67 / 101
そのろくじゅうろく
保健体育の一環
しおりを挟む
コンピュータ室で一人、身長を伸ばす方法をひたすら検索していたリシェは、夢中になり過ぎていて背後の気配に全く気付かずにいた。
ぽふりと肩を軽く叩かれると、ひい!と変に情けない悲鳴を上げる。
「よう、リシェだっけ?何を必死になって調べてんだ?」
「何か喋ってから肩を叩け!!」
自分の世界に入っていたリシェは、普通に話しかけてきた赤髪のヴェスカに驚き怒鳴る。
それに対して全く気にしてもいないヴェスカは、リシェが必死になって見ていた画面に目を向ける。
身長を伸ばす方法を検索していたのを知るなり、ううっと辛そうに呻き声を上げた。
何を言いたいのかが分かったリシェはかあっと顔を真っ赤にして抗議する。自分だって、好きでこんな事を検索したい訳ではないのだ。
「そんな目で俺を見てくるな!!」
「いや、だって…何だか可哀想で」
「うるさい!!」
別に好きで低身長なのではないのに。
「逆に何だよ、何でお前は無駄にそんなに背があるんだよ!俺がこうしていちいち検索しなくてもいいようにアドバイスしろ!」
半泣きでリシェはヴェスカに訴える。だが、どう見ても人に教えを乞う態度ではなかった。
そのままでも十分いいのにと思ったが、本人は大層不満のようだ。
他者からすれば彼の容姿は、物凄く羨ましがられる種類のものなのに。
「そんなに急ぐ事は無いだろ別に。折角可愛いのに勿体無い」
「それが嫌なんだよ、ふざけるなよ!変態に懐かれるのが心底嫌だからせめて背を伸ばしたいって思ってるのに!真面目に聞け!!」
うわーんと泣きだすリシェをどうにか宥め、ヴェスカは仕方無ぇなあと彼の席の隣にどっかりと腰を据えた。
「背を伸ばす方法なんて普通に過ごしてりゃ勝手に伸びてくるもんだろ?飯を良く食って運動してりゃ、知らないうちに伸びていくぞ」
「俺は今伸ばしたいんだ」
リシェは首を振りながら訴える。
他人から見れば誰もが振り返るような容姿を持っているくせに、彼はそれが苦痛なようだ。
生まれた時から至って普通、成長すればしたで無駄に成長しやがってと父親に言われてきたヴェスカには到底理解出来そうもない悩みだったが。
「でもよう、ここで検索したって胡散臭い方法しか書いてないぞ。効き目あったとしても個人差があるだろうし。そんなに焦らなくても、今何歳だっけ?まだ育ち盛りなんだからよ」
「十六」
「ほう、十六か。ならまだまだ成長するだろうよ。ほっといたら勝手に解決するような事で悩むよりもっと違う事に目を向けたほうがいいぞ」
うぐうぐとしゃくりあげているリシェの頭をぽんぽんと叩くと、ヴェスカは俺今いい事言ったよな?と得意げに言った。
「…で、何であんたはここに居るんだ?」
「あ、俺?いやさ、奥の席で動画見てただけだよ。そしたら誰か居る事に気付くじゃん?気になってさあ」
「動画?」
リシェは眉を寄せ、奥の方の席に注目する。
ヴェスカはびくりと反応し、大したもんじゃないよとごまかし笑いをする。
「何のだ?」
「ええ…気にしちゃうのそこ!?駄目だよ、プライベートなんだもん!!」
リシェはおもむろに立ち上がると、つかつかと奥の席に移動を始める。ヴェスカはぎゃあ!と声を上げながら彼を追いかけていた。
ダメだってば!と制止する声を出すのを振り切り、リシェは彼が使っている席に着きマウスを動かした。
「!!!」
画面いっぱいに広げられる肌色一色のアダルトな映像に、リシェは硬直する。
しかもヘッドホンから漏れ聞こえる怪しげな喘ぎ声。慣れている者ならば大した事ではないが、全く耐性の無いリシェには相当刺激的だ。
「ほら!だからダメだって言ったろ!これはっ、ほ、保健体育の一環なんだから!!」
全く説得力が無い。
「保健体育の範囲を超えすぎている!!」
リシェは顔を真っ赤にしながら席を立つと、ぼろぼろと涙を流しヴェスカに怒鳴る。まさかこんな場所でこのようなものを見る人間が居るなんて。
こいつも真顔で真っ当な事を言いながら結局これか、と。
