74 / 101
そのななじゅうさん
この後美味しくいただきました
しおりを挟む
自分宛に何か届いた、とリシェは荷物を持って部屋に入ってきた。ラスはよろよろする彼を手伝い、彼が持って来た大きな箱を引き取る。
「随分と大きな箱ですね」
よいしょ、と中に持っていくとゆっくりと床に置いた。
「実家からだ」
「食料品とかいろいろ入ってるんじゃないですか?優しいですね」
「それなら助かるけど」
意外に重かったので、ラスは普通に生活用品や食料じゃないかと推測している。寮生活の生徒には大変助かるし、家族のありがたみがよく身に染みるのだ。
ラスの家は遠方にある訳ではなく、帰ろうと思えばすぐ帰れる距離にあるのでこのように荷物を送られてくる事はまず無い。連絡を受ければ取りに行くというスタンスだった。
リシェはカッターで箱の上部に切り込みを入れると、ゆっくり一文字に裂いていく。
「送ってくれるのはいいんだけど」
「ん?何ですか?」
溜息混じりにリシェは続けた。
「抜群にセンスが無いんだよなぁ」
どういう意味なのか。
彼の言っている意味がよく分からない様子で、ラスはその中身が判明するのを確認するべく横に付いた。
箱を開き、中身を目の当たりにした瞬間。
…二人は無言で荷物を見つめてしまった。
「あぁ」
ラスはつい声に出した。
「ああ、うん…確かにセンスが無いですね…」
「何これ…手紙が入ってるな」
箱の隅っこに封筒が入っているのを引っ張り出す。無表情のままのリシェは封筒から手紙を取ると、複雑な表情で目を通す。
「いやぁ…これ、どうしろって言うんでしょうか」
ずっしりとした内容物を持ち上げ、ラスは苦笑した。
『旅行先でダチョウの卵を見つけたので買いました。沢山食べると思うので六つ送ります』
書面にはそのような事が記載されていた。
リシェは「何で?」と疑問を呈する。自分がこれだけのずっしりした重い卵を食べられるとでも思うのだろうか。
しかも六つだ。
縦にみっしりと詰められた大きな卵を持ち上げ、ラスは「凄いですねえ」と褒めた。それ以外に言える感想が見当たらないようだ。
「美味しいのかな」
「送ってくるって事は美味しいんだろう。どうしようかなこれ」
「何なら先輩、食堂に持って行ったらどうですか?うまい具合に調理してくれるかもしれませんよ」
何気なく口にした提案に、リシェは顔を上げるとぱあっと表情を明るくした。
「なるほど」
これだけあれば寮内の生徒達に満遍なく卵料理を出せるだろう。
自分では処理できないので丁度いい。
「そうだな。俺、とりあえず食堂に行って打診してくる」
今までセンスが無いと思っていたが、今回はその気持ちが変わった。自分は元より、みんながニッコリするならいいプレゼントだ。
ちょっと度肝を抜かれそうになったが。
リシェが足取り軽く厨房に向かったのと入れ替わりに、スティレンがノックも無しに部屋に入ってきた。いつものように普段着姿でも香水の香りを撒き散らしながら。
その為に彼が近くにやってきた事はすぐに分かるのだ。
「あれ、何それ?」
ラスが手にしていた大きな卵を見たスティレンは、不思議そうな顔で聞いてきた。
「ああ。これ?先輩の実家から送られてきたんだよ」
「でっか!!産んだのかと思った」
「そんな訳ないだろ…」
しばらくして、ようやくリシェが戻って来る。そしてスティレンを見かけるなり、丁度良かったと声をかけた。
「この卵を食堂に運ぶから手伝ってくれ」
「…っはぁあああ!?何で俺が」
重いからに決まってるだろ、と呆れる。だがいきなり運べと言われたスティレンは「意味分かんないんだけど!」と怒った。
「先輩、許可貰ったんですか?」
「めちゃくちゃ喜んでた」
それなら安心だ。最初はどうしたらいいのか分からなかったが、結果オーライという訳だ。箱を持って食堂に行こう、とラスも動き出す。
「ほら、お前も手伝え。卵料理が食えるぞ」
「いきなり手伝えとか!俺の美しい指が歪んだらどうしてくれるのさ!?」
「三人で運べば指なんて歪まないだろ。さっさと動け」
ぶつぶつ文句を言うスティレンを促し、三人で箱を持ち上げた。箱は三人で持つには軽減されたが、リシェはよくこのような物を一人で持ってこれたなと感心する。
どうせなら全部使って巨大卵焼きに挑戦して欲しいが、それも厳しいだろう。寮の調理場はそれを可能にするレベルの鉄板も無い。
「どんな味になるんでしょうね、楽しみだなぁ。ね、先輩」
「そうだな。楽しみだ」
ほのぼのした会話をしながら、巨大卵による料理に期待に胸を躍らせる。ただ一人を除いて。
「ちょっと、意味も分からずに手伝わされてる俺の身にもなってくれない?可哀想だと思わないの、俺が!?」
自分を哀れむような言動に慣れている二人は、分かった分かったと軽く返す。
「これを持っていくと美味しい卵料理が食えるんだぞ。我慢しろ」
「知ってるよ!!もう、ほんとタイミング悪…」
スティレンは諦めたように毒づきながら、しっかりと箱を持って一緒に移動する。
