主人公体質な俺は平凡な生活を全力で死守する

七草 ガユ

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俺の一日

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 テンプレというものをご存じだろうか?
 テンプレート、一般的な意味はデータなど作成する上での雛形のことを言う。
 しかし俺の今言っているテンプレとは、物語などであまりにも多い展開であり、王道、お約束などの意味合いの方のテンプレのこと指している。
 物語の主人公が必ずと言っていいほど経験するそれは、逆に考えるとそれを経験してしまうと物語の主人公になってしまう。そんな風に思ったことはないだろうか?
 いや、回りくどいいい方は辞めよう。実は世界はそんな風になっているのだ。
 暴走トラックに飛び出した人間を偶然見かけて救って死んだ人間が異世界に転生する物語の場合。
 主人公が偶然現場に居合わせるのではなく、その現場の方が主人公を選んで呼び寄せ、物語に巻き込む。
 なぜ言い切れるって? それはな。

「あっぶねぇだろうが!!」

 俺は赤信号の道路に飛び出し今にも大型トラック轢かれそうになっていた少女の襟元に傘の柄を引掛けて引っ張り歩道に戻す。
 戻された少女は「ぐえっ」という声を発して俺の足元に尻もちをつく形で座り込む。

「気を付けろよ」

 俺がそう言って青に変わった信号を渡る。
 今日はこれで三人目だ。
 朝、家から学校に向かうだけで主人公体質・・・・・である俺にはこうやって物語の方から巻き込もうと攻め込んでくる。
 そして俺の通学路は飛び出しとトラックに気を付ければいいというわけではない。
 俺の家から学校に着くまでにある十字路は八つ、そのすべてでパンを咥えた同じ学校の制服を着た見たことのない女子生徒とぶつかりそうになる。
 さらにナイフを持った暴漢や殺人鬼なんかも当たり前のように出てくる。
 このすべてを俺は毎朝巻き込まれないように、尚且つ後味が悪いことにならないように対処しながら学校へ通っているのだ。

 学校につけばゴールというわけでもない。
 クラスについたら床に少しでも魔法陣が浮かび上がろうものなら即座に廊下に逃げなくてはいけない。
 なぜか毎日のように空き机になる隣の席に突然の転校生がこないように様々なことを理由に席を移動するのも日課だ。
 更には、なぜか理事長の孫とかいう先生方より権力をもった生徒会長を筆頭とする生徒会役員には絶対あってはいけない。
 もちろん部活に入ってはいけない。それどころか部活動している部に近づくのもダメだ。かといって帰宅部でいるのもいけない、長い期間帰宅部をしていると頭の悪そうな発言する女子生徒がオリジナルの部活に勧誘してくる、これは帰宅部でいると避けられないイベント、適度に地味で盛り上がらなそうな部活に入って辞めるを繰り返すことが大事だ。

 帰り道も安心できない。なるべく人の多い道を尾行を付けながら歩かないとすぐに物語からの刺客がやってくる。

 家についても油断はできない。
 現在、家は訳あって妹と二人暮らしだ。両親は海外出張中……ということになっている。
 なぜそういうことになっているのかと言えば、俺の家族、いや家系は代々主人公体質・・・・・だからであり、父は勇者で母は元悪役令嬢の聖女様で救ったはずの異世界で魔王が復活したらしく二年ほど家を空けている。
 実は妹の他に兄と姉、弟もいるのだが、兄は大学生なのだがなんだかんだあって大学の女子寮の管理人としてその寮で暮らしている。
 姉は高校の時に巻き込まれた物語がエンディングを迎え大財閥の御曹司と結婚した。
 弟はカードゲームの大会中にカードゲームのキャラクターが実在する世界に旅立ったそうだ。
 ちなみに家にいる妹もアイドルをしながら負の感情を糧にいきる化け物を浄化する変身少女として活躍している。
 こんな家族が住んでいる(いた)家が大丈夫なはずはない。
 まずゲームは出来ない。いつ吸い込まれるかわかったものではない。近い理由でテレビもパソコンも本ですらダメだ。
 やることもないから寝ようとすればすぐおかしな夢をみるので、寝ながらにして自分を起こすことができるという特技があるとは言っても長い睡眠はそれだけで負担になる。
 無事に寝付いたとしても俺の朝は早い、朝日が昇る頃に目が覚めるとどこから現れたかわからない全裸の少女が一緒に寝ていることがあるからだ。暗い内に目を覚まし、もし他の誰かが布団で寝ていようなら即座に警察に電話する。この場合、一番いけないのは二人で寝ているところを第三者に見られることだからだ。

 俺の一日の大まかな流れはこんな感じだ。俺はなんとしても平凡に生きる。
 俺は強く強くそう決意し、今日も雨でもないのに傘を片手に学校へと向かう。
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