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そのさんじゅうはち
言霊と豆乳仕込みクリームシチュー
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「言霊って言葉があるでしょう」
…また変な事を言いだした。
リシェは面倒そうな様子でラスをちらりと見た後、それがどうしたと携帯を弄りながら返事をする。
「言葉には何かを引き寄せる力があるって言うじゃないですか。声に出せば実際に影響されたりとか、願いが叶ったりとか…」
「はあ」
外見のチャラさとは真逆に、いきなりそのような似合わぬ話をしだすのは一体何なのだろうか。ある意味乙女的な思考を持っているのか、やけに夢見心地な様子を垣間見せて来る。
ラスはほんわりと頰を赤らめる。
「だから、ほら。俺がひたすら先輩と一生添い遂げられますようにとか色んな願いを口にすれば、きっと叶うと思うんですよ」
それを聞いたリシェ、みるみる嫌そうな表情をした。
「気色悪い奴だな」
「先輩。嫌よ嫌よも好きのうちとか言うじゃないですか」
「じゃあ何か?俺が毎日お前がハゲますようにと口にしたらお前はハゲてくれるのか?」
吐き捨てるようなリシェの発言に、ラスはがばっと自らの頭を押さえる。そして泣きそうになりながら何て事を言うんですか!と叫んだ。
それは言霊というより呪詛でしょう!と。
稀に吐き出すリシェの毒も大好きだが、流石にハゲたくはない。
「だから毎日先輩に愛を語りかけたら先輩だって満更でも無くなりそうかなーとかー」
自分で言いながら照れるラス。
リシェは無言で耳栓の検索をしていた。
「…先輩!!」
「うるさいなあ」
「俺は本気で先輩と結婚したいんですよ」
「奇遇だな。俺は本気でお前がハゲて欲しいと思ってるぞ」
頭髪の話から離れて欲しい。
ラスは気を取り直してリシェに向き合う。相変わらず彼は無自覚な美少年っぷりを見せつけながら、無愛想にそっぽを向く。
まるで子猫だ。
「いいですか」
「何が?」
「俺はこれから延々と言葉を放ちます。先輩が俺の事を好きになるって。先輩はだんだん俺が気になって気になって仕方無くなりますよ」
あほくさ、とリシェはラスに対して呆れた。
だがラスは本気だ。本気でリシェを落としたいと思っているのだった。
ふふ、と笑顔を見せると彼は何度も同じ事を口にしだした。
「先輩は俺の事が好きになる…好きになる…」
「それ、催眠術だろう」
「いいんです!言霊はちゃんと力を持ちますから!…先輩は俺の事がめちゃくちゃ好きになる…」
しばらく同じ事を聞くのに飽きてきたリシェは、前にレシピサイトで見たシチューの事を思い出していた。
ゴロゴロした野菜と鮭が入っている豆乳シチュー。
見栄えも良く、実に美味しそうに見えた。あれが食事に出てきたら実に最高だろう。
食堂のリクエストコーナーに投書しようかな…とぼんやり考えていた。
一方でラスはひたすら同じ言葉を続ける。
「先輩は俺の事が好きで好きでたまらなくなる…全部あげてもいいくらいに好きになる」
よし、後でリクエストしよう。
豆乳仕込みのクリームシチュー。
野菜ゴロゴロと鮭フレーク入り。これしかない。
「んああ…」
シチューの妄想を続けるあまり、リシェは変な声を放っていた。ラスはんっ?と反応する。
「せ、先輩?気持ちは変わりましたか?」
「あ?…ああ…何だっけ」
「何だっけ?じゃなくて!俺が気になって仕方無くなったでしょう?」
わくわくした面持ちでラスはリシェに問う。
「いいや」
リシェはあっさり否定した。
「えー!?暗示にかかったかと思ったじゃないですか!」
「シチュー」
「えっ!?何ですかいきなり!?」
「お前が念仏のように同じ事を繰り返して暇だったからシチューの事を思い出していたのだ。そうだ、リクエストしてこなきゃ」
おもむろにリシェは立ち上がると、食堂行ってくるとだけ告げる。
「先輩、俺の言霊は!?」
「残念ながら全く効いてない。俺は自分の願いを伝えてくるぞ」
「へ!?俺と結婚したいとかじゃないんですか!?」
