宵闇王と精霊の竜刀

火の無い灰

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4章【手がかりは全て…】

既成事実の変換、未来を歪める者

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さわさわ、さわさわ。
明るい陽射しを受けた森の木々が、風に吹かれて擦れ合っている。
「…………(あーもう、なんか使いっ走りパシリにされた感しかしねえ…)」
少々げんなりしながら特にあてもなく森を歩く。
暫く歩くと、森林の先に高い壁が立ちはだかっているのが木々の隙間から垣間見えた。
―遥か上まで、およそ天を突かんばかりにまで高い、石でできた古ぼけた雰囲気の壁。
天辺には雲が懸かり、どうやら壁全体に大きく何かの文様が描いてあるようだが、この大きさでは一部しか満足に見れない。
「……………………見えねぇ」
【視力強化】を使ってもその全貌を把握することはできない。
が、予測を交えて自分なりの答えを導き出す。
巨大な大樹のレリーフに、果実があるはずの位置には超古代精霊文字ルナティック・レリーフで何かが彫ってある。
「…これは…もしかしたら『生命の樹セフィロト』の魔法レリーフのアレンジ版か…?」
―――『生命の樹』の魔法レリーフとは。
上位次元の世界…この世界でいう「天聖界」や「闇魔界」も含めた、世界の上にまた別次元の世界がまるでミルフィーユの様に重なっているという【位相理論いそうりろん】に基づき、という、特殊な力を持つレリーフの事。
この世界の住民で、ある程度の教養を持つ者なら誰でも知っている非常に有名な代物である。

その基となるレリーフを調整アレンジすることで、可視化する次元世界を限定する。
この巨大な古い石壁に描かれた全体像の内、把握目視できる中で最も重要な位置に描かれていること、それは、


「この先は、最高位の次元世界楽園エデン。認められし者のみが立ち入ることのできる世界なり。罪深き穢れし者認められぬものは引き返せ。引き返さぬならば、その身を滅ぼされ、魂は最底辺の位相へと堕とされるであろう。
我はエデンの番人なり。既成事実の変換者である。願いあるならば我に挑め、か。」
その部分を読み上げた直後、唐突に少女の声がかかった。
血の様な真紅の髪と、金銀が混ざったマーブルの瞳、空色無地の衣装。
何より目を引くのが、彼女の頬にある薔薇の花弁を模した黒い模様。
「ねえ貴方、まさかエデンへ入りたい人?」
「…俺は、「天使の雫石の柱状石」を探しにきた。それがこの先にあるのなら入る必要がある」
「……ふーん。確かにあるよ。それもエデンの奥の奥の奥、のところだったかなー」
「………………もしかして結構大事なモノだったりするのか?」
意味深な沈黙の後、少女は肯定の動作を返しうなずいた。
「(……どうしよーか)」
「…エデンの支配者たる方に会って、説得することができればもしかしたら、そのアイテムの力を別の物に分けて封じてくれるかも」
「…で、結局は入れてくれるのか?」
「貴方からはそのアイテムの探索しか目的がないことは精神解読マインドスキャンでわかってるから」
――――――何とエデンの番人さんは固有技能スキルをお持ちでしたようです。
因みに魔法カテゴリに精神に干渉する魔法は存在しない。悪用される可能性が非常に高い為だ。
「◆◆〇…神話物質操作ミソロジーアイテムコントローラ
少々長い、擦過音混じりの複雑な詠唱がされた後、巨大な石壁の一部…全体的に見れば本当に極一部のレンガ状になった石が、勝手に横へずれた。
空いたスペースは、十分人が通れる大きさである。

「どうぞ」
「…(こんなコンビニに入るみたいな気軽さで…)何か不安だ……」
元々面倒ごとにあまり積極的になれる性質たちではないので、先に対する不安=嵐の前の何とかというやつかと最近思い始めている。
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