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そのごじゅうきゅう
とばっちり
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リシェはまるで抗議するかのように無表情で涙をぽろぽろ零していた。彼の目の前には空っぽになった平皿。そしてその向かい側には、いつものように怒った顔の従兄弟のスティレン。
アストレーゼン学園、学生寮内の食堂にて。
生徒達は寮内で食事をするにはその日のメニュー一覧から好みの食事を選んで自分の名前を希望用紙に記入し、厨房宛のポストに投函する。
メニューは日ごとによって変化し、毎日三、四種類の決められたセットから一つと、育ち盛りでまだ物足りないという希望者にはちょっとしたデザートを付ける事が出来るのだが、この日のデザートはリシェが好きなアップルパイ。
ボリューム少なめのメニューを頼み、デザートにアップルパイを希望していて、朝から食べるのを楽しみにしていた。
「…恨んでやる、呪ってやる。お前なんか道端で転んで犬のフンに塗れればいいんだ。肥溜めに落ちろ」
いつになくひたすら呪詛を口にするリシェ。
「なんて事言うのさ、リシェのくせに!!ちょっと食べた位でそこまで言う普通!?」
余程楽しみにしていたようで、食べようとしていたものをいきなり奪われてしまった彼の怒りは半端ない様子だ。周囲の少年達は普段大人しいリシェの禍々しい雰囲気に押され、離れた場所でそれぞれの食事をしていた。
しかも肥溜めに落ちろとの事。
言われたスティレンはあまりの無礼さに怒り出す。
「お前毎回毎回俺の食事を狙って来てないか?」
「ぐ…偶然でしょ!?」
「俺が食おうとすれば勝手に一口頂戴とか言いながらかっさらっていくじゃないか。えげつないやり口だ。お前何なんだ?豚か?」
ぼろくそに落とすリシェは、ついには美意識高い相手に豚とか言い出す始末。さすがにそれは聞き捨てならないと言わんばかりに、スティレンは「はぁあああ!?」と椅子から立ち上がって抗議した。
顔を真っ赤にしながらふざけないでよと怒鳴った。
「誰が豚だよ、誰が!!言い方ってものがあるだろ!?この世界一美しい俺に向かって、よりによって豚とか!!お前今の言葉撤回しろ!!」
怒る場所がやはり人とはどこか違うスティレンを、リシェは恨みがましい目付きで見上げて空っぽになった皿を突きつけた。
「大体食べたきゃお前が個人的に注文すりゃいいんだ。何で俺のばっかり狙ってくる?しかも全部食いやがって。だから最近顔が膨らんできてるんだよ」
イライラしながら日頃の鬱憤を晴らすようにスティレンに言い返すと、それまで怒っていた彼の表情が一瞬にして凍りつく。
「…え…??」
「何だよ」
彼は自分の顔をすかさず鏡でチェックしだした。
その後自分の頰をぐにょりと引っ張ってみる。
「あ…あああ…ほんとに??」
「あ?」
「ほんとに俺、最近たるんでる?」
だからそうだって言ってるじゃないかとリシェは突っ込んだ。
その瞬間、スティレンは顔を蒼白にしながら「いやああああ」と悲痛な声を上げていた。美に反する事が余程耐えきれないらしい。
しかも直接豚と罵られた事で、更にショックが拡大した。
「お前が」
「?」
「お前がいちいちデザートを頼んでくるからこうなったんじゃないか!!もう、信じられない!!!」
そこでまた急激に話をこじらせ、スティレンは顔を真っ赤にした。何だと!?とリシェも逆に怒り出す。
怒り合う美少年二人組に周囲の生徒らはまたやってるよとひそひそしながら遠巻きに注目していた。喧嘩の内容はほとんどバカバカしいものだったが、今日はリシェがあまりにも理不尽で同情されている。
「お前が単にだらしないだけじゃないか!!全部お前が悪いだろう!!」
「お前が甘い物をいちいち頼まなければ俺だって口にしなかったんだけど!?お前は俺の為にデザートを我慢するべきじゃないの!?」
「何で俺が我慢しなきゃならないんだ!自分が食いたくなければ食わないようにすればいいだろうが!食い意地ばっかり張りやがって!!」
しばらく押し問答を繰り返していると、やがてはっとスティレンは我に返った。こうしちゃいられない、と。
「痩せなきゃ。門限までに走り込みしないと…!!蓄積されたカロリーを消化出来ない!!」
スティレンはそう呟き、リシェの手をがっちり掴んだ。
何故自分の手を掴んできたのか、とこちらも顔を真っ赤にして怒っていたリシェはスティレンに目を向ける。
「何だ!何のつもりだ!!」
「お前も俺に付き合うんだよ!!ほら、行くよ!!」
自分をまた巻き添えにする気か、とリシェはふざけるなと拒否する。だがスティレンは舌打ちし、さも当然のように続ける。
「この俺に夜道を走れっていうの!?」
もうめちゃくちゃである。
要するに夜の道が怖いのだ。暗いのがとにかく苦手なスティレンは、誰かが居ないと暗い場所では身動きが取れない。それが分かっているリシェは、彼に付き合うのが嫌なのだ。
「嫌だ、面倒臭い!!嫌だぁああ」
