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そのはちじゅうに
シエル曰く、「ナマコが憎い」
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リシェとスティレンがいつものように教室の自分達の座席で会話していると、おもむろに別クラスのシエルが近付いてきた。無言で二人の目の前にやって来るなり、開口一番「ナマコが憎たらしいんだけど」といきなり言い出す。
二人は妙な表情を浮かべながら、同時に「「は??」」と返した。今までナマコが大好きだったんじゃなかったのか、と。
雑誌のインタビューでもナマコ大好きとか言ってたじゃん、とスティレンは問う。
シエルはふいっと二人の目線から逃れるように「言ったよ」と膨れっ面で言った。
「言ったけどさ」
「じゃあ何で気が変わったのさ?ナマコが死ぬ程好きだったんでしょ?目に入れても痛くない位大好きだったのに何でいきなり意見を変えたりするのさ」
「そうだそうだ」
リシェも不思議そうな顔でシエルを見上げる。
「お前からナマコを取ったらただの頭のおかしい奴になってしまうぞ。生涯の生業としてナマコと一緒に生きるんじゃないのか?お前は今までナマコ野郎って言われてきたんだから、これからも相棒としてナマコと付き合っていかなくちゃならないっていうのに。何があったんだ?喧嘩でもしたのか、ナマコと」
あまりにも言い過ぎだよとスティレンは従兄弟にダメ出しする。
「ちょっとリシェ、覚えたての言葉みたいにナマコナマコって言わないでくれない?こいつだってナマコ扱いされたら気を害するでしょ?別に好きでナマコと一緒になった訳でもないのにさぁ。そもそもこいつだってナマコと離れたい時だってあるでしょ?」
「何を言うんだ。こいつはナマコに対しての裏切りの言葉を言い出しているんだぞ。こんな事を言われてみろ、ナマコだってショックだろうよ」
お互い言いながらナマコって何だっけ?というレベルまで同じ言葉を続けていた。それまで黙って聞いていたシエルは「うるっさいなあ!!」と好き放題言いあう二人に対して怒り出す。
しつこいんだよ!と顔を真っ赤にしながら。
「何で僕が生涯ナマコと行動を共にしなきゃいけない訳!?てか、勝手に人の人生のレールを決めないでよ!僕が言いたいのはそんな壮大な事じゃないんだけど!?」
本題に入らせろと言わんばかりにぷんすかと頰を膨らませる。
リシェとスティレンは、一瞬お互いに顔を見合わせたあとでこれもまた同時に「「はあ」」と空返事をした。
「じゃあ何なのさ?簡潔に言ってよね」
はあ…とシエルは一旦溜息を吐いたあと、ようやく本題に入る。
「レナンシェ先生がずうっとナマコを育ててるんだけど、ちっとも僕を見てくれないんだよ」
「………」
リシェは次の時間の教科書の用意を始めていた。
スティレンは自分の胸ポケットから手鏡を出して、自分の姿をチェックしていく。その間、シエルはしょげたように続けた。
「頑張って話しかけてるのにさ。先生ったらずっと水槽の中のナマコの世話ばっかりしてるんだよ?ちょっとはこっちを見て話を聞いてほしいのに」
ガムあげる、とスティレンは小粒サイズのガムをリシェに見せた後、口をあーんと開けた彼の口に放った。リシェはもぐもぐとそのガムを噛む。
グレープだ、と無表情のままで味わっていた。
「先生は僕よりナマコに夢中なんだって思い知らされちゃうんだ。てか、人間よりナマコがいいっておかしくない?僕に魅力が無いって事?はあ…このままじゃ僕ナマコに負けた人間になっちゃう。ねえ、どうしたらいいと思う?」
髪を直していたスティレンはシエルの話を全く興味無さげな様子で「うーん」と感情の無い返事をする。
その後、ばっさりと言い放った。
「脈が無いからやめたら?」
何のアドバイスにもならない回答。
「は?」
言われた側はたまったものではない。
「あのさ、人の話聞いてる?僕は先生が好きなんだよ?それなのに諦めろとか言い出すの?鬼なのあんたは?」
「だってどう考えても脈が無いじゃない。ナマコの方が好きなんでしょ、その先生。諦めたら?」
リシェは二人の言い合いを聞きながら口元に風船を作り上げていく。
意外に大きな風船だ。
「あんたはもうちょっとまともなアドバイスくれるって期待していたのに無駄だったよ。ちょっと、あんたはどう思う?どうアプローチしたらいいと思う?」
思考がまるで女子のようなシエルは、スティレンのアドバイスを無視して大きな風船を作っていたリシェに食ってかかる。
