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第2章

第11話 ここは原種族の星だったのか

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初めの訪問先であるシクス惑星の破壊神を取りあえず消し去った真琴達一行は、急ぐ旅ではないと(あくまで真琴談だが)言うことで、アム神の了解の下にアム神が支配する六つの星をそれぞれ観光して回ることに決めていた。アム神がすっかり真琴のジジババキラーの餌食になってしまい、自ら観光案内をすると言っていたがそれは奏多が丁寧にお断りしている最中に真琴が『ジャマ』の一言で一刀両断してしまう。

しかし、すっかり真琴に毒されたアム神は、その一言さえも自分の忙しさをおもんばかってくれたのだとポジティブ変換していた。奏多はゼノバゼロス様が一番初めに創った人が住む星の神がこれで大丈夫かと他人事ながら再び心配になっていた。見た目老人の姿になっただけの神だと言うことをおばあちゃん子の奏多も忘れ気味での心配であった。

アム神が管理するシクス惑星の六つの星はそれぞれの星の名前の最後にベリファが付いているのが特徴の星でそれぞれの星に住む人種も星ごとに棲み分けされていた。そしてもっとも特徴的なのはそれぞれの星が重なる部分に各種族のハーフと言える存在が棲んでいることだろう。ハーフは重なった星以外の場所へは入ることが結界によって出来なくなってしまうがその逆もしかりだ。

六つの星はそれぞれが結界に覆われていて、他種族との交流が出来ない。言い方を変えればその存在すら知りえない環境と言うことになるのだ。今回6番目の星シスベリファで生まれた破壊神はそんな星の結界を破る脅威の存在だった。この星が宇宙創造神ゼノバゼロスの原始種族を創造した場所であり、世界に広がる星々の生きとし生けるものの母なる星と言っても過言ではなかった。

まあ、言い方を変えれば新しい種族を創るための実験星とも言えなくはないだろう。奏多が現世で憧れた勇者も冒険も迷宮探索もダンジョンも期待できないとがっかりしていた。




・アンベリファ=人族
(半獣/半亜人)
・デベリファ=獣人/亜人族
(ハーフドワーフ)
・トロワベリファ=ドワーフ/小人族
(ハーフエルフ/精霊)
・カトルベリファ=妖精/エルフ族
(竜人/龍人)
・センクベリファ=ドラゴン/竜種族
(ハーフデーモン/半魔)
・シスベリファ=魔族/魔人族

「奏多殿、確かにこの星は原始の種族を創生するために生み出された星ですが、ダンジョンも迷宮もありますぞ。全てはこの星から始まっていますからな。」

「おおーそれは楽しみになってきました。種族間の交流が無いのは物足りない気がしますが、それもこの星の特性ですからね。」

『奏多、ダンジョンや迷宮なんて怖い響きがある所は行かないからな。でもさ、それぞれの星が行き来出来ない創りなら、俺達のこの姿でウロウロ出来ないんじゃないの?』

「おっと、真琴らしからぬ言動だな、吉凶の前触れか? でも確かにそうだよな。俺や桜は人族の星は平気だけどそれ以外はマズいかもな。」

「そうですね、私は変身が出来ませんので真琴様や奏多様のご迷惑になるかもしれませんね。」

『大丈夫じゃない?奏多、魔法でチョチョイとなんかやってよ』

真琴は相変わらず面倒ごとはいやだと、奏多に丸投げしていたが、そこへアム神が真琴に恭しく腕輪型の神器を差し出して来た。

「真琴様、この魔道具を持っていれば変身せずともそれぞれの星の住人にふさわしい姿に見える魔法が掛けてあり、各結界も素通り出来るアイテムになっていますのでこれをお持ちください。」

『あ、そう? ありがとうね。3人分あるの?』

「はい、ございますのでご遠慮なくどうぞ。」

あっさり解決したことで、真琴はアム神って初めの見た目は頂けなかったけど良いヤツじゃんと現世で真琴が好きな和菓子でお年寄りにも大人気の薄皮饅頭とお茶のセットをお取り寄せしてアム神にプレゼントしたらアム神はどちらが神なのか分からない成りで涙を流さんばかりに喜んでいた姿に奏多と桜はきっと神器の方が値打ちモノだよねと目で語り合っていた。


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