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そのごじゅうよん
質素な晩餐
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その夜。
リシェは寮内の食堂のフロアで、晩ご飯を食べていた。
どうにかラスを撒いての食事。いつもなら、向こうが強引に引っ付いて好き勝手に連れ回してくるのでいろんな意味で疲労が蓄積されていた。
ご飯位は邪魔されず、静かに食べたい。
今日の晩ご飯はビーフシチューとサラダとパン。すぐに空腹になりそうだが、元々少食なリシェには丁度良い内容だった。
一口食べると、濃厚過ぎる位のシチューの味が口内に溢れ出す。
リシェはううんと唸りたくなるのを押さえ、再びスプーンを口に運ばせていた。
これは食事が進む…と夢中になっていたその時。
「探したよ、リシェ!全く…探さなきゃいけない身にもなってよね!!」
対面式のテーブルの真ん前に、スティレンがドスンと腰をかけてくる。リシェはその瞬間、うわぁ…という心底嫌な表情を露わにしてしまった。
それをすかさず視界に入れるスティレン。
「…なぁに?まさか生意気にも俺が来るのが嫌だったとか言うんじゃないだろうね、リシェのくせに」
「分かってるなら探しに来るな」
折角の一人での食事だったのに。
リシェが不満を素直に告げていると、スティレンは「はあ?」と意地悪そうに眉を寄せた。
「お前が一人でウロウロしてたら、確実に変な物に懐かれるからね!その磁石みたいに無駄に変態を引き付けるの、どうにかならないの?」
「そうだな。実際困ってるよ、たった今ここでな」
要はスティレンが邪魔だと言いたいようだ。
「…何だって!?生意気に!!それ寄越しな!」
反抗するリシェの手からスプーンを引ったくると、スティレンはリシェが食べていたビーフシチューを掬い始める。まだ熱いシチューを一口口に入れた瞬間、んんっと目を見開いた。
リシェは「勝手に食べるな!!」と怒り出す。
「美味しい!!俺もこっちにすれば良かった」
「俺の晩ご飯だぞ!!」
あまりにもスティレンの好みの味付けだったらしく、やたらとぱくぱく食べていく。最後当たりに食べようとしていた大振りの塊肉ですら自分のだと言わんばかりに食べる始末。
リシェはそれを目の当たりにし、うわあああと嘆いた。
「お前っ!!」
今にも掴みかかりそうなリシェに対し、スティレンは満足げに微笑んだ。
「うううん、何これ美味しい…!!」
「俺のビーフシチュー!!」
「止まらなくなるねこれ」
「そんなに食べたかったら自分で注文したらいいじゃないか!」
苛立つリシェはひたすら食べ続けるスティレンに怒鳴る。
だが怒られてもけろりとする彼は、「えー」と悪びれない。
「俺、晩ご飯もう食べたし。また頼んだら太るでしょ」
基本的に寮の食事はその時一度のみの注文となっていた。晩ご飯をまた一度頼むというのは出来ないのだ。
リシェはぐぬぬと涙目になる。
「俺のを食べても太るだろうが!!」
「だって美味しいんだもん」
気付いたらシチュー皿はほぼ空にされている。
「ふざけるなよ!!俺の晩ご飯!!」
食べ物の怒りは凄まじい。リシェの剣幕に、スティレンはうんざりした顔で「もー」と不快そうに口を尖らせた。
心狭ーい、とこれも腹が立つようなセリフを吐く。
空にされたシチュー皿を前にしながら、リシェは恨みがましい目でスティレンに「お前がめちゃくちゃ太くなるように呪ってやる」と呻いた。
「馬鹿言わないでよ!この美貌が削がれるじゃない!!世界の財産の消失になるからやめな!!」
いつの間にワールドレベルにまで価値が上がっていたのか。
リシェはスティレンに対し更に追い討ちをかけた。
「意地汚く人様の物を食べるようなのが世界の財産だと?むしろ不良債権だろう。産業廃棄物だ。お前なんか家畜小屋で藁でも食えばいいんだ」
余程腹に据えかねたらしい。
今までに無いくらい酷過ぎる毒を吐き出す。
スティレンは「分かったよ!!」と吐き捨てそのまま食堂のカウンターへ向かうと、職員に声をかける。しばらくしてからようやく彼はトレーに乗せた何かを持って戻ってきた。
「代わりのものを持って来てやったよ、ほら!食べな!!」
