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「八重颯。」
講義が終わり休みに入った瞬間に別の教師が颯を呼ぶ。
「何かやらかしたのか?」
「記憶にない……行ってくる。」
「おう」
友人に断りを入れて、教師の元に行く。
「どうかしましたか?先生。」
「おー、悪いな。少し聞きたいことがあってな。」
ついてくるよう言われ、先生の後を追う。
案内されたのは、入ったことのない空き教室。
「座ってくれ。」
面接するように机が並べられている。少し怖くなりながらも席に着く。
「八重。これを見て欲しくて。」
教師が机に一枚の紙を置いた。そこには
『篠秋信秋について』と書かれた紙。
「これがどうしました?」
「これは八重の提出物だよな?」
「はい。俺が課題として出されて、やって提出したものです。」
「そうか・・。」
「これが・・ダメでしたか?」
「上手にまとめられてはいるんだ。発表できるほどに。だが、これは・・外にあまり出したくない内容だ。八重自身が一番わかってると俺達は思っていたんだが・・。」
「はい。わかっています。」
「なら、なぜこれを題材にした?」
「この課題、『人生を振り返って不思議だと思ったこと』でしたよね。俺がずっと不思議に思っていたことはこの内容なんです。」
颯は紙を持つ。紙には、篠秋信秋について詳しく書かれていた。颯が卒業してきた学校についても。
「俺は発表がしたいとは思っていませんでした。ただ単純に俺がずっと気になっていたことを調べて書いただけです。先生は、昔から俺のことを知っているのでちょうどいいと思ったんです。」
目の前にいる教師は元あの学校の教師だった。
「先生。先生もあの学校の教師だったのは恥ずかしいことですか?」
「・・八重には申し訳ないと思う。俺は正直あの学校の教師だったという事実をなくしたいほど・・恥ずかしい。」
「・・そうですか・・。」
颯は紙をバッグに押し入れた。
「別のにして書き直して出します。迷惑かけました。すみません。」
「あ、ちょっ、八重!」
教師の言葉を無視して、颯は空き教室を出る。
颯にとってあの学校は、無くてはならない学校。あの学校を『恥ずかしいもの』として扱うことは颯にとって大事なものを『恥ずかしいもの』と言われているように感じる。
乱暴に入れた紙を歩きながらバッグから取り出す。
「これは、本当に俺の大事な学校がここにあったっていう、証明・・・。どうして認めてくれないんだ。」
「やっほー!玲司」
女が十瑚に話しかける。ただ、壁で見えていなくて、十瑚はある男と話し込んでいた。
「チッ・・」
十瑚の舌打ちが女に聞こえる。
「あっ・・ごめんー。話してる人が見えなかったから誰もいないのかと思ってたーごめんねー」
女に対して、睨みつけるような目で見ていた十瑚に、
「先輩?もう話いいなら俺、戻りますね。」
十瑚と話していた、颯はちらっと女を見る。
「あ、私?私は九喜未来。」
十瑚の機嫌を気にしつつもニコニコしながら颯に挨拶をする。
「俺は八重颯です。先輩ですか?」
「あ、私ここの大学入ってないから先輩でもないよ。」
「あ・・・そうなんですね。では、十瑚先輩。俺はこれで。」
「あ、あぁ!またそっち行くから。」
「もう来なくていいですよ。先輩」
颯はお辞儀をし、後ろ姿を見せる。
「ごめんね。玲司。」
「はぁぁぁあ・・」
長いため息に未来はピクッとする。本気で怒っていそうな雰囲気。
「いつも言っているよな・・俺が誰かと話している時は横から入ってくるなと。」
「だって、だって!見えなかったんだもん。」
「はぁ・・もういいや。それで何か用?」
「玲司が調べてって言ったんじゃん。」
「七宮か。」
2人は階段下に移動する。
未来が持っていたキーホルダーがたくさんついたバッグからファイルを出す。
「はい。これ。七宮の家族関係と脅す材料になりそうなネタ。」
「ありがとう。助かる」
書類を見ながら適当に未来の頭を撫でた。
「七宮は、4人きょうだいなのか。」
「うん、でも、書類によると次男である七宮弘人は縁を切り家を出た。三男である七宮智弘は、現在、あの大騒ぎになった学校の孤児院にいる。」
「あの大騒ぎになった学校って・・」
「玲司の思っている学校だよ。」
「孤児院・・・あと他は?」
「長女は一人暮らしをしてるみたい。1番上の長男は教師としてあの学校に勤めてる。」
「・・・三男が引っかかるな。七宮ほど世間を気にしてる奴が子供を孤児院に入れるなんてな。」
「確かに変だね。で?私はこれで終わり?」
「じゃあ、この三男について調べておいてくれ。」
「うん!わかったー。」