結局彼も、同じように料理が楽しみだったようだ。
「随分と大きな箱ですね」
よいしょ、と中に持っていくとゆっくりと床に置いた。
「実家からだ」
「食料品とかいろいろ入ってるんじゃないですか?優しいですね」
「それなら助かるけど」
意外に重かったので、ラスは普通に生活用品や食料じゃないかと推測している。寮生活の生徒には大変助かるし、家族のありがたみがよく身に染みるのだ。
ラスの家は遠方にある訳ではなく、帰ろうと思えばすぐ帰れる距離にあるのでこのように荷物を送られてくる事はまず無い。連絡を受ければ取りに行くというスタンスだった。
リシェはカッターで箱の上部に切り込みを入れると、ゆっくり一文字に裂いていく。
「送ってくれるのはいいんだけど」
「ん?何ですか?」
溜息混じりにリシェは続けた。
「抜群にセンスが無いんだよなぁ」
どういう意味なのか。
彼の言っている意味がよく分からない様子で、ラスはその中身が判明するのを確認するべく横に付いた。
箱を開き、中身を目の当たりにした瞬間。
…二人は無言で荷物を見つめてしまった。
「あぁ」
ラスはつい声に出した。
「ああ、うん…確かにセンスが無いですね…」
「何これ…手紙が入ってるな」
箱の隅っこに封筒が入っているのを引っ張り出す。無表情のままのリシェは封筒から手紙を取ると、複雑な表情で目を通す。
「いやぁ…これ、どうしろって言うんでしょうか」
ずっしりとした内容物を持ち上げ、ラスは苦笑した。
『旅行先でダチョウの卵を見つけたので買いました。沢山食べると思うので六つ送ります』
書面にはそのような事が記載されていた。
リシェは「何で?」と疑問を呈する。自分がこれだけのずっしりした重い卵を食べられるとでも思うのだろうか。
しかも六つだ。
縦にみっしりと詰められた大きな卵を持ち上げ、ラスは「凄いですねえ」と褒めた。それ以外に言える感想が見当たらないようだ。
「美味しいのかな」
「送ってくるって事は美味しいんだろう。どうしようかなこれ」
「何なら先輩、食堂に持って行ったらどうですか?うまい具合に調理してくれるかもしれませんよ」
何気なく口にした提案に、リシェは顔を上げるとぱあっと表情を明るくした。
「なるほど」
これだけあれば寮内の生徒達に満遍なく卵料理を出せるだろう。
自分では処理できないので丁度いい。
「そうだな。俺、とりあえず食堂に行って打診してくる」
今までセンスが無いと思っていたが、今回はその気持ちが変わった。自分は元より、みんながニッコリするならいいプレゼントだ。
ちょっと度肝を抜かれそうになったが。
リシェが足取り軽く厨房に向かったのと入れ替わりに、スティレンがノックも無しに部屋に入ってきた。いつものように普段着姿でも香水の香りを撒き散らしながら。
その為に彼が近くにやってきた事はすぐに分かるのだ。
「あれ、何それ?」
ラスが手にしていた大きな卵を見たスティレンは、不思議そうな顔で聞いてきた。
「ああ。これ?先輩の実家から送られてきたんだよ」
「でっか!!産んだのかと思った」
「そんな訳ないだろ…」
しばらくして、ようやくリシェが戻って来る。そしてスティレンを見かけるなり、丁度良かったと声をかけた。
「この卵を食堂に運ぶから手伝ってくれ」
「…っはぁあああ!?何で俺が」
重いからに決まってるだろ、と呆れる。だがいきなり運べと言われたスティレンは「意味分かんないんだけど!」と怒った。
「先輩、許可貰ったんですか?」
「めちゃくちゃ喜んでた」
それなら安心だ。最初はどうしたらいいのか分からなかったが、結果オーライという訳だ。箱を持って食堂に行こう、とラスも動き出す。
「ほら、お前も手伝え。卵料理が食えるぞ」
「いきなり手伝えとか!俺の美しい指が歪んだらどうしてくれるのさ!?」
「三人で運べば指なんて歪まないだろ。さっさと動け」
ぶつぶつ文句を言うスティレンを促し、三人で箱を持ち上げた。箱は三人で持つには軽減されたが、リシェはよくこのような物を一人で持ってこれたなと感心する。
どうせなら全部使って巨大卵焼きに挑戦して欲しいが、それも厳しいだろう。寮の調理場はそれを可能にするレベルの鉄板も無い。
「どんな味になるんでしょうね、楽しみだなぁ。ね、先輩」
「そうだな。楽しみだ」
ほのぼのした会話をしながら、巨大卵による料理に期待に胸を躍らせる。ただ一人を除いて。
「ちょっと、意味も分からずに手伝わされてる俺の身にもなってくれない?可哀想だと思わないの、俺が!?」
自分を哀れむような言動に慣れている二人は、分かった分かったと軽く返す。
「これを持っていくと美味しい卵料理が食えるんだぞ。我慢しろ」
「知ってるよ!!もう、ほんとタイミング悪…」
スティレンは諦めたように毒づきながら、しっかりと箱を持って一緒に移動する。
結局彼も、同じように料理が楽しみだったようだ。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる