宵闇王と精霊の竜刀

火の無い灰

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5章【終わりは始まり、始まりは終わり】

唯一つ突き抜ける

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レイがその姿に気づいた瞬間。その誰かは、異常なスピードで周りのを切り倒していく。
ザシュッという斬撃音に混じって、血の吹き出す音やモンスターが地に倒れる音が響く。
「誰か」は、植物を象った美麗な模様の入った赤い着物の袖をなびかせる黒髪の青年だった。
右手に持つのは長さ約70センチ程の打刀。
「確か、どっかで見たことあるような……………ああ」
心の中で納得する。どこかで見たことあるような気がしていたのは、前世でのことか。
実際、地球では有名な刀である。
「――――――やれやれ、久しぶりに山脈から降りてきたけど、こんなもんか」
手に持つ刀は、【和泉守兼定いずみのかみかねさだ】。青年の方は、厳密にいえば人ではなく、兼定の現身うつしみ、刀に宿った精霊みたいなものである。
「あなたは何故ここにいるんですか?普通は天矛山脈から降りてくることはないと聞いてますが」
ここで戦闘という動作をこなしながら初対面の相手にこんな話し方ができるあたり、レイもレイだ。
「―挑戦者がいなくて暇だったからな。因みにあそこにいるのが【三日月宗近みかづきむねちか】だぜ」
兼定がちらりと視線を向けた先には、白銀に輝く武者鎧を纏った長い黒髪の女性。
あちらも負けず劣らずの殲滅っぷりである。
―――――どれだけ暇だったんだよ神刀の精霊このひとたち。
そして見事なまでに対象が日本刀である。まあわからなくもないが。
そんな思考を巡らせていると、馬に騎乗した1人の騎士団長らしき人物が傍にやってきた。
「こんな場所ですまないが、今から言う事を前線にいるオーディン殿達の内の誰かに伝えてもらえないか?」
「―――――構いませんけど」
「では、【後方部隊にいた神官たちが闇の魔物どものを掴んだようだ。「禁断の荒野」のどこかにある漆黒の結界器ポータルを全て壊せば、無限湧出は停止するらしい。】禁断の荒野は致命の地ここより見て向こう側だ、行くには魔物共を一点突破するしかないと私は考えている」
「成程。ありがとう、ございますッ!」
――――でも神様たちは確実に知ってるだろうけどなー。
遠くの方で発生している閃光が徐々に「禁断の荒野」の方へと移動している。
でもまあ、自分も荒野へ行った方がいいか。
数秒間のからの、全速力疾走。
言っておくがここで身体能力強化の魔法は一切使っていない。つまり単純な身体能力ステータスに頼った芸当である。
そして疾走しながら、刀を前方へと勢いよく突き出す。
魔法陣無しで刀を媒体として発動したのは、この世界に来たばかりの頃使ったあの魔法。
そう。
――雷・闇属性複合系殲滅魔法【世界の終焉に響く歌声ワールド・エンド・ラーガリング】+特殊効果系魔法最上級【蒼炎神スルトの颶風】。
ヒュドラの如き黒の雷光が魔物どもを貫こうとその雷の牙を伸ばし、灼熱を宿した蒼色の炎がただでさえ戦闘の狂熱に炙られていた辺りを、炎の女神の名を冠するに相応しい温度で焼き焦がす。
同時に発生した颶風は明確な指向性を持っており、暴風はその勢いのまま突き進む。
空から俯瞰できれば、それはまるで超大型ローラー車で土をならしていくかの様に見えただろう。
射線上にいた魔物は風に引きちぎられ、血を噴き上げてただの肉片と化す。
そうやってできた道をレイは、砂煙と血飛沫を上げながら爆発的な勢いで、突き抜ける槍の如く疾走する。


致命の地と、禁断の荒野の丁度境目。荒野には濃い紫のもやが立ち込めており、一切視界が利かない状態だ。―――――否、だった、といった方が正しいか。
蒼炎神スルトの颶風】により靄はものの見事に吹き飛ばされて今や普通の荒れ野だった。
「さて…ポータルさえ破壊できれば後はラスボスのところへ行けるか?じゃあ、行くか」

薄い橙に染まる空の下、「戦争」は決着へと向かう兆しを見せ始めていた。
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