「そう言えば、未来。」
「んー?」
「また男で遊んでいるのか?」
「だって~貢いでくれるんだもん」
「あっそ……じゃあよろしく。」
「玲司も、私で遊ぶ?」
「遊ばない。」
「わかってるよーだ!」
未来は、まぶたを引き下げ、白目を覗かせると舌を出す。
未来は、走ってその場を後にする。
「めんどくさい女。」
前髪を後ろにかきあげる。
「七宮よりも、俺の方がいいって思わせないと。」
「もしかして、ミクちゃん!?」
大学から出ようと廊下を歩いていると、平凡以下の男に話しかけられた。
「……えっーと」
「俺だよ俺。」
「あっ!あぁ~。久しぶり~」
「ひ、久しぶり。最近忙しい?」
「え?」
「メールの既読が最近付かないから。忙しいのかなって」
「う、うん!忙しいんだ。ごめんね。」
「でも!会えて良かった。」
平凡以下の男は未来の手を取る。
「ミクちゃん。返事聞かせて」
「へ、へんじ?」
「付き合っての返事。」
「も、もう少しだけ考えさせてくれないかな。」
「えぇー、もう何ヶ月も待ってるよ!」
未来はなんとか手を離そうとしているが男の力が強くて離れない。
「付き合うってなると・・考えちゃうからさ。」
なんとかこの場をやり過ごす方法を頭の中で考える。この人が誰で、どこで知り合って、どういうメールをしていたか、思い出そうとする。でも、遊んでる男が多くて一致しない。頭がパンクしそうになっていた時、
「そこまでにしてあげなよ。」
と男の肩に手が置かれた。
「おっ!颯!先生からのお叱りは終わったのか?」
「怒られてないよ。それより、さっき先輩と話していた・・九喜さんだよね。」
「颯、知ってたのか?」
「さっき初めて会ったよ。」
颯は、未来から男を離してくれる。
「ごめんね。」
「だ、大丈夫!私はこれで。」
未来は走って、2人の前からいなくなる。
「九喜さんと知り合いだったの?」
「颯、前にメール見せただろ。あのミクちゃんだよ!」
「あの子が・・。あっ。」
颯は友人の肩を叩く。
「先輩に勝たないとだよ・・頑張れ。」
颯は友人を置いて、先に歩く。
「お、おい!どういう意味だよ!」
「そのままの意味だよ。あの子は多分先輩のことが好きなんだと思う。」
「先輩って、十瑚?」
「うん。」
友人は頭を抑える。
「勝てるわけがねぇー」
「まぁ、頑張れ。」
「チクショー」
講義が終わり休みに入った瞬間に別の教師が颯を呼ぶ。
「何かやらかしたのか?」
「記憶にない……行ってくる。」
「おう」
友人に断りを入れて、教師の元に行く。
「どうかしましたか?先生。」
「おー、悪いな。少し聞きたいことがあってな。」
ついてくるよう言われ、先生の後を追う。
案内されたのは、入ったことのない空き教室。
「座ってくれ。」
面接するように机が並べられている。少し怖くなりながらも席に着く。
「八重。これを見て欲しくて。」
教師が机に一枚の紙を置いた。そこには
『篠秋信秋について』と書かれた紙。
「これがどうしました?」
「これは八重の提出物だよな?」
「はい。俺が課題として出されて、やって提出したものです。」
「そうか・・。」
「これが・・ダメでしたか?」
「上手にまとめられてはいるんだ。発表できるほどに。だが、これは・・外にあまり出したくない内容だ。八重自身が一番わかってると俺達は思っていたんだが・・。」
「はい。わかっています。」
「なら、なぜこれを題材にした?」
「この課題、『人生を振り返って不思議だと思ったこと』でしたよね。俺がずっと不思議に思っていたことはこの内容なんです。」
颯は紙を持つ。紙には、篠秋信秋について詳しく書かれていた。颯が卒業してきた学校についても。
「俺は発表がしたいとは思っていませんでした。ただ単純に俺がずっと気になっていたことを調べて書いただけです。先生は、昔から俺のことを知っているのでちょうどいいと思ったんです。」
目の前にいる教師は元あの学校の教師だった。
「先生。先生もあの学校の教師だったのは恥ずかしいことですか?」
「・・八重には申し訳ないと思う。俺は正直あの学校の教師だったという事実をなくしたいほど・・恥ずかしい。」
「・・そうですか・・。」
颯は紙をバッグに押し入れた。
「別のにして書き直して出します。迷惑かけました。すみません。」
「あ、ちょっ、八重!」
教師の言葉を無視して、颯は空き教室を出る。
颯にとってあの学校は、無くてはならない学校。あの学校を『恥ずかしいもの』として扱うことは颯にとって大事なものを『恥ずかしいもの』と言われているように感じる。
乱暴に入れた紙を歩きながらバッグから取り出す。
「これは、本当に俺の大事な学校がここにあったっていう、証明・・・。どうして認めてくれないんだ。」
