愛して愛して愛して愛してる人

綾瑪東暢

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待って!!

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 大学1年生の春。八重やえはやては、学校帰りにスマホを見ながら街をぶらぶら歩いていた。すれ違う人と、肩がぶつかってしまう。
 「あっ、ごめんなっ・・」
 謝るために後ろを振り返ると、遠くに見知った顔を見つけた。
 「あっ・・」
 追いかけなければと、勝手に足が動いた。
 「ま、待って!」
 声を出したが、きっとこの人混みでかき消された。いつの間にか人混みに消えてしまった。
 「あれは・・弘人ひろとだ。」
 
 





 「はーやて!」
 スマホをぼーっと眺めていたらバンッと背中を叩かれた。
 「いっった!」
 「なぁ!今日カラオケいかねぇ?」
 「行かないー」
 しっしっと手で追い払おうとするが、しつこく、
 「行こうよ!女子5人来るぞ!」
 「ほんとパスで。」
 「なんでそう言うんだよ。」
 「いつもはすぐ諦めるのに今日はしつこい。」
 すると手を合わせて、
 「お前が来るって女子に言ってさ。お前が来るなら女子来るって言うんだ。」
 「なんで俺が来るって・・言っただけで」
 「いや、だってよ。あの有名な『男一貫教育学校』の卒業生なんだから。」
 「男育は別に卒業してないし。」
 「はぁ?」
 「卒業したのは私立男小中高大学校、男学校。男育になったのは卒業したあとだから。俺には関係ないよ。ってことで、別人なんので俺は帰る。」
 「颯~お願いだよ。」
 「てかなんで、男育は狙われるの?」
 「女子が言うには、男育に行っていた男は夜がすごいって。騒いでるみたいだ。」
 「はぁ・・・今の男育はそこまでだよ。昔は確かに・・でも、俺は」

 小声で「俺はやられる側だったからすごくない」と呟いた。

 「なんか言ったか?」
 「いや。なんでもない。俺は行かないからな!」
 「じゃあな!」と言って教室を出る。教室から「颯!」と呼ぶ声が聞こえた。

 スマホを取り出して、メールアプリを開く。毎回目に入るのは高校の時友人だった神瀬かみせの名前。連絡が来るかもって、弘人に関して何か教えてくれるかもって、連絡しようと思ってずっとできてない。

 「あ!八重くん。」
 スマホをいじっていると声をかけられた。
 「君は。」
 「えー忘れちゃったの?」
 香水のキツイ女子。
 「カラオケ断ったんだって。じゃあ私と、出かけない?」
 「出かけない。これから用事があるんだ。」
 「ちょ、ちょっと!」
 腕を組まれそうになり、すぐに手を引く。何も言わずにその女子から距離をとる。

 「連絡するか・・」
 頭を掻いて、神瀬の文字を押した。連絡は『2032年7月』で止まってる。もうあっという間に、『2033年』になってしまった。
 メッセージを入力して消してを繰り返す。
 『久しぶり。元気にしてる?弘人に関して聞きたいんだけど。』
 これでいいやと、送信ボタンを押す。つい、既読がついたか見てしまうが、まださすがに来ていないためホーム画面に戻した。
 スマホをバックにしまい、大学から出るために歩き出す。
 
 「弘人に会いたいなぁ・・・話したい。」

 日差しの眩しさで目を隠す。

 春の暖かさで少し寂しさが引き摺り出された。
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