「お前は俺についてこなきゃいけないんだよ。さあ。行くよ!」
食器を片付けさせると、身勝手なスティレンは嫌がるリシェを強引に引っ張って食堂を後にする。
「……」
「……」
「……」
最後まで嫌だ嫌だと言い続ける哀れなリシェの声が遠ざかっていくのを他の生徒らは耳にした後、何だか可哀想な奴だなあと他人事のようにそのまま食事を続けていた。
アストレーゼン学園、学生寮内の食堂にて。
生徒達は寮内で食事をするにはその日のメニュー一覧から好みの食事を選んで自分の名前を希望用紙に記入し、厨房宛のポストに投函する。
メニューは日ごとによって変化し、毎日三、四種類の決められたセットから一つと、育ち盛りでまだ物足りないという希望者にはちょっとしたデザートを付ける事が出来るのだが、この日のデザートはリシェが好きなアップルパイ。
ボリューム少なめのメニューを頼み、デザートにアップルパイを希望していて、朝から食べるのを楽しみにしていた。
「…恨んでやる、呪ってやる。お前なんか道端で転んで犬のフンに塗れればいいんだ。肥溜めに落ちろ」
いつになくひたすら呪詛を口にするリシェ。
「なんて事言うのさ、リシェのくせに!!ちょっと食べた位でそこまで言う普通!?」
余程楽しみにしていたようで、食べようとしていたものをいきなり奪われてしまった彼の怒りは半端ない様子だ。周囲の少年達は普段大人しいリシェの禍々しい雰囲気に押され、離れた場所でそれぞれの食事をしていた。
しかも肥溜めに落ちろとの事。
言われたスティレンはあまりの無礼さに怒り出す。
「お前毎回毎回俺の食事を狙って来てないか?」
「ぐ…偶然でしょ!?」
「俺が食おうとすれば勝手に一口頂戴とか言いながらかっさらっていくじゃないか。えげつないやり口だ。お前何なんだ?豚か?」
ぼろくそに落とすリシェは、ついには美意識高い相手に豚とか言い出す始末。さすがにそれは聞き捨てならないと言わんばかりに、スティレンは「はぁあああ!?」と椅子から立ち上がって抗議した。
顔を真っ赤にしながらふざけないでよと怒鳴った。
「誰が豚だよ、誰が!!言い方ってものがあるだろ!?この世界一美しい俺に向かって、よりによって豚とか!!お前今の言葉撤回しろ!!」
怒る場所がやはり人とはどこか違うスティレンを、リシェは恨みがましい目付きで見上げて空っぽになった皿を突きつけた。
「大体食べたきゃお前が個人的に注文すりゃいいんだ。何で俺のばっかり狙ってくる?しかも全部食いやがって。だから最近顔が膨らんできてるんだよ」
イライラしながら日頃の鬱憤を晴らすようにスティレンに言い返すと、それまで怒っていた彼の表情が一瞬にして凍りつく。
「…え…??」
「何だよ」
彼は自分の顔をすかさず鏡でチェックしだした。
その後自分の頰をぐにょりと引っ張ってみる。
「あ…あああ…ほんとに??」
「あ?」
「ほんとに俺、最近たるんでる?」
だからそうだって言ってるじゃないかとリシェは突っ込んだ。
その瞬間、スティレンは顔を蒼白にしながら「いやああああ」と悲痛な声を上げていた。美に反する事が余程耐えきれないらしい。
しかも直接豚と罵られた事で、更にショックが拡大した。
「お前が」
「?」
「お前がいちいちデザートを頼んでくるからこうなったんじゃないか!!もう、信じられない!!!」
そこでまた急激に話をこじらせ、スティレンは顔を真っ赤にした。何だと!?とリシェも逆に怒り出す。
怒り合う美少年二人組に周囲の生徒らはまたやってるよとひそひそしながら遠巻きに注目していた。喧嘩の内容はほとんどバカバカしいものだったが、今日はリシェがあまりにも理不尽で同情されている。
「お前が単にだらしないだけじゃないか!!全部お前が悪いだろう!!」
「お前が甘い物をいちいち頼まなければ俺だって口にしなかったんだけど!?お前は俺の為にデザートを我慢するべきじゃないの!?」
「何で俺が我慢しなきゃならないんだ!自分が食いたくなければ食わないようにすればいいだろうが!食い意地ばっかり張りやがって!!」
しばらく押し問答を繰り返していると、やがてはっとスティレンは我に返った。こうしちゃいられない、と。
「痩せなきゃ。門限までに走り込みしないと…!!蓄積されたカロリーを消化出来ない!!」
スティレンはそう呟き、リシェの手をがっちり掴んだ。
何故自分の手を掴んできたのか、とこちらも顔を真っ赤にして怒っていたリシェはスティレンに目を向ける。
「何だ!何のつもりだ!!」
「お前も俺に付き合うんだよ!!ほら、行くよ!!」
自分をまた巻き添えにする気か、とリシェはふざけるなと拒否する。だがスティレンは舌打ちし、さも当然のように続ける。
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「お前は俺についてこなきゃいけないんだよ。さあ。行くよ!」
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「……」
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