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そのななじゅういち
耳のついた、ぴるぴるした帽子
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「