異世界学園の中の変な仲間たち2

へすこ(ひしご)

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そのごしゅういち

新しい変態

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 何故自分が面識も全く無い相手に会わなければならないのだとリシェは昨日のラスの話を思い出して一人でぷりぷりしていた。翌日の授業の休み時間、飲み物を求めて廊下に出て自販機の前に立つ。
 何にしようかなと自販機の飲み物のサンプルを眺めた後で、お茶のペットボトルのボタンを押す。
 ガタコン、という音と同時に求めたお茶が降りてきた。
「はあ…」
 溜息を吐いてしまう癖は良くないとは分かっていたものの、やっぱり口に出してしまう。ゆっくりと取り出して栓を開け、一口二口と体内に取り込んでいると不意に自分の右側に気配を感じた。
 誰か買うのかと思って避けようとすると、低めの声がかかる。
「あ、あんたは」
「?」
 リシェはその声に反応してその方向を見上げる。自分より明らかに背の高い生徒の姿に、彼は眉を寄せた。ラスと同じ色のシャツのネクタイだった事から、上級生だという事が分かった。
 黒髪のトゲトゲした頭と、無駄に耳に付いたピアス。ふんわりと香水の香りがし、ついリシェはううと顔をしかめてしまう。
 自分とはタイプがかなり掛け離れた人種だ。
「何か?」
 どこかで見た事があったなと思ったが、どこで会ったのかまるで覚えていなかった。
「ラスの同居人だよな?」
「はあ…そうだけど、何か?」
 あまり認めたくないが確かに同居人だ。
 何かあったのだろうか。例え何かあったとしても自分には何も出来ないのだが。リシェは相手の先輩を見上げたまま、相手の返事を待っていた。
 すると彼は変に照れ臭い顔をする。
「いや…特に何にも無いんだけど。ほら、あいつがやたらと持ち上げるからどんなのかと思ったんだよ」
「見て分かっただろう。じゃあ俺はこれで」
 淡白すぎるリシェに、相手はいやいやいやと彼の肩を掴んだ。
「何だよもう。いちゃもんを付ける気か」
 嫌そうなリシェとは別に、相手は顔をやけに紅潮させて言葉を濁しつつ別の方向を見ていた。
 リシェは何だか嫌な予感がしてしまう。
「いちゃもんじゃなくてさあ…その、あいつが言ったように」
「ラスが何か俺について言っていたのか?ろくな事を言わないだろうに、それを真に受けてどうするんだ」
 用件を早く言って欲しい。リシェは半ば苛々しながら問うと、ようやく彼は口を開く。
「か…っ、可愛いなと思って」
 ようやく口を開いた相手からのおかしげな発言に、リシェは無言で見下したような目を向けた。反射的にそうなってしまうのは、ラスのせいだろう。
 こいつも関わってはいけないタイプだと思い、リシェは「そうか」と後退りする。
「連絡先交換してくれないかな」
「い、嫌だ」
 彼もまたラスの頭のおかしさが伝搬してしまったに違いない。
「あまり連絡しないようにするから!」
「じゃあいらないだろう!」
 余計な問題を抱えたくないリシェは後ろに引きながら叫んだ。しかし相手は引き下がる事無く迫ってくる。
「いや、いる!!個人的にあんたの事を知りたいんだよ」
「俺は知りたくもないぞ!早く二年の教室に戻れ!!」
「教えてくれたら戻るから!」
 異様な騒ぎに、周囲の生徒達は一様にこちらに注目してくる。それもそのはずだ。地味な生徒が、一見不良っぽい派手な姿の生徒に絡まれているような図なのだから。
 しかも相手は二年生で、普通の感覚ならば近寄り難い。
 しばらく押し問答をしていた矢先、ようやくリシェに救いの手が伸びた。ほぼ涙目になっていたリシェの体がかくりと傾く。
「ちょっと、何してんのさ?」
 強気な少年の声に、リシェはつい安堵した。
 スティレンが廊下での騒ぎに気付いて近付いてきたようだ。
「あんた、ラスの友達のベルンハルドでしょ!やっぱ似た者同士なんだね」
 そこでようやくリシェも相手が誰だったのかを思い出した。そこで思い出せる程、他の人間には興味が無かったのだ。
「悪いけどこいつはあんたみたいなパリピとは釣り合わないよ!何たってこいつはしょうもない根暗だし、チャラついた奴には近寄りもしないんだからね!分かったら引っ込んでくれない!?」
 やはりここでも自分を落としてくる。
 リシェは助かったと思った反面、何て酷い言い方だと思っていた。
「ほら、もうすぐで休み時間が終わっちゃうよ!さっさと戻りな、せーんぱい!!」
 先輩に対する態度では無いが、ここまで強く言わないと相手の場合は効果が無いのだろう。ある意味救いの神だ。
 ベルンハルドはスティレンに言われ、残念そうな表情で仕方無いなと呟いた。そしてリシェを見る。ひくん、と彼の華奢な体がびくついた。明らかに怖がっている様子なのだが、相手は気にしない様子だ。
「またそのうち会うと思うし。その時に連絡先聞くから」
 じゃあと言い残し、ベルンハルドは去って行った。
 ううと呻くリシェ。そんな従兄弟に対し、スティレンは呆れた顔のままで言い掛かりと思えるような言葉を投げつける。
「…何でお前はいちいち変態を量産してくるの?」
 スティレンにしては普通の嫌味なのだが、リシェにとってぐさりと心に突き刺さってしまった。
「量産って…」
 別に好きで生み出してる訳ではないのに。
 リシェはだらだらと涙を流しながら知るかと嘆いていた。
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