しかし彼は自分の顔以上の風船を作るのに夢中になっていた。
やがて限界を迎えた風船はパァン!!と軽い音を立てた後リシェの顔面に張り付いてしまう。
「うわあ、もう。汚いなぁリシェ」
顔面が風船ガムの残骸塗れになった彼に対してスティレンは嫌そうな顔を見せた。リシェはそのままガムを張り付かせた状態で、シエルに「何だって?」と問う。
完全にのっぺらぼうのままで。
…なんだか質問の相手を間違ったみたいだ。
聞くだけ無駄だと察したと同時にシエルは質問する気が失せ、「もういいや」と呟いていた。
二人は妙な表情を浮かべながら、同時に「「は??」」と返した。今までナマコが大好きだったんじゃなかったのか、と。
雑誌のインタビューでもナマコ大好きとか言ってたじゃん、とスティレンは問う。
シエルはふいっと二人の目線から逃れるように「言ったよ」と膨れっ面で言った。
「言ったけどさ」
「じゃあ何で気が変わったのさ?ナマコが死ぬ程好きだったんでしょ?目に入れても痛くない位大好きだったのに何でいきなり意見を変えたりするのさ」
「そうだそうだ」
リシェも不思議そうな顔でシエルを見上げる。
「お前からナマコを取ったらただの頭のおかしい奴になってしまうぞ。生涯の生業としてナマコと一緒に生きるんじゃないのか?お前は今までナマコ野郎って言われてきたんだから、これからも相棒としてナマコと付き合っていかなくちゃならないっていうのに。何があったんだ?喧嘩でもしたのか、ナマコと」
あまりにも言い過ぎだよとスティレンは従兄弟にダメ出しする。
「ちょっとリシェ、覚えたての言葉みたいにナマコナマコって言わないでくれない?こいつだってナマコ扱いされたら気を害するでしょ?別に好きでナマコと一緒になった訳でもないのにさぁ。そもそもこいつだってナマコと離れたい時だってあるでしょ?」
「何を言うんだ。こいつはナマコに対しての裏切りの言葉を言い出しているんだぞ。こんな事を言われてみろ、ナマコだってショックだろうよ」
お互い言いながらナマコって何だっけ?というレベルまで同じ言葉を続けていた。それまで黙って聞いていたシエルは「うるっさいなあ!!」と好き放題言いあう二人に対して怒り出す。
しつこいんだよ!と顔を真っ赤にしながら。
「何で僕が生涯ナマコと行動を共にしなきゃいけない訳!?てか、勝手に人の人生のレールを決めないでよ!僕が言いたいのはそんな壮大な事じゃないんだけど!?」
本題に入らせろと言わんばかりにぷんすかと頰を膨らませる。
リシェとスティレンは、一瞬お互いに顔を見合わせたあとでこれもまた同時に「「はあ」」と空返事をした。
「じゃあ何なのさ?簡潔に言ってよね」
はあ…とシエルは一旦溜息を吐いたあと、ようやく本題に入る。
「レナンシェ先生がずうっとナマコを育ててるんだけど、ちっとも僕を見てくれないんだよ」
「………」
リシェは次の時間の教科書の用意を始めていた。
スティレンは自分の胸ポケットから手鏡を出して、自分の姿をチェックしていく。その間、シエルはしょげたように続けた。
「頑張って話しかけてるのにさ。先生ったらずっと水槽の中のナマコの世話ばっかりしてるんだよ?ちょっとはこっちを見て話を聞いてほしいのに」
ガムあげる、とスティレンは小粒サイズのガムをリシェに見せた後、口をあーんと開けた彼の口に放った。リシェはもぐもぐとそのガムを噛む。
グレープだ、と無表情のままで味わっていた。
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その後、ばっさりと言い放った。
「脈が無いからやめたら?」
何のアドバイスにもならない回答。
「は?」
言われた側はたまったものではない。
「あのさ、人の話聞いてる?僕は先生が好きなんだよ?それなのに諦めろとか言い出すの?鬼なのあんたは?」
「だってどう考えても脈が無いじゃない。ナマコの方が好きなんでしょ、その先生。諦めたら?」
リシェは二人の言い合いを聞きながら口元に風船を作り上げていく。
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「あんたはもうちょっとまともなアドバイスくれるって期待していたのに無駄だったよ。ちょっと、あんたはどう思う?どうアプローチしたらいいと思う?」
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