「やっほー!玲司」
女が十瑚に話しかける。ただ、壁で見えていなくて、十瑚はある男と話し込んでいた。
「チッ・・」
十瑚の舌打ちが女に聞こえる。
「あっ・・ごめんー。話してる人が見えなかったから誰もいないのかと思ってたーごめんねー」
女に対して、睨みつけるような目で見ていた十瑚に、
「先輩?もう話いいなら俺、戻りますね。」
十瑚と話していた、颯はちらっと女を見る。
「あ、私?私は九喜未来。」
十瑚の機嫌を気にしつつもニコニコしながら颯に挨拶をする。
「俺は八重颯です。先輩ですか?」
「あ、私ここの大学入ってないから先輩でもないよ。」
「あ・・・そうなんですね。では、十瑚先輩。俺はこれで。」
「あ、あぁ!またそっち行くから。」
「もう来なくていいですよ。先輩」
颯はお辞儀をし、後ろ姿を見せる。
「ごめんね。玲司。」
「はぁぁぁあ・・」
長いため息に未来はピクッとする。本気で怒っていそうな雰囲気。
「いつも言っているよな・・俺が誰かと話している時は横から入ってくるなと。」
「だって、だって!見えなかったんだもん。」
「はぁ・・もういいや。それで何か用?」
「玲司が調べてって言ったんじゃん。」
「七宮か。」
2人は階段下に移動する。
未来が持っていたキーホルダーがたくさんついたバッグからファイルを出す。
「はい。これ。七宮の家族関係と脅す材料になりそうなネタ。」
「ありがとう。助かる」
書類を見ながら適当に未来の頭を撫でた。
「七宮は、4人きょうだいなのか。」
「うん、でも、書類によると次男である七宮弘人は縁を切り家を出た。三男である七宮智弘は、現在、あの大騒ぎになった学校の孤児院にいる。」
「あの大騒ぎになった学校って・・」
「玲司の思っている学校だよ。」
「孤児院・・・あと他は?」
「長女は一人暮らしをしてるみたい。1番上の長男は教師としてあの学校に勤めてる。」
「・・・三男が引っかかるな。七宮ほど世間を気にしてる奴が子供を孤児院に入れるなんてな。」
「確かに変だね。で?私はこれで終わり?」
「じゃあ、この三男について調べておいてくれ。」
「うん!わかったー。」
「そう言えば、未来。」
「んー?」
「また男で遊んでいるのか?」
「だって~貢いでくれるんだもん」
「あっそ……じゃあよろしく。」
「玲司も、私で遊ぶ?」
「遊ばない。」
「わかってるよーだ!」
未来は、まぶたを引き下げ、白目を覗かせると舌を出す。
未来は、走ってその場を後にする。
「めんどくさい女。」
前髪を後ろにかきあげる。
「七宮よりも、俺の方がいいって思わせないと。」
「もしかして、ミクちゃん!?」
大学から出ようと廊下を歩いていると、平凡以下の男に話しかけられた。
「……えっーと」
「俺だよ俺。」
「あっ!あぁ~。久しぶり~」
「ひ、久しぶり。最近忙しい?」
「え?」
「メールの既読が最近付かないから。忙しいのかなって」
「う、うん!忙しいんだ。ごめんね。」
「でも!会えて良かった。」
平凡以下の男は未来の手を取る。
「ミクちゃん。返事聞かせて」
「へ、へんじ?」
「付き合っての返事。」
「も、もう少しだけ考えさせてくれないかな。」
「えぇー、もう何ヶ月も待ってるよ!」
未来はなんとか手を離そうとしているが男の力が強くて離れない。
「付き合うってなると・・考えちゃうからさ。」
なんとかこの場をやり過ごす方法を頭の中で考える。この人が誰で、どこで知り合って、どういうメールをしていたか、思い出そうとする。でも、遊んでる男が多くて一致しない。頭がパンクしそうになっていた時、
「そこまでにしてあげなよ。」
と男の肩に手が置かれた。
「おっ!颯!先生からのお叱りは終わったのか?」
「怒られてないよ。それより、さっき先輩と話していた・・九喜さんだよね。」
「颯、知ってたのか?」
「さっき初めて会ったよ。」
颯は、未来から男を離してくれる。
「ごめんね。」
「だ、大丈夫!私はこれで。」
未来は走って、2人の前からいなくなる。
「九喜さんと知り合いだったの?」
「颯、前にメール見せただろ。あのミクちゃんだよ!」
「あの子が・・。あっ。」
颯は友人の肩を叩く。
「先輩に勝たないとだよ・・頑張れ。」
颯は友人を置いて、先に歩く。
「お、おい!どういう意味だよ!」
「そのままの意味だよ。あの子は多分先輩のことが好きなんだと思う。」
「先輩って、十瑚?」
「うん。」
友人は頭を抑える。
「勝てるわけがねぇー」
「まぁ、頑張れ。」
「チクショー」
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