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そのきゅうじゅうよん
くっつき虫
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リシェは寮外の道端で見つけたある雑草から取れた実を手に、学園内の庭の手入れをしている専属用務員のファブロスを訪ねていた。
一見虫のようにも見えるそれは、やたらと服にくっついていて、取れば取ったで何本か残ってしまう。見た事が無かっただけに、不思議なものだと興味が湧いたのだ。
「…ん?何だ?」
いきなり目の前に突き出された小さな手を見て、ファブロスはリシェに問う。手にはトゲが付いた種子のような物が乗せられている。
「変な草を見つけたから何だろうって思って」
ファブロスは作業していた手を止め、リシェの手の平に転がっていた実を摘んだ。楕円形でトゲが周りに付いているのを細かく確認した後、くっつき虫だと呟いた。
「虫?虫なのかそれは?」
全く動かない虫だぞ、とリシェは眉を寄せた。
もしかしたら死んでいるのか?と疑問を呈しながら。
「いや、草だ。草っていうか種子か。オナモミだったかな?くっつきやすいからな、そういう名前でも呼ばれているようだぞ」
「そ、そうなのか。道端にいっぱいあったんだ。確かに虫にも見えるな、うん」
ファブロスは再びリシェに種子を返す。
「草叢にでも入ったのか?くっついたら取るのも大変だろうに」
「ああ、デカいソーセージみたいな雑草も見つけたから引っこ抜いて遊んでいたんだ。中身が出て大変だった。もうやらない」
困ったような表情でリシェは言う。
まるで小さな子供のような遊びだなと内心思った。彼が遊んでいたのは恐らくガマの穂なのだろう。確かにソーセージに見えなくもない。
大人しそうに見えてなかなかの行動派のようだ。
「一人で遊んでいたのか?」
「うん。一人で」
そうか、とリシェの答えに納得した。
「道端に入り過ぎると変な場所に埋まったりするからな。気を付ける事だ」
ファブロスの忠告に、素直にリシェはこくりと頷いた。
そしてくっつき虫を手にしたまま「気を付けるよ。気を付けながら集めてくる。沢山あったからな」と告げると、礼を言ってその場から去って行く。
彼を見送った後、ファブロスは改めて作業をしようと鍬を手にしたが、不意に端正な顔を上げた。
…あんな物を集めてどうする気なのだろうか。
一体何に使う気なのか、少し気になった。
その夜。
「ぎゃぁあああああああああああああああ!!!」
自室でリシェがラスと会話をしていると、突然凄まじい悲鳴が聞こえてきた。その後でドタバタと激しい足音を立てながらスティレンがノックもせずにこちらの部屋に入ってくる。
折角先輩と一緒に和やかに話をしていたのに、とラスは不満げにしながら、駆け込んで来たスティレンに対して何があったんだよと聞いた。
「ひ…っ、ひぃい…へ、変な虫がドアを開けたら沢山落ちてきた…何これ、気持ち悪い…!!」
見れば全身にトゲの付いた小さな物がスティレンの服やらバッグやらに付着している。それを見るやラスもうわああああと弱気な声を上げてしまった。
ドアを開けたら落ちてきた、とは何と悪質な悪戯なのだろうか。
「取って!!リシェ、お前どうにかしてよ!俺がどうなってもいいの!?」
慌てている様子のスティレンに対し、リシェは棒付き飴を口にしながら慌てる事は無いとしれっとして言い放つ。
「はぁ!?」
「それ、虫じゃないぞ。草みたいなものだ。くっついて面白かったから沢山取ってきたんだ…」
「どういう事だよ!まさかこれ、お前が」
「お前は常に俺を馬鹿にしてくるからな。たまに仕返ししても罰は当たらないと思ったのだ。くっつき虫っていうあだ名の草らしいぞ。ほら、良くくっつくだろう?」
スティレンに付いていた内の一つを摘むと、ラスにも見せた。
珍しい物に見えたのか、ラスも「へえ」と興味深そうにそれを眺める。
「凄い、めっちゃくっついてくる。面白いですね」
自分の服に付けては凄い凄いとはしゃいでいるラスだったが、スティレンはそうではなかった。
「何が面白いっていうのさ!?俺なんか頭から大量に全身に被ったんだぞ!可哀想だと思わないの!?」
むしろ何でこんなに沢山集めてきたんだよ、ムカつく!!とリシェに訴えた。怒るスティレンに対し、リシェは「だから仕返しだって言っただろう」と全く悪びれない。
