数秒間のためからの、全速力疾走。
言っておくがここで身体能力強化の魔法は一切使っていない。つまり単純な身体能力に頼った芸当である。
そして疾走しながら、刀を前方へと勢いよく突き出す。
魔法陣無しで刀を媒体として発動したのは、この世界に来たばかりの頃使ったあの魔法。
そう。
――雷・闇属性複合系殲滅魔法【世界の終焉に響く歌声】+特殊効果系魔法最上級【蒼炎神の颶風】。
ヒュドラの如き黒の雷光が魔物どもを貫こうとその雷の牙を伸ばし、灼熱を宿した蒼色の炎がただでさえ戦闘の狂熱に炙られていた辺りを、炎の女神の名を冠するに相応しい温度で焼き焦がす。
同時に発生した颶風は明確な指向性を持っており、暴風はその勢いのまま突き進む。
空から俯瞰できれば、それはまるで超大型ローラー車で土を均していくかの様に見えただろう。
射線上にいた魔物は風に引きちぎられ、血を噴き上げてただの肉片と化す。
そうやってできた道をレイは、砂煙と血飛沫を上げながら爆発的な勢いで、突き抜ける槍の如く疾走する。
致命の地と、禁断の荒野の丁度境目。荒野には濃い紫の靄が立ち込めており、一切視界が利かない状態だ。―――――否、だった、といった方が正しいか。
【蒼炎神の颶風】により靄はものの見事に吹き飛ばされて今や普通の荒れ野だった。
「さて…ポータルさえ破壊できれば後はラスボスのところへ行けるか?じゃあ、行くか」
薄い橙に染まる空の下、「戦争」は決着へと向かう兆しを見せ始めていた。
ザシュッという斬撃音に混じって、血の吹き出す音やモンスターが地に倒れる音が響く。
「誰か」は、植物を象った美麗な模様の入った赤い着物の袖をなびかせる黒髪の青年だった。
右手に持つのは長さ約70センチ程の打刀。
「確か、どっかで見たことあるような……………ああ」
心の中で納得する。どこかで見たことあるような気がしていたのは、前世でのことか。
実際、地球では有名な刀である。
「――――――やれやれ、久しぶりに山脈から降りてきたけど、こんなもんか」
手に持つ刀は、【和泉守兼定】。青年の方は、厳密にいえば人ではなく、兼定の現身、刀に宿った精霊みたいなものである。
「あなたは何故ここにいるんですか?普通は天矛山脈から降りてくることはないと聞いてますが」
ここで戦闘という動作をこなしながら初対面の相手にこんな話し方ができるあたり、レイもレイだ。
「―挑戦者がいなくて暇だったからな。因みにあそこにいるのが【三日月宗近】だぜ」
兼定がちらりと視線を向けた先には、白銀に輝く武者鎧を纏った長い黒髪の女性。
あちらも負けず劣らずの殲滅っぷりである。
―――――どれだけ暇だったんだよ神刀の精霊たち。
そして見事なまでに対象が日本刀である。まあわからなくもないが。
そんな思考を巡らせていると、馬に騎乗した1人の騎士団長らしき人物が傍にやってきた。
「こんな場所ですまないが、今から言う事を前線にいるオーディン殿達の内の誰かに伝えてもらえないか?」
「―――――構いませんけど」
「では、【後方部隊にいた神官たちが闇の魔物どものこの数の多さのカラクリを掴んだようだ。「禁断の荒野」のどこかにある漆黒の結界器を全て壊せば、無限湧出は取りあえず停止するらしい。】禁断の荒野は致命の地より見て向こう側だ、行くには魔物共を一点突破するしかないと私は考えている」
「成程。ありがとう、ございますッ!」
――――でも神様たちは確実に知ってるだろうけどなー。
遠くの方で発生している閃光が徐々に「禁断の荒野」の方へと移動している。
でもまあ、自分も荒野へ行った方がいいか。
数秒間のためからの、全速力疾走。
言っておくがここで身体能力強化の魔法は一切使っていない。つまり単純な身体能力に頼った芸当である。
そして疾走しながら、刀を前方へと勢いよく突き出す。
魔法陣無しで刀を媒体として発動したのは、この世界に来たばかりの頃使ったあの魔法。
そう。
――雷・闇属性複合系殲滅魔法【世界の終焉に響く歌声】+特殊効果系魔法最上級【蒼炎神の颶風】。
ヒュドラの如き黒の雷光が魔物どもを貫こうとその雷の牙を伸ばし、灼熱を宿した蒼色の炎がただでさえ戦闘の狂熱に炙られていた辺りを、炎の女神の名を冠するに相応しい温度で焼き焦がす。
同時に発生した颶風は明確な指向性を持っており、暴風はその勢いのまま突き進む。
空から俯瞰できれば、それはまるで超大型ローラー車で土を均していくかの様に見えただろう。
射線上にいた魔物は風に引きちぎられ、血を噴き上げてただの肉片と化す。
そうやってできた道をレイは、砂煙と血飛沫を上げながら爆発的な勢いで、突き抜ける槍の如く疾走する。
致命の地と、禁断の荒野の丁度境目。荒野には濃い紫の靄が立ち込めており、一切視界が利かない状態だ。―――――否、だった、といった方が正しいか。
【蒼炎神の颶風】により靄はものの見事に吹き飛ばされて今や普通の荒れ野だった。
「さて…ポータルさえ破壊できれば後はラスボスのところへ行けるか?じゃあ、行くか」
薄い橙に染まる空の下、「戦争」は決着へと向かう兆しを見せ始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる