異世界学園の中の変な仲間たち2

へすこ(ひしご)

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そのさんじゅうに

夢の住人

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 リシェは真っ白い空間の中に居た。
 周囲を見回すと、何者かがぽつんと立っている。そもそもこの場所が一体どこなのか、さっぱり分からない。
 仕方無くその何者かに近付いてみると、次第に違和感を感じ始めた。姿形がどう頑張っても自分と似ていたのだ。
 ただ違うのは、その出で立ち。
 世界観の全く違う服装だった。相手は自分の姿に気付くと、眉間に皺を寄せて不思議そうにリシェに問う。
 問いかけた彼は、自分と全く同じ顔をしていた。
「…何だお前は?」
 リシェは服装の違いはあれど、自分と全く同じ姿をした相手に「お前こそ誰なんだ」と問う。
 良く見れば、相手の瞳の色が違った。
 深みのある赤い目をしている。何故赤いのだろう。
「大体、その格好は何だ?何のコスプレだ?どこから来たんだ」
 むしろ全く自分と同じ顔で、まるでどこかのゲームの住人みたいな衣服を纏っているのが意味不明だ。完全に怪しい奴ではないか。
 リシェは首を傾げて彼に問いかける。
「格好?…お前こそ何だ、その変な格好は。武器も持たずにあまりにも無防備だ。いつ何が起こるか分からないのに」
 お互いがお互いに疑問を呈する。
「は…?武器?何だそれは。武器なんて持ってたら捕まるだろうが。それともお前は通り魔か何かか?」
「捕まる?何を言っているんだ。外の世界は危ないんだぞ。お前こそ、そんな格好だと殺して下さいと言っているようなものだ」
 同じ顔をした者同士でお互いに変な事を言い合う。
 リシェは怪訝そうに相手を見ながら、「お前、何なんだ?」と聞いた。
「お前こそ俺の顔して…俺の真似をするな」
「お前が俺の真似をしているんだろうが!」
 黒い軍服のような衣装を纏う相手と、制服姿の自分はお互いに向かい合いながら苛々と睨み合いを続ける。
 しばらく睨み合いをしていたが、次第にリシェは疑問を抱き始めた。完全に自分の姿なのに、まるでどこかの世界から来たような出で立ち。そして赤い瞳。
 こいつは一体誰なのか、と。
「…というか…むしろ、お前の名前は何だ?何で俺の姿をしているんだ」
 疑問をぶつけたが、相手はふいっとそっぽを向く。
「お前に名乗る名前は無い」
「いいから言え!!」
 相手は憮然とした顔をこちらに向けると、「まずはお前から名乗れ」と偉そうに言いのけた。
「ちっ…」
 舌打ちし、リシェは渋々自分の名前を告げる。
「リシェ=エルシュ=ウィンダート」
 名乗ったと同時に、相手はふざけるなと激昂する。
「それは俺の名前だ!!馬鹿にするのも大概にしろ!」
 彼はそう怒鳴ると、自分の頬をぐにょりと引っ張ってきた。痛い!!と叫ぶリシェ。
「馬鹿にして何の得があるんだ!お前こそふざけるな!」
 ギリギリと頬を引っ張ってくる相手の髪をむんずと掴むと、対抗して引っ張った。彼はぐぐっと顔を歪める。
 容赦無く手が出る辺り、似通っていたがお互いそれを決して認めなかった。可愛らしい顔をしながら罵倒し合う。
「痛い!引っ張るな!!」
「お前こそ引っ張るな!!」
 引っ張り合いを経て、やがてお互いぽこすかと殴り合う。しばらく乱闘をした後、息切れを起こしながらリシェは「この野蛮人め!」と涙目で吐き捨てる。
 何故こんな事になっているのか見当もつかなかった。
 一方で相手側のリシェは強気な顔で「調子に乗るなよ、偽物め」と睨む。
「酷い夢だ。これは夢に違いない」
 ううっと嘆くリシェ。首を振りながら、嘆きの声を上げる。
「何だよこいつは…絶対ありえない、夢のはずだ」
 コスプレ少年のリシェは呆れた顔で腕組みをして偉そうな口調で吐き捨ててきた。
「ふん、当然だ。何の為に俺の姿になってるのか分からないが、おかしげな事はしないで貰いたい位だ」
 あくまでこちらが偽物扱いか、とリシェは苛立った。
「お前が俺の姿で勝手にコスプレしてるんだろうが!」
「コスプレって何だ!これは正常だ!!」
 彼らはお互いそう主張すると、再びぽこすかと真っ白い空間の中で不毛な争いを始めていた。

 うーんうーんとベッドでうなされているリシェを、ラスは心配そうに見守る。悪夢を見ているのだろう。延々と「偽物め」とか「真似するな」と唸っている。
 可哀想に、と彼の額を撫でていた。
「先輩、先輩。…大丈夫ですか?」
 軽く揺さぶってみる。しばらくして、彼は「はっ」と目をぱっちりと開けてガバッと身を起こす。ラスは驚き、撫でていた手を離してしまった。
「わ!…先輩、いきなり」
 リシェはきょろきょろと周囲を見回す。
「ゆ、夢か」
「うなされてましたよー?先輩、怖い夢でも見たんですか?」
 リシェは頭を掻き、ううんと唸りながら首を振る。
「怖い…夢でも見たのかな…いや、イラッときたような…何だっけな。思い出せそうで思い出せない」
「ふふふ、夢ってそんなものですよ。さあ先輩、抱き締めさせて下さいね」
 なぜいちいち抱き締めたがるのかと思いながら、リシェはひたすら夢の中身を思い出そうとしていたが、どうしても思い出せない。
 恐らく、大した夢でも無いのだろう。
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