「無駄な事を願ってどうするんだ。ふん、俺の願いはお前より崇高な願いだぞ」
崇高な願いは食堂で叶うのか、とラスは口をあんぐりさせた。
…しかも自分のは無駄だなんて。
「ち、ちゃんと俺の願いを叶えて下さいよ、先輩!!」
部屋から出て行ったリシェに向け、ラスは悲しげに叫んでいた。
数日後。
食堂のメニューにはリシェがリクエストしたゴロゴロ野菜と鮭の豆乳仕込みシチューが追加され、寮生からは大層な高評価と喜びの声が沸いていた。
…また変な事を言いだした。
リシェは面倒そうな様子でラスをちらりと見た後、それがどうしたと携帯を弄りながら返事をする。
「言葉には何かを引き寄せる力があるって言うじゃないですか。声に出せば実際に影響されたりとか、願いが叶ったりとか…」
「はあ」
外見のチャラさとは真逆に、いきなりそのような似合わぬ話をしだすのは一体何なのだろうか。ある意味乙女的な思考を持っているのか、やけに夢見心地な様子を垣間見せて来る。
ラスはほんわりと頰を赤らめる。
「だから、ほら。俺がひたすら先輩と一生添い遂げられますようにとか色んな願いを口にすれば、きっと叶うと思うんですよ」
それを聞いたリシェ、みるみる嫌そうな表情をした。
「気色悪い奴だな」
「先輩。嫌よ嫌よも好きのうちとか言うじゃないですか」
「じゃあ何か?俺が毎日お前がハゲますようにと口にしたらお前はハゲてくれるのか?」
吐き捨てるようなリシェの発言に、ラスはがばっと自らの頭を押さえる。そして泣きそうになりながら何て事を言うんですか!と叫んだ。
それは言霊というより呪詛でしょう!と。
稀に吐き出すリシェの毒も大好きだが、流石にハゲたくはない。
「だから毎日先輩に愛を語りかけたら先輩だって満更でも無くなりそうかなーとかー」
自分で言いながら照れるラス。
リシェは無言で耳栓の検索をしていた。
「…先輩!!」
「うるさいなあ」
「俺は本気で先輩と結婚したいんですよ」
「奇遇だな。俺は本気でお前がハゲて欲しいと思ってるぞ」
頭髪の話から離れて欲しい。
ラスは気を取り直してリシェに向き合う。相変わらず彼は無自覚な美少年っぷりを見せつけながら、無愛想にそっぽを向く。
まるで子猫だ。
「いいですか」
「何が?」
「俺はこれから延々と言葉を放ちます。先輩が俺の事を好きになるって。先輩はだんだん俺が気になって気になって仕方無くなりますよ」
あほくさ、とリシェはラスに対して呆れた。
だがラスは本気だ。本気でリシェを落としたいと思っているのだった。
ふふ、と笑顔を見せると彼は何度も同じ事を口にしだした。
「先輩は俺の事が好きになる…好きになる…」
「それ、催眠術だろう」
「いいんです!言霊はちゃんと力を持ちますから!…先輩は俺の事がめちゃくちゃ好きになる…」
しばらく同じ事を聞くのに飽きてきたリシェは、前にレシピサイトで見たシチューの事を思い出していた。
ゴロゴロした野菜と鮭が入っている豆乳シチュー。
見栄えも良く、実に美味しそうに見えた。あれが食事に出てきたら実に最高だろう。
食堂のリクエストコーナーに投書しようかな…とぼんやり考えていた。
一方でラスはひたすら同じ言葉を続ける。
「先輩は俺の事が好きで好きでたまらなくなる…全部あげてもいいくらいに好きになる」
よし、後でリクエストしよう。
豆乳仕込みのクリームシチュー。
野菜ゴロゴロと鮭フレーク入り。これしかない。
「んああ…」
シチューの妄想を続けるあまり、リシェは変な声を放っていた。ラスはんっ?と反応する。
「せ、先輩?気持ちは変わりましたか?」
「あ?…ああ…何だっけ」
「何だっけ?じゃなくて!俺が気になって仕方無くなったでしょう?」
わくわくした面持ちでラスはリシェに問う。
「いいや」
リシェはあっさり否定した。
「えー!?暗示にかかったかと思ったじゃないですか!」
「シチュー」
「えっ!?何ですかいきなり!?」
「お前が念仏のように同じ事を繰り返して暇だったからシチューの事を思い出していたのだ。そうだ、リクエストしてこなきゃ」
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