ラスは苦笑いしながら「まぁまぁ」と粘着テープのコロコロを部屋の奥から引っ張ると、スティレンの服にそれを丁寧に回し掛けて取り始めた。
「普通の虫じゃないだけ有難いだろう」
「当たり前でしょ!?虫だったらビンタだけじゃ済まさないよ、もう!てか俺の部屋のも片付けてよね!!」
「お前の部屋なんだからお前がやれ」
全然反省していないリシェ。
「は!?自分が仕込んだんだから責任取りな!!」
悪戯にしても程があるでしょ!と言いながら、彼は問題のくっつき虫を毟り取ると、その取ったもの全てをリシェの服に投げつけていた。
一見虫のようにも見えるそれは、やたらと服にくっついていて、取れば取ったで何本か残ってしまう。見た事が無かっただけに、不思議なものだと興味が湧いたのだ。
「…ん?何だ?」
いきなり目の前に突き出された小さな手を見て、ファブロスはリシェに問う。手にはトゲが付いた種子のような物が乗せられている。
「変な草を見つけたから何だろうって思って」
ファブロスは作業していた手を止め、リシェの手の平に転がっていた実を摘んだ。楕円形でトゲが周りに付いているのを細かく確認した後、くっつき虫だと呟いた。
「虫?虫なのかそれは?」
全く動かない虫だぞ、とリシェは眉を寄せた。
もしかしたら死んでいるのか?と疑問を呈しながら。
「いや、草だ。草っていうか種子か。オナモミだったかな?くっつきやすいからな、そういう名前でも呼ばれているようだぞ」
「そ、そうなのか。道端にいっぱいあったんだ。確かに虫にも見えるな、うん」
ファブロスは再びリシェに種子を返す。
「草叢にでも入ったのか?くっついたら取るのも大変だろうに」
「ああ、デカいソーセージみたいな雑草も見つけたから引っこ抜いて遊んでいたんだ。中身が出て大変だった。もうやらない」
困ったような表情でリシェは言う。
まるで小さな子供のような遊びだなと内心思った。彼が遊んでいたのは恐らくガマの穂なのだろう。確かにソーセージに見えなくもない。
大人しそうに見えてなかなかの行動派のようだ。
「一人で遊んでいたのか?」
「うん。一人で」
そうか、とリシェの答えに納得した。
「道端に入り過ぎると変な場所に埋まったりするからな。気を付ける事だ」
ファブロスの忠告に、素直にリシェはこくりと頷いた。
そしてくっつき虫を手にしたまま「気を付けるよ。気を付けながら集めてくる。沢山あったからな」と告げると、礼を言ってその場から去って行く。
彼を見送った後、ファブロスは改めて作業をしようと鍬を手にしたが、不意に端正な顔を上げた。
…あんな物を集めてどうする気なのだろうか。
一体何に使う気なのか、少し気になった。
その夜。
「ぎゃぁあああああああああああああああ!!!」
自室でリシェがラスと会話をしていると、突然凄まじい悲鳴が聞こえてきた。その後でドタバタと激しい足音を立てながらスティレンがノックもせずにこちらの部屋に入ってくる。
折角先輩と一緒に和やかに話をしていたのに、とラスは不満げにしながら、駆け込んで来たスティレンに対して何があったんだよと聞いた。
「ひ…っ、ひぃい…へ、変な虫がドアを開けたら沢山落ちてきた…何これ、気持ち悪い…!!」
見れば全身にトゲの付いた小さな物がスティレンの服やらバッグやらに付着している。それを見るやラスもうわああああと弱気な声を上げてしまった。
ドアを開けたら落ちてきた、とは何と悪質な悪戯なのだろうか。
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慌てている様子のスティレンに対し、リシェは棒付き飴を口にしながら慌てる事は無いとしれっとして言い放つ。
「はぁ!?」
「それ、虫じゃないぞ。草みたいなものだ。くっついて面白かったから沢山取ってきたんだ…」
「どういう事だよ!まさかこれ、お前が」
「お前は常に俺を馬鹿にしてくるからな。たまに仕返ししても罰は当たらないと思ったのだ。くっつき虫っていうあだ名の草らしいぞ。ほら、良くくっつくだろう?」
スティレンに付いていた内の一つを摘むと、ラスにも見せた。
珍しい物に見えたのか、ラスも「へえ」と興味深そうにそれを眺める。
「凄い、めっちゃくっついてくる。面白いですね」
自分の服に付けては凄い凄いとはしゃいでいるラスだったが、スティレンはそうではなかった。
「何が面白いっていうのさ!?俺なんか頭から大量に全身に被ったんだぞ!可哀想だと思わないの!?」
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