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そのよんじゅうきゅう
需要と供給
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シャンクレイス学院の生徒会長であるサキトは私室化している生徒会室内で退屈そうな顔のままいつもの席に着いていた。
歴代の生徒会長が使える書斎机はかなり年季が入っていたが、使えば使う程良さが増す。床には真っ赤なカーペットが敷かれていて、来客者のソファやテーブルが一センチのズレも無く置かれている。
調度品や真っ白いレースのカーテン、何から何まで全てサキトが勝手に持ち寄せた物。私物化もいい所だ。
「クロスレイ」
主人の小さな唇から飛び出した自分への呼びかけに、お付きのボディーガード役のクロスレイはびくりと巨体を反応させた。
「なっ、何でしょうか!?」
「退屈」
可愛らしい顔で不機嫌に言い放つ。
大層聡明で判断力もすこぶる良いと評判な生徒会長だが、性質に問題が有りと噂されている。それでも彼の家お付きのボディーガードであるクロスレイは長い付き合いの為か、サキトの我儘には馴れっこになっていた。
慣れなければならないと自分に言い聞かせ続けて麻痺しているのかもしれない。確かに彼の突拍子もない思いついたような発言には度々驚かされ、稀に出て来る子供らしくない行動には戸惑う事もしばしばだ。
性格上サキトと自分は合わない。なのにサキトは進んで自分を担ぎ出そうとしてくるのだった。
「退屈って…何かしらする事が溜まってるのでは?」
彼は勉強の他にも生徒会長としての何らかの仕事があるはずだ。それはボディーガードとしての自分では手をかけられない内容で、サキトのやらなければならない事の一つだった。
まさか何もやっていないというオチでは無いだろう。
しかしサキトはクロスレイの思惑とは真逆の発言をした。
「全部済ませたの。僕を甘く見ないでくれる?だから退屈なんだってば」
全てやる事は終わらせてからの退屈発言だったようだ。
「は…はあ。すみません」
「クロスレイ、来て」
その巨大に似つかわしく無い弱気な顔のままのクロスレイは、言われるままサキトの書斎机に向き合う。彼は常に自信無さげで、サキトの指示を待ってしまう悪い癖があった。
ボディーガードとしての壁の役割は抜群にあるのだ。サキトに何かあればすぐに自身を盾にして守り抜く度胸はある。なのに普段はとにかくヘタレ。怒られればその巨体をダンゴムシばりに丸めて凹み、ひたすら悪い所を反省する。
反省するのは駄目だとは言えないが、あまりにも体格と中身が伴っていない。
そっちじゃないよ、とサキトは続けた。
まるで女王様ばりに彼はクロスレイに自分の前に来いと命じる。
「さ、サキト様」
「本当ならスティレンも居れば良いのになあ。君だと従順過ぎちゃうから少し面白みが欠けるんだよね」
「はあ…」
面白みが無い、と言われ内心がっかりした。しかし目の前に美しい主人が居る事に、クロスレイは心臓がドキドキと高鳴っていくのを感じる。
彼の真ん前に居ると、何故か興奮してしまうのだ。
…その自信満々な表情と小悪魔的な雰囲気がとにかくクロスレイにはツボで。下手をすると跪いて平伏したくなる。
「そこに座るんだよ」
大きな椅子に細い脚を優雅に組みながら深く腰掛け、意地悪く微笑むサキトはクロスレイに命じた。
「はっ…は、はひっ」
クロスレイはきちんと正座をしてサキトの前に座り込むと、さながら犬のように指示を待機していた。
そして主人が望むのは、ただ一つ。
「クロスレイ。次の原稿は進んでるの?」
「あっ…は、はい!今はペン入れをしている最中で」
「そう…きちんと汁量産で描いてるんだろうね?」
「勿論です!!ちゃんとっ、サキト様とスティレンさんの絡みを激しく、更にねちっこさを倍増させて鋭意作成中です!!」
その言葉に、サキトは満足そうに身をゾクゾクさせながら溜息を吐いた。その言葉が聞きたかったんだよと。
真っ白な頰をピンク色に紅潮させ、堪らないよと呟く。
「実際にしてみたいけど彼は逃げるからね。なら描いてもらって消化していくしかないじゃない?僕はスティレンと激しくねちっこいエッチがしたいんだよ。それは君の画力にかかってるのさ、クロスレイ?分かってる?汗だくで汁を撒き散らしながらいやらしいのを繰り返しやっていくシーンが見たいのさ。ああ、想像するだけで僕はおかしくなりそう…!!」
恍惚感を漲らせるサキトを見上げながら、クロスレイはもうこの段階でおかしいのではないかと思っていた。しかし自分も彼が妄想して身悶える様子を見ながら興奮しているのだ。流石にそれは本人には言えなかった。