リシェの前にトレーごと突き出された物は、塩にぎり一つ。
みるみるリシェの表情が曇った。
「お前、そこは新しいビーフシチューを頼むとかだろうが!!」
「はあぁ!?持ってきてやっただけありがたいと思いな!!」
仕方無くリシェは塩握りを手にする。
「前から思ってはいたが、やっぱり性格が最悪だなお前は!!」
ビーフシチューが塩のおにぎりに変化するなど、誰が予想しただろうか。
その時食べた塩握りは、更に塩っぱさを感じた。
リシェは寮内の食堂のフロアで、晩ご飯を食べていた。
どうにかラスを撒いての食事。いつもなら、向こうが強引に引っ付いて好き勝手に連れ回してくるのでいろんな意味で疲労が蓄積されていた。
ご飯位は邪魔されず、静かに食べたい。
今日の晩ご飯はビーフシチューとサラダとパン。すぐに空腹になりそうだが、元々少食なリシェには丁度良い内容だった。
一口食べると、濃厚過ぎる位のシチューの味が口内に溢れ出す。
リシェはううんと唸りたくなるのを押さえ、再びスプーンを口に運ばせていた。
これは食事が進む…と夢中になっていたその時。
「探したよ、リシェ!全く…探さなきゃいけない身にもなってよね!!」
対面式のテーブルの真ん前に、スティレンがドスンと腰をかけてくる。リシェはその瞬間、うわぁ…という心底嫌な表情を露わにしてしまった。
それをすかさず視界に入れるスティレン。
「…なぁに?まさか生意気にも俺が来るのが嫌だったとか言うんじゃないだろうね、リシェのくせに」
「分かってるなら探しに来るな」
折角の一人での食事だったのに。
リシェが不満を素直に告げていると、スティレンは「はあ?」と意地悪そうに眉を寄せた。
「お前が一人でウロウロしてたら、確実に変な物に懐かれるからね!その磁石みたいに無駄に変態を引き付けるの、どうにかならないの?」
「そうだな。実際困ってるよ、たった今ここでな」
要はスティレンが邪魔だと言いたいようだ。
「…何だって!?生意気に!!それ寄越しな!」
反抗するリシェの手からスプーンを引ったくると、スティレンはリシェが食べていたビーフシチューを掬い始める。まだ熱いシチューを一口口に入れた瞬間、んんっと目を見開いた。
リシェは「勝手に食べるな!!」と怒り出す。
「美味しい!!俺もこっちにすれば良かった」
「俺の晩ご飯だぞ!!」
あまりにもスティレンの好みの味付けだったらしく、やたらとぱくぱく食べていく。最後当たりに食べようとしていた大振りの塊肉ですら自分のだと言わんばかりに食べる始末。
リシェはそれを目の当たりにし、うわあああと嘆いた。
「お前っ!!」
今にも掴みかかりそうなリシェに対し、スティレンは満足げに微笑んだ。
「うううん、何これ美味しい…!!」
「俺のビーフシチュー!!」
「止まらなくなるねこれ」
「そんなに食べたかったら自分で注文したらいいじゃないか!」
苛立つリシェはひたすら食べ続けるスティレンに怒鳴る。
だが怒られてもけろりとする彼は、「えー」と悪びれない。
「俺、晩ご飯もう食べたし。また頼んだら太るでしょ」
基本的に寮の食事はその時一度のみの注文となっていた。晩ご飯をまた一度頼むというのは出来ないのだ。
リシェはぐぬぬと涙目になる。
「俺のを食べても太るだろうが!!」
「だって美味しいんだもん」
気付いたらシチュー皿はほぼ空にされている。
「ふざけるなよ!!俺の晩ご飯!!」
食べ物の怒りは凄まじい。リシェの剣幕に、スティレンはうんざりした顔で「もー」と不快そうに口を尖らせた。
心狭ーい、とこれも腹が立つようなセリフを吐く。
空にされたシチュー皿を前にしながら、リシェは恨みがましい目でスティレンに「お前がめちゃくちゃ太くなるように呪ってやる」と呻いた。
「馬鹿言わないでよ!この美貌が削がれるじゃない!!世界の財産の消失になるからやめな!!」
いつの間にワールドレベルにまで価値が上がっていたのか。
リシェはスティレンに対し更に追い討ちをかけた。
「意地汚く人様の物を食べるようなのが世界の財産だと?むしろ不良債権だろう。産業廃棄物だ。お前なんか家畜小屋で藁でも食えばいいんだ」
余程腹に据えかねたらしい。
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