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第2章

第12話 やっと観光に行けるよ

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アム神に貰った変化アイテムと言う名の神器を各自腕に装着し………

『出来ないじゃん!腕ってどこよ?何処に付けんのこれ?
えっもしや…神様のいじめ? 信じらんないわー』

何処かで聞いたフレーズを再び連呼しながら《バニボー》姿の真琴は腕に付けられないとブツブツ文句を言い始める。

それを聞いたアム神が顔色を悪くして挙動不審になっている姿に奏多は哀れさを感じていた。

この星で1番偉い神様が生物として疑問視したいカラフルバニボー姿の真琴の言葉で一喜一憂する。

ありえんでしょうと、奏多は他人事ながら同情していた。


「真琴、いい加減にしろよ。お前の体系に問題があるだけだぞ。
ほら貸してみろ。ネックレス型にしてやるから。」

『ほんと?奏多は役に立つね。それに引きかえアム神は——ジトー』

真琴のジト目に再び挙動不審になるアム神を助けるべく奏多は真琴と桜にこれからの予定を確認することにした。

「真琴、何処からスタートするんだ? 破壊神がいたこのシスベリファから回るか?
桜はどうだ? 行きたい星があるか?」

ナイスです奏多殿とアム神が奏多を見て嬉しそうに微笑む。やはり奏多は老人には甘いナイスガイであった。

しかしそんな優しい奏多よりも傍若無人な真琴の方がジジババ&お子様人気は抜群であり、この異世界においては神様人気も出そうだとひそかな理不尽を感じる奏多であった。


◇◇◇◇◇



アム神の意見も参考にここはやはり人族が暮らすアンベリファから回ることになった。

いくら破壊神を消し去ったとは云えこの辺りはどこまでも続く荒れた荒野しか見当たらない。

せっかくの旅行気分も盛り下がるというものだ。

「そろそろいくぞ。 アム神様色々ありがとございました。
それに、真琴がなんだか……申し訳ありません。」

奏多は一応真琴の保護者代理になっている手前、真琴の非礼さを詫びたが、却ってアム神には恐縮された。

「奏多殿、お詫びなんてとんでもありません。頭痛の種だったバグも消し去って頂き、
眷属魔獣も排除して、これ以上求める事などあろうはずがありません。
道中何か不都合があれば真琴様のスキルでいつでも呼んで下さって結構です。」

何故か奏多はアム神の言葉が、是非、今すぐにでも呼んで欲しいと聞こえる。

あんなに冷たい仕打ちをされていると言うのにこの神様は苛められたいのかと失礼な事を考えてしまう奏多であったが、少し離れた位置で同じような感想を桜も抱いていたのはご愛敬だ。

『おお~い、いつまで待たせるんだ~奏多、桜、行こうよ~』

そして3人は付いて行きたそうにしているアム神を見ないようにアム神が教えてくれた人族が住むアンベリファの人目が無い古代遺跡へ転移して行った。


◇◇◇◇◇


『おおーここが古代遺跡かー。奏多が好きそうな場所だな。』

「奏多様は遺跡が趣味なのですか?」

「いや、別に遺跡の趣味は持ち合わせていないぞ。
俺は遺跡に冒険の熱いパッションを求めてるんだ。」

『はあ?奏多何言ってるか分かんないんだけど。
桜~なんかお菓子ちょうだい。飲み物はコークね。』

「ハーイ、お待たせ致しましたどうぞ~」

「…… お前らー。 もういいさ。それより見た目変わってる気がしないけど
これって見た目変わってるのか? 真琴お前の事だぞ。」

「本当ですね?見た目は全然変わってないですね。」

『ん?大丈夫じゃない。アム神、あれでも神様だよ?』

「まぁそうだよな。どれ、ここからは歩いて街まで行こうぜ。」

『えー歩くの疲れるじゃん!
あっ、そうだ!ニハハー擬態スタート~』

真琴はいきなり虹色の光に包まれたと思った瞬間、現世での桜の姿に擬態していた。

器用にも桜の上着のポケットに入り込み、二人にだけ分かる念話でこのままの姿で街に入ると伝え、着いたら起こしてねと眠り始める真琴であった。

「ふふふっ、真琴様ったら私の姿になっています。」

「ああ、そうだな、お前ら主従関係は謎が多いよ。はあー」

一見まともに見える桜もやはり元は真琴のペットである、感性が似た者主従関係で意外に奥深い関係かも知れないと奏多は遠い目をして桜とポケットで眠りこけているであろう真琴に思いをはせていた。

まだまだ、真琴が望むのんびり観光にはほど遠いだろうと奏多は考えていたが、その原因もまた真琴だと言うことにやはり言い知れぬ理不尽さを感じている奏多に真琴から現世ライトノベル新刊を賄賂のように与えられ、小躍りしてしまう奏多の姿が垣間見えるまで後わずかな時間だと言うことも記しておこう。

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