「早くでかすんだよ、クロスレイ。僕のスティレンとの激しいエッチな同人誌コレクションをまた増やしておくれ。これは命令なんだからね!」
可愛い顔でボディーガードに対してめちゃくちゃ変態な事を要求しているのは、シャンクレイス学院の生徒は誰一人知らなかった。
むしろ知らない方が良い。
「は…はひ!ぜひ喜んで描き上げます…!!」
お互いがお互いで需要と供給を果たしている。それで良いのかもしれない。クロスレイは早めに作り上げますとだけ返しながら、内部の興奮をひたすら押し込んでいた。
歴代の生徒会長が使える書斎机はかなり年季が入っていたが、使えば使う程良さが増す。床には真っ赤なカーペットが敷かれていて、来客者のソファやテーブルが一センチのズレも無く置かれている。
調度品や真っ白いレースのカーテン、何から何まで全てサキトが勝手に持ち寄せた物。私物化もいい所だ。
「クロスレイ」
主人の小さな唇から飛び出した自分への呼びかけに、お付きのボディーガード役のクロスレイはびくりと巨体を反応させた。
「なっ、何でしょうか!?」
「退屈」
可愛らしい顔で不機嫌に言い放つ。
大層聡明で判断力もすこぶる良いと評判な生徒会長だが、性質に問題が有りと噂されている。それでも彼の家お付きのボディーガードであるクロスレイは長い付き合いの為か、サキトの我儘には馴れっこになっていた。
慣れなければならないと自分に言い聞かせ続けて麻痺しているのかもしれない。確かに彼の突拍子もない思いついたような発言には度々驚かされ、稀に出て来る子供らしくない行動には戸惑う事もしばしばだ。
性格上サキトと自分は合わない。なのにサキトは進んで自分を担ぎ出そうとしてくるのだった。
「退屈って…何かしらする事が溜まってるのでは?」
彼は勉強の他にも生徒会長としての何らかの仕事があるはずだ。それはボディーガードとしての自分では手をかけられない内容で、サキトのやらなければならない事の一つだった。
まさか何もやっていないというオチでは無いだろう。
しかしサキトはクロスレイの思惑とは真逆の発言をした。
「全部済ませたの。僕を甘く見ないでくれる?だから退屈なんだってば」
全てやる事は終わらせてからの退屈発言だったようだ。
「は…はあ。すみません」
「クロスレイ、来て」
その巨大に似つかわしく無い弱気な顔のままのクロスレイは、言われるままサキトの書斎机に向き合う。彼は常に自信無さげで、サキトの指示を待ってしまう悪い癖があった。
ボディーガードとしての壁の役割は抜群にあるのだ。サキトに何かあればすぐに自身を盾にして守り抜く度胸はある。なのに普段はとにかくヘタレ。怒られればその巨体をダンゴムシばりに丸めて凹み、ひたすら悪い所を反省する。
反省するのは駄目だとは言えないが、あまりにも体格と中身が伴っていない。
そっちじゃないよ、とサキトは続けた。
まるで女王様ばりに彼はクロスレイに自分の前に来いと命じる。
「さ、サキト様」
「本当ならスティレンも居れば良いのになあ。君だと従順過ぎちゃうから少し面白みが欠けるんだよね」
「はあ…」
面白みが無い、と言われ内心がっかりした。しかし目の前に美しい主人が居る事に、クロスレイは心臓がドキドキと高鳴っていくのを感じる。
彼の真ん前に居ると、何故か興奮してしまうのだ。
…その自信満々な表情と小悪魔的な雰囲気がとにかくクロスレイにはツボで。下手をすると跪いて平伏したくなる。
「そこに座るんだよ」
大きな椅子に細い脚を優雅に組みながら深く腰掛け、意地悪く微笑むサキトはクロスレイに命じた。
「はっ…は、はひっ」
クロスレイはきちんと正座をしてサキトの前に座り込むと、さながら犬のように指示を待機していた。
そして主人が望むのは、ただ一つ。
「クロスレイ。次の原稿は進んでるの?」
「あっ…は、はい!今はペン入れをしている最中で」
「そう…きちんと汁量産で描いてるんだろうね?」
「勿論です!!ちゃんとっ、サキト様とスティレンさんの絡みを激しく、更にねちっこさを倍増させて鋭意作成中です!!」
その言葉に、サキトは満足そうに身をゾクゾクさせながら溜息を吐いた。その言葉が聞きたかったんだよと。
真っ白な頰をピンク色に紅潮させ、堪らないよと呟く。
「実際にしてみたいけど彼は逃げるからね。なら描いてもらって消化していくしかないじゃない?僕はスティレンと激しくねちっこいエッチがしたいんだよ。それは君の画力にかかってるのさ、クロスレイ?分かってる?汗だくで汁を撒き散らしながらいやらしいのを繰り返しやっていくシーンが見たいのさ。ああ、想像するだけで僕はおかしくなりそう…!!」
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