「学校でこんなもの見るな!!お前も変態だ!!」
そう吐き捨て、リシェはうわーんと泣きながらコンピュータ室を飛び出して行った。
ぽふりと肩を軽く叩かれると、ひい!と変に情けない悲鳴を上げる。
「よう、リシェだっけ?何を必死になって調べてんだ?」
「何か喋ってから肩を叩け!!」
自分の世界に入っていたリシェは、普通に話しかけてきた赤髪のヴェスカに驚き怒鳴る。
それに対して全く気にしてもいないヴェスカは、リシェが必死になって見ていた画面に目を向ける。
身長を伸ばす方法を検索していたのを知るなり、ううっと辛そうに呻き声を上げた。
何を言いたいのかが分かったリシェはかあっと顔を真っ赤にして抗議する。自分だって、好きでこんな事を検索したい訳ではないのだ。
「そんな目で俺を見てくるな!!」
「いや、だって…何だか可哀想で」
「うるさい!!」
別に好きで低身長なのではないのに。
「逆に何だよ、何でお前は無駄にそんなに背があるんだよ!俺がこうしていちいち検索しなくてもいいようにアドバイスしろ!」
半泣きでリシェはヴェスカに訴える。だが、どう見ても人に教えを乞う態度ではなかった。
そのままでも十分いいのにと思ったが、本人は大層不満のようだ。
他者からすれば彼の容姿は、物凄く羨ましがられる種類のものなのに。
「そんなに急ぐ事は無いだろ別に。折角可愛いのに勿体無い」
「それが嫌なんだよ、ふざけるなよ!変態に懐かれるのが心底嫌だからせめて背を伸ばしたいって思ってるのに!真面目に聞け!!」
うわーんと泣きだすリシェをどうにか宥め、ヴェスカは仕方無ぇなあと彼の席の隣にどっかりと腰を据えた。
「背を伸ばす方法なんて普通に過ごしてりゃ勝手に伸びてくるもんだろ?飯を良く食って運動してりゃ、知らないうちに伸びていくぞ」
「俺は今伸ばしたいんだ」
リシェは首を振りながら訴える。
他人から見れば誰もが振り返るような容姿を持っているくせに、彼はそれが苦痛なようだ。
生まれた時から至って普通、成長すればしたで無駄に成長しやがってと父親に言われてきたヴェスカには到底理解出来そうもない悩みだったが。
「でもよう、ここで検索したって胡散臭い方法しか書いてないぞ。効き目あったとしても個人差があるだろうし。そんなに焦らなくても、今何歳だっけ?まだ育ち盛りなんだからよ」
「十六」
「ほう、十六か。ならまだまだ成長するだろうよ。ほっといたら勝手に解決するような事で悩むよりもっと違う事に目を向けたほうがいいぞ」
うぐうぐとしゃくりあげているリシェの頭をぽんぽんと叩くと、ヴェスカは俺今いい事言ったよな?と得意げに言った。
「…で、何であんたはここに居るんだ?」
「あ、俺?いやさ、奥の席で動画見てただけだよ。そしたら誰か居る事に気付くじゃん?気になってさあ」
「動画?」
リシェは眉を寄せ、奥の方の席に注目する。
ヴェスカはびくりと反応し、大したもんじゃないよとごまかし笑いをする。
「何のだ?」
「ええ…気にしちゃうのそこ!?駄目だよ、プライベートなんだもん!!」
リシェはおもむろに立ち上がると、つかつかと奥の席に移動を始める。ヴェスカはぎゃあ!と声を上げながら彼を追いかけていた。
ダメだってば!と制止する声を出すのを振り切り、リシェは彼が使っている席に着きマウスを動かした。
「!!!」
画面いっぱいに広げられる肌色一色のアダルトな映像に、リシェは硬直する。
しかもヘッドホンから漏れ聞こえる怪しげな喘ぎ声。慣れている者ならば大した事ではないが、全く耐性の無いリシェには相当刺激的だ。
「ほら!だからダメだって言ったろ!これはっ、ほ、保健体育の一環なんだから!!」
全く説得力が無い。
「保健体育の範囲を超えすぎている!!」
リシェは顔を真っ赤にしながら席を立つと、ぼろぼろと涙を流しヴェスカに怒鳴る。まさかこんな場所でこのようなものを見る人間が居るなんて。
こいつも真顔で真っ当な事を言いながら結局これか、と。
