異世界学園の中の変な仲間たち2

へすこ(ひしご)

文字の大きさ
27 / 101
そのにじゅうろく

ドッジボール

しおりを挟む
 今日はグラウンドは二年生が利用しているので使えない為、体育館でドッジボールをすると宣言されたリシェのクラス。生徒によって悲喜交々の中、ぼんやりとその知らせを聞いていたリシェはぶつけ合いかぁ…と天井に挟まっている小さいボールの数々を見上げていた。
 数人ずつチーム分け、体育館の敷地を分割してそれぞれ試合を行う。適当に割り振られたチームで、リシェはスティレンと離れてしまう。別のチームになったと知るや、スティレンはニヤニヤしながらリシェに近付いてきた。
「ふふ…リシェ、運が悪かったねぇ俺と別チームなんてさぁ。お前は絶対俺が落としてやるからね」
 やたらと闘志満々な従兄弟を、リシェは困ったような表情を見せて困惑した様子。
「お前、俺に何か恨みでもあるのか」
「特に無いけど、お前はどうしても俺がボールを当てたいんだよ。ふふん、覚悟しな」
 幸いリシェの入っているチームとスティレンのチームは二回戦目で、少し待機しなければならない。一回戦目の試合を見ている間、同じチームになった同級生はちょいちょいと観戦中のリシェに話しかけてきた。
「なぁ、あんた大丈夫なのか」
 あまり会話した事の無い同級生は、やけに恐る恐る話を切り出す。
「何がだ?」
 クラスに数人は居るであろうちょっと派手めなその生徒らは、やたら敵視してきたスティレンに不安を覚えたのだろう。
「なんかめっちゃ狙う発言されてるじゃん」
 だがリシェはけろっとしたまま「大丈夫だ」とだけ返した。
「俺があいつを狙えばいいだけの話だ」
 そういう問題なのか。
 むしろそんな外見でそこまで強気になる程ドッジボールの力が強いのか。同級生らはお、おう…と返す言葉を無くしていると、自分達の番が回ってきた。
 開始前、スティレンはこちらを見てやたらニヤニヤといやらしい笑みを向けてくる。チーム別に整列し、挨拶を済ませていると向かい合うリシェを見下す。
「ふふん、リシェ。俺がお前にぶつけるんだから間違っても他の奴らなんかにやられないでよ?」
「……」
 困ったやつだと眉をハの字にしながら「その前にお前が陣地から居なくなると思う」と反論した。
 生意気な、と文句を言う。
 スティレンは舌打ちし、今に見てなと強がりを言い返した。どうにかしてこの生意気なリシェを打ち負かしたい。
 試合開始の笛が館内に鳴り響いた。
 最初は滞りなくボールの打ち合いをしていったが、スティレンに反撃のボールが渡ると、彼は美しい顔を小悪魔の表情に変化させた。
 その予告通り、彼がボールを思いっきり振るってリシェに向けて放った。ボールは激しい回転をしながら小さなリシェ目掛けて飛んでいく。
「リシェ。大人しく枠外に行きな!!」
 結構な速さだった。試合前に予告されていただけあり、同級生達はうわ、と声を上げてその行先に目を向ける。
 リシェはひょいっとそれを避けた。
 ボールはそのまま枠外を超えて体育館の壁にバシーン!と衝撃音を響かせて勢い良くバウンドし、リシェのチーム内の一人にキャッチされてしまう。
「おっ。ラッキー」
 豪速球過ぎてかえって敵チームに渡ってしまい、スティレンは軽く悪態をつく。もうちょっと軽めにすればよかったのかと。
 まあいい、この次さ。
 次こそ絶対にぶつけてやる、と更に闘志を燃やした。

 この時間の授業が終わって教室に戻る最中のラス。
 外靴から上履きに履き替えていると、何やら体育館方面がやけに喧しい事に気付く。
「何だ?」
「凄え面白い事してるんだよ、一年の授業だったみたいなんだけど」
「終わんねぇのかよこれ」
 何をしているのだろうか。
 ラスはノーチェ達に引っ張られるまま、体育館の入口で溜まり場になっている生徒らに便乗してその奥を眺めた。
 そこにはドッジボールを授業後にもまだ続けている美少年二人の姿。他の生徒達が枠外に出されても、リシェをスティレンだけが残って打ち合いをしていた。
「なんだあいつら?」
「めっちゃ続いてるじゃん」
「あの小さいのもやけに豪速球投げてんなぁ」
 お互い負けたくない熱気が館内から溢れていた。
 二人共早く負けてしまえと言いながらボールを互いに投げ合っていく。
「先輩とスティレンじゃんか…」
 終わる事の無い試合を眺めながら、ラスは呆気に取られていた。体力が尽きる事無く投げ合っているのは、元の世界からの名残のせいだろうか。
「…早く落ちろ!!」
「お前が早く落ちればいいだけの話だ!!」
 度々そんな声が聞こえてくる。
 彼らの意地の張り合いを見ながら、ラスはこりゃなかなか終わりそうも無いなぁと苦笑いしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...