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そのにじゅうよん
ロシュの変態っぷりは他者を引かせる
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授業の合間の休み時間を利用して、リシェは提出物を届ける為に職員室に居た。転入関連の書類を担任教師であるオーギュスティンに渡し終えると、これで集めるべき書類は全て整いましたと告げられる。
リシェは「良かった」と安心した。
「どうですか?学校生活は」
「だいぶ慣れました」
オーギュスティンと会話していると、何故か妙な安心感を覚えてしまう。外見はキツそうに見えるのに、不思議な感覚だ。昔から知っているような懐かしさを感じる。
その一方でオーギュスティンも、不思議な気持ちになっていた。
…私、この子を前から知っているような気がする。
何故そんな考えが過るのか、お互い知らないままだ。
「そうですか。それなら良かった。あなたが安心して生活出来るならこれ以上の事はありませんよ。困った事があればいつでも私に言いなさい」
「はい」
和やかに会話をしていると、保健室からロシュが戻って来た。相変わらず無駄に外見が良い彼は、室内に足を踏み入れるだけで一気に空気が変化する。
肩までの緩いウェーブがかった髪を無造作に後ろで一つにまとめて端正な顔の形を明確に見せている為、まるで彫刻のような見映えだった。
彼は周囲を見回すと、強烈な引力を感じたかのようにオーギュスティンと向き合って話をしている少年の姿を見つける。そして胸をぎゅううっと締め付けられる感覚に陥ってしまった。
「(はぁああああんっ!り、リシェ!!リシェが目の前に居るうう!!)」
急かしだす心を押し留めるロシュは、冷静を装いながらそそそと彼らの近くへ寄った。
「…あなたは成績も良いようなのでこれからも頑張りなさい、リシェ」
「はい。ありがとうございます」
オーギュスティンはリシェに微笑む。
リシェはそんな彼にぺこりと頭を下げ、失礼しますと立ち去ろうとした。後ろを振り返り教室へ戻ろうとしたその時、ばふりと壁のようなものに全身ぶつかってしまう。
「んぐ」
「あっ」
ふわりと体が支えられた。
リシェは誰かにぶつかってしまったのか、と謝りながら自分より背の高い相手を見上げる。
「大丈夫ですか、リシェ?」
「は、はい…すみません」
見上げた先には白衣を着用した美形の男。それを見るなり、リシェは「ひゃあああ!」と叫び出した。
オーギュスティンはリシェの変な反応を察知すると、ロシュに向けて怪訝な視線を送る。
「そ…そんなに怖がらなくても!!」
「だ、だって」
急激にオロオロしだすリシェは、ロシュの腕から逃れようともがいた。だがロシュはしっかりとリシェの身を両手で支える。
制服姿のリシェが可愛くて、じっくり見たいのだ。
じっくり見て、妄想の中で彼の制服を優しく脱がせてあげたい。
「あなたこの子に変な事をしたんじゃないでしょうね」
オーギュスティンは低い声でロシュに問いかけながら、リシェの手を掴んで強引に引き寄せた。
頼りになる担任教師にしっかりガードされ、リシェの身はぽふりと彼の胸元に収まった。
「し、してませんよ!」
前回はリシェの落としたハンカチの匂いを激しく吸い込んだが、それだけだ。結局ハンカチを貰ってしまう結果になったが、それは今彼の部屋で厳重に保管されている。
たまに匂いを確かめる位だ。
「あっ…あなたこそリシェに何の用事が」
「私はこの子の担任ですが何か?」
ぐ、と詰まるロシュ。
オーギュスティンはリシェに対し、「彼にもし変な事をされたらすぐに私に伝えなさい」と言った。
既に被害を受けているのだが、とリシェは複雑そうな顔を向けつつこくりと頷く。
「な…っ!へ、変な事ですって!?何という事を言い出すのですか!わ、私はそんな事」
「しないと言えるのですか?美少年とくればすぐに反応するくせに」
「私はリシェ限定です!!」
その言葉で余計に警戒するオーギュスティン。
リシェはひくひくとオーギュスティンの腕の中で怯え、ロシュを見上げていた。
「うわあ…何ですか、変態もここまでくると返す言葉を失いますね。リシェ、彼に追われたらすぐに職員室に来るのですよ?何かされたらすぐに警察を呼びますからね」
「は、はい」
完全にオーギュスティンに変態扱いされてしまい、ロシュはううと呻いた。
これでは攻略しようにも、更にリシェが遠くなるではないか。やはりハンカチ事件がいけなかったのだろうか。
「今まで何かされませんでしたか?大丈夫ですか?」
オーギュスティンはリシェに確認する。
小さな事でも生徒の不安を取り除かねばならない。それは担任の大切な役割だ。
そしてリシェはおずおずと彼を見上げると、「俺の落としたハンカチを思いっきり嗅がれました」と答える。
ロシュはうぐっと胸元を押さえる。
やはり根に持っていたのか、と。
オーギュスティンは「えぇ…」とロシュを見ながらドン引きした。
「へ…変態ですか?あなた…うわあ…」
これ以上無い位の引きっぷりだ。