「学校でこんなもの見るな!!お前も変態だ!!」
そう吐き捨て、リシェはうわーんと泣きながらコンピュータ室を飛び出して行った。
0
あなたにおすすめの小説
転生しても推しが尊い!〜京橋くんとの学園ライフが尊死案件〜オタクでよかった、君に出会えたから
中岡 始
BL
前世の俺は、社畜オタクだった。
唯一の救いは、“黒星騎士団”という漫画のキャラ、レオ様を推すこと。
だがある日突然──
事故で命を落とした俺は、目覚めたら高校生になっていた。
しかも隣の席にいたのは、前世で推してたキャラの激似男子⁉
「え、レオ様…!? いや、現実!? ちょ、待って尊死するんだけど!?」
これは、転生オタク男子が “リアル推し” と出会ってしまった尊さ特化の学園ラブコメ。
推しに手が届きそうで届かない、心拍数限界突破の日々。
創作と感情の狭間で、「推し」と「恋」の境界がじわじわ崩れていく──
「これはもう、ただの供給じゃない。
俺と“君”の物語として、生きてるんだ」
尊死系BL/オタクあるある満載/文化祭・学園SNS・保健室…青春全部乗せ!
笑って泣ける、“愛”と“推し活”の二重螺旋ラブストーリー、開幕!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
僕がサポーターになった理由
弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する
生きている人全員に何らかの力がある
「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから)
でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった
だけど、僕には支えがあった
そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す
僕は弱い
弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい
だから、頑張ろうと思う……
って、えっ?何でこんな事になる訳????
ちょっと、どういう事っ!
嘘だろうっ!
幕開けは高校生入学か幼き頃か
それとも前世か
僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった
悲恋の騎士と姫が転生したら男子高校生だったんだが、姫は俺を落とす気満々だ
つぐみもり
BL
《第一部 翠河の国の姫は押しが強い》
かつて俺は、滅びゆく王国で姫君に忠誠を誓い、命を落とした――
……はずだったのに。
転生したら、なんで俺が男子高校生やってんだ!?
しかも、クラスの陽キャトップ・周藤智哉(すどうともや)は、どう見ても前世の姫君その人。
顔も声も、距離感バグってる性格もそのまま。
今度は身分差も掟もないからって、攻略する気満々で迫ってくるのやめてくれ!
平穏な現代ライフを送りたい陰キャ男子(元騎士)と、全力で落としにかかる陽キャ男子(元姫)の、逆異世界転生BLギャグコメディ!
「見つけたぞ、私の騎士。今度こそ、お前を手に入れる」
「イイエナンノコトカワカリマセン」
忠義も身分も性別も全部飛び越えて、今日も逃げる俺と追いかける姫(男子高校生)
《第二部 熱砂の国からの闖入者》
郁朗と智哉は、前世の想いを飛び越え、ついに結ばれた。
そして迎える高校二年生、健全な男子高校生同士として、健全な交際を続けるはずだったが——
「見つけたぞ姫! 今度こそお前を手に入れる!」
「もしかして、あいつは!?」
「……誰だっけ?」
熱砂の風と共に転校してきた、前世関係者。
千隼と翠瑶姫の過去の因縁が、また一つ紐解かれる。
※残酷描写あり
※本作は、前世では男女、現代では男子同士の恋愛を描いています。
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる