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そのろくじゅうろく
表は反目、裏では協力
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「多分先輩を見るたびに抱き締めたくなるのは恋の病だからだと思うのです」
また唐突に言い出すラスを、これまたうんざりしながらリシェは見上げる。もう分かったよと言わんばかりに溜息を吐くと、晩ご飯の申請の為に制服姿のままで食堂に向かっていた。
ラスは一人で照れながら自分勝手な妄想を吐き散らかしていた。
「同棲してからかなり経過してるじゃないですか。もうお互いの事は存分に理解してるかと思うんですよね。こうなればお互いの親御さんにも紹介っていうか、どんな人と生活を共にしてるかとか…将来を見据えて話し合いとか、色々準備とかあるだろうし…」
無言のままのリシェは晩ご飯のセットメニューを吟味していた。
今日はサバの味噌煮定食とチーズハンバーグプレート、ナポリタンとミニグラタンのセットの三種。どれも選択肢に悩むメニューだ。
ラスの妄想を完全に無視しながらリシェは立て看板の前で悩む。
「どう自己紹介したらいいですかね?けっ、結婚を考えていますとかじゃ極端過ぎるかなあ!?いや、真面目にお付き合いをしていますが無難ですかね!?ほらっ、まだ清い交際みたいなものだし!俺は別にそんな事は気にしないんだけど先輩は違うでしょ?はぁああ、どうしましょうかねえ先輩!?」
今日の気分はサバの味噌煮の気分だ。
写真からして美味しそうに見えてくる。リシェはラスの一方的な会話にかなり適当な相槌を打ちながらサバの味噌煮定食にしようと決めた。
申し込み用紙に名前と部屋番号をさらさらと書くと、ポストの中に投函する。食事を楽しみにしながら改めてメニューを眺めた。
「お前は何を食べるんだ、ラス?」
自分の用件は終わった。ラスは一人で妄想を吐き散らかしていて、まだ彼の世界にどっぷり浸かっているので「ふあっ!?」と叫び声を上げる。
「俺がっ、食べたいもの!?」
「俺はもう書いたし。お前は何か注文するんじゃないのか?」
夢見心地状態のラスは、頭の中が現実とごちゃ混ぜになっていた。見上げてくるリシェの姿も愛し過ぎる余り、彼は「はあ…」とほんわりした表情で吐息を漏らす。
「おっ…俺、先輩が食べたいです♡」
その上擦った声は妙に寮生が少しずつ集まり始めた食堂内に響き渡ってしまった。
ざわっ、と周囲はこちらに注目する。
「はあ…?」
リシェは思い切り嫌そうな顔でラスを見上げ、俺は食べ物じゃないと普通に切り返していた。
「だって先輩、美味しそうだし…可愛がりたくなっちゃうし…」
「まだ寝てるのか?」
いい加減起きろよとうんざりしていた所、「…ちょっとあんた!!」と怒号が飛んできた。あまりの剣幕にびくりと小さな体が反応する。
うるさい…と声のした方向に目を向ければ、ラスの同級生であるノーチェがズカズカと近付いて来る。
「所構わずラスを誘惑しないでよ!何なのさ、ほんっと嫌な奴だね!」
更に面倒臭い奴が来たと言わんばかりにノーチェを迎えた。
「俺は別に何もしてないぞ。こいつが勝手におかしげな事を喋ってるだけだ」
「嘘つけ、毎回毎回誘惑してるんだろ!無駄に顔がいいからって調子に乗ってるんじゃないよムカつく!!」
そんな事を言われても。
リシェははあ、と一息吐いた。
「ラス、ラス!!正気に戻って!こいつが吐き散らかす毒を受けてちゃダメだよ!!全く、蠱毒タランチュラみたいに全方向に吐き散らかすんだから!」
ノーチェは妄想の中に居るラスに話しかけながらリシェを睨みつけていた。
「誰が蠱毒タランチュラだ」
そう言いながら、リシェは不意に最近ゲームしてないなという事に気付いた。蠱毒タランチュラとはそのゲーム内のボス級のモンスターの名前なのだ。
前回必死になって赤フンと協力して倒したのだが、その達成感はかなり爽快だった。思い出すと、またゲームをやりたくなった。
…赤フンに会いたい。今頃何をしているのだろう。
自分の目の前にその赤フンが居るのを知らないリシェ。
そして自分の怒りの矛先の相手が、ゲーム内で協力しているフレンドだと知らないノーチェ。
リシェはさらりとした黒髪を揺らし、無気力に言った。
「じゃあそいつをお前に任せるよ。晩ご飯頼んだし。願ったり叶ったりだろ」
部屋に戻って久しぶりにゲームをしよう、と決めたリシェは「はあ!?」と憤慨するノーチェとまだ夢の中に居るラスを放置し、さっさと丸投げのように踵を返す。
「ちょっと…何!?話はまだ終わってないのに!!」
ノーチェはリシェの背中に向けて怒鳴っていたが、赤フンに会いたくなった彼は聞く耳を持たずにそのまま去っていた。
また唐突に言い出すラスを、これまたうんざりしながらリシェは見上げる。もう分かったよと言わんばかりに溜息を吐くと、晩ご飯の申請の為に制服姿のままで食堂に向かっていた。
ラスは一人で照れながら自分勝手な妄想を吐き散らかしていた。
「同棲してからかなり経過してるじゃないですか。もうお互いの事は存分に理解してるかと思うんですよね。こうなればお互いの親御さんにも紹介っていうか、どんな人と生活を共にしてるかとか…将来を見据えて話し合いとか、色々準備とかあるだろうし…」
無言のままのリシェは晩ご飯のセットメニューを吟味していた。
今日はサバの味噌煮定食とチーズハンバーグプレート、ナポリタンとミニグラタンのセットの三種。どれも選択肢に悩むメニューだ。
ラスの妄想を完全に無視しながらリシェは立て看板の前で悩む。
「どう自己紹介したらいいですかね?けっ、結婚を考えていますとかじゃ極端過ぎるかなあ!?いや、真面目にお付き合いをしていますが無難ですかね!?ほらっ、まだ清い交際みたいなものだし!俺は別にそんな事は気にしないんだけど先輩は違うでしょ?はぁああ、どうしましょうかねえ先輩!?」
今日の気分はサバの味噌煮の気分だ。
写真からして美味しそうに見えてくる。リシェはラスの一方的な会話にかなり適当な相槌を打ちながらサバの味噌煮定食にしようと決めた。
申し込み用紙に名前と部屋番号をさらさらと書くと、ポストの中に投函する。食事を楽しみにしながら改めてメニューを眺めた。
「お前は何を食べるんだ、ラス?」
自分の用件は終わった。ラスは一人で妄想を吐き散らかしていて、まだ彼の世界にどっぷり浸かっているので「ふあっ!?」と叫び声を上げる。
「俺がっ、食べたいもの!?」
「俺はもう書いたし。お前は何か注文するんじゃないのか?」
夢見心地状態のラスは、頭の中が現実とごちゃ混ぜになっていた。見上げてくるリシェの姿も愛し過ぎる余り、彼は「はあ…」とほんわりした表情で吐息を漏らす。
「おっ…俺、先輩が食べたいです♡」
その上擦った声は妙に寮生が少しずつ集まり始めた食堂内に響き渡ってしまった。
ざわっ、と周囲はこちらに注目する。
「はあ…?」
リシェは思い切り嫌そうな顔でラスを見上げ、俺は食べ物じゃないと普通に切り返していた。
「だって先輩、美味しそうだし…可愛がりたくなっちゃうし…」
「まだ寝てるのか?」
いい加減起きろよとうんざりしていた所、「…ちょっとあんた!!」と怒号が飛んできた。あまりの剣幕にびくりと小さな体が反応する。
うるさい…と声のした方向に目を向ければ、ラスの同級生であるノーチェがズカズカと近付いて来る。
「所構わずラスを誘惑しないでよ!何なのさ、ほんっと嫌な奴だね!」
更に面倒臭い奴が来たと言わんばかりにノーチェを迎えた。
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「嘘つけ、毎回毎回誘惑してるんだろ!無駄に顔がいいからって調子に乗ってるんじゃないよムカつく!!」
そんな事を言われても。
リシェははあ、と一息吐いた。
「ラス、ラス!!正気に戻って!こいつが吐き散らかす毒を受けてちゃダメだよ!!全く、蠱毒タランチュラみたいに全方向に吐き散らかすんだから!」
ノーチェは妄想の中に居るラスに話しかけながらリシェを睨みつけていた。
「誰が蠱毒タランチュラだ」
そう言いながら、リシェは不意に最近ゲームしてないなという事に気付いた。蠱毒タランチュラとはそのゲーム内のボス級のモンスターの名前なのだ。
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