異世界学園の中の変な仲間たち

へすこ(ひしご)

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そのよんじゅうろく

何もしないから

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 完全にデートのような状況に、リシェが大好きなラスはとにかく上機嫌だった。パフェも一緒に食べて、普段見せない彼の表情を激写する事も出来た。
 これからどうしようかなぁと思いながら、隣で水分補給をするリシェをちら見する。
 当のリシェは見られている事に気付いて不思議そうな表情で「何か?」と問う。
「いや、何でもないんです。ただ嬉しくて嬉しくて…」
「?」
 夢にまで恋い焦がれていた本人とデートだなんてこれ以上の幸せは無いだろう。リシェは全く自覚は無いだろうが、これは明らかに恋人同士のデートそのものだ。
「はあ、帰ろうかな。クマも居ないし」
 浮かれきっているラスとは正反対のリシェは空気の読めない発言をした。
「いやいや、そこで帰ろうかなは無いですって!俺はこんなに嬉しくてたまらないのに!」
「何がそんなに嬉しいんだ?俺は全くそう思わないぞ」
 この意識の違い。
 どうにも、恋する相手は攻略が難しい。
「先輩!」
「何だよ、俺はお前より年下なんだぞ…」
 後輩の割にはリシェも先輩に対する態度ではないのだが、ラスは全く気にしない様子だ。
「このまま帰るなんてとんでもない!勿体無いです!折角のデートなのに!」
「俺はデートしてるつもりは無いんだけど…」
「とにかく俺と一緒に遊んで下さい!」
 必死に繫ぎ止めるラスに対し、リシェは面倒そうに彼を見上げると「どこに行くんだ?」と問う。どこに、と問われても答えようが無いのだが、とりあえず目的も無く歩くだけでも十分だった。
 意を決したようにリシェの手をぎゅっと繋ぐ。
「歩けば何かしらあると思うんです」
「はあ」
 店巡りとかあるじゃないですか、と言いながら、絶対彼が逃げないようにきつめに手を握った。
 ふらふらと歩いていくうちに、街の中でもやや人通りが少なく、入り組んだ道に迷い込んでいた。ラスはあれ?と周囲を見回す。
 こんな道あったんだ、という程度に先に進んでいくが、何やら怪しげな雰囲気の漂う界隈に入り込んでいたようだ。
「ラス」
「は、はい?」
 それはリシェも気付いたらしく、不審そうな表情でこちらを見てくる。
「どう見ても俺らが入ってはいけない場所に来た気がするんだけどどうなんだ?」
 内心冷や汗をかきながらラスは改めて周辺を見回した。
 きらびやかな看板や、まっピンクや紫などのネオン看板が立ち並ぶいかにもな建物が立ち並んでいる大人な雰囲気が二人を包み込む。
 …それはどう見てもラブホテル街。
 うわああ…とラスは焦り出した。
 これでは自分がリシェをここに連れ込んできたような感じでは無いか、いやそれでも先輩が望めば構わないけど、と頭の中が混乱でいっぱいになった。
「お前わざと狙ってここに来たのか?」
「ち、違いますよ!単に迷子になっただけです!でも先輩が社会見学的な意味で行ってみたいっていうなら!全然俺はいいんですよ!ほら、何もしないし!」
 必死に取り繕っていても、やはりリシェは胡散臭そうにラスを見ていた。その何もしないからという言葉ほど信用できるものではないというのが分からないのだろうか。
 リシェはラスを引っ張り、「戻るぞ」と促す。
「先輩!」
「ああ、もう何なんだよ。ここには用は無いんだぞ」
「ほ、本当に何もしないから!」
 怪しげな雰囲気に飲まれそうなラスはリシェに言う。
「行きたいならお前が行け!どうせ門前払いだ!」
 年齢制限だってあるんだからな、と真っ当な事をぶつけると、ラスははっと我に返った。
 あっ、そりゃそうだ…と。
「危ない…俺はなんていう事を」
「………」
「か、帰りましょう先輩。冷静になったらそりゃそうですよね。ああ、危ない…」
 うっかり道を踏み外すところだった、とホッとする。
 だがリシェはそんな変な気持ちに陥った彼を呆れていたのだ。こいつは本当にアホなんだろうな、と。
 来た道を引き返しながら、性懲りも無くラスは「でもいつかは一緒に遊びに行きましょうね、先輩!」と言い放つ。
 場所によってはカラオケだって出来るらしいですよと。
 はぁ、と溜息を漏らすリシェ。
「懲りないなぁ…」
「だっていっぱい遊びたいですもん。先輩と!」
 それは彼の素直な気持ちなのだろうが、さすがに遊びに行くにしてもラブホテルは無いだろうと思った。
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