「そんな無駄に綺麗な出で立ちで、よくもまぁ…うわぁ…気持ち悪いですね…はあ…気持ち悪…」
可哀想に、とリシェの頭を撫でる。
ロシュは「そこまで引かなくてもいいでしょう!?」と強引に開き直るより無かった。
リシェは「良かった」と安心した。
「どうですか?学校生活は」
「だいぶ慣れました」
オーギュスティンと会話していると、何故か妙な安心感を覚えてしまう。外見はキツそうに見えるのに、不思議な感覚だ。昔から知っているような懐かしさを感じる。
その一方でオーギュスティンも、不思議な気持ちになっていた。
…私、この子を前から知っているような気がする。
何故そんな考えが過るのか、お互い知らないままだ。
「そうですか。それなら良かった。あなたが安心して生活出来るならこれ以上の事はありませんよ。困った事があればいつでも私に言いなさい」
「はい」
和やかに会話をしていると、保健室からロシュが戻って来た。相変わらず無駄に外見が良い彼は、室内に足を踏み入れるだけで一気に空気が変化する。
肩までの緩いウェーブがかった髪を無造作に後ろで一つにまとめて端正な顔の形を明確に見せている為、まるで彫刻のような見映えだった。
彼は周囲を見回すと、強烈な引力を感じたかのようにオーギュスティンと向き合って話をしている少年の姿を見つける。そして胸をぎゅううっと締め付けられる感覚に陥ってしまった。
「(はぁああああんっ!り、リシェ!!リシェが目の前に居るうう!!)」
急かしだす心を押し留めるロシュは、冷静を装いながらそそそと彼らの近くへ寄った。
「…あなたは成績も良いようなのでこれからも頑張りなさい、リシェ」
「はい。ありがとうございます」
オーギュスティンはリシェに微笑む。
リシェはそんな彼にぺこりと頭を下げ、失礼しますと立ち去ろうとした。後ろを振り返り教室へ戻ろうとしたその時、ばふりと壁のようなものに全身ぶつかってしまう。
「んぐ」
「あっ」
ふわりと体が支えられた。
リシェは誰かにぶつかってしまったのか、と謝りながら自分より背の高い相手を見上げる。
「大丈夫ですか、リシェ?」
「は、はい…すみません」
見上げた先には白衣を着用した美形の男。それを見るなり、リシェは「ひゃあああ!」と叫び出した。
オーギュスティンはリシェの変な反応を察知すると、ロシュに向けて怪訝な視線を送る。
「そ…そんなに怖がらなくても!!」
「だ、だって」
急激にオロオロしだすリシェは、ロシュの腕から逃れようともがいた。だがロシュはしっかりとリシェの身を両手で支える。
制服姿のリシェが可愛くて、じっくり見たいのだ。
じっくり見て、妄想の中で彼の制服を優しく脱がせてあげたい。
「あなたこの子に変な事をしたんじゃないでしょうね」
オーギュスティンは低い声でロシュに問いかけながら、リシェの手を掴んで強引に引き寄せた。
頼りになる担任教師にしっかりガードされ、リシェの身はぽふりと彼の胸元に収まった。
「し、してませんよ!」
前回はリシェの落としたハンカチの匂いを激しく吸い込んだが、それだけだ。結局ハンカチを貰ってしまう結果になったが、それは今彼の部屋で厳重に保管されている。
たまに匂いを確かめる位だ。
「あっ…あなたこそリシェに何の用事が」
「私はこの子の担任ですが何か?」
ぐ、と詰まるロシュ。
オーギュスティンはリシェに対し、「彼にもし変な事をされたらすぐに私に伝えなさい」と言った。
既に被害を受けているのだが、とリシェは複雑そうな顔を向けつつこくりと頷く。
「な…っ!へ、変な事ですって!?何という事を言い出すのですか!わ、私はそんな事」
「しないと言えるのですか?美少年とくればすぐに反応するくせに」
「私はリシェ限定です!!」
その言葉で余計に警戒するオーギュスティン。
リシェはひくひくとオーギュスティンの腕の中で怯え、ロシュを見上げていた。
「うわあ…何ですか、変態もここまでくると返す言葉を失いますね。リシェ、彼に追われたらすぐに職員室に来るのですよ?何かされたらすぐに警察を呼びますからね」
「は、はい」
完全にオーギュスティンに変態扱いされてしまい、ロシュはううと呻いた。
これでは攻略しようにも、更にリシェが遠くなるではないか。やはりハンカチ事件がいけなかったのだろうか。
「今まで何かされませんでしたか?大丈夫ですか?」
オーギュスティンはリシェに確認する。
小さな事でも生徒の不安を取り除かねばならない。それは担任の大切な役割だ。
そしてリシェはおずおずと彼を見上げると、「俺の落としたハンカチを思いっきり嗅がれました」と答える。
ロシュはうぐっと胸元を押さえる。
やはり根に持っていたのか、と。
オーギュスティンは「えぇ…」とロシュを見ながらドン引きした。
「へ…変態ですか?あなた…うわあ…」
これ以上無い位の引きっぷりだ。
「そんな無駄に綺麗な出で立ちで、よくもまぁ…うわぁ…気持ち悪いですね…はあ…気持ち悪…」
可哀想に、とリシェの頭を撫でる。
ロシュは「そこまで引かなくてもいいでしょう!?」と強引に開き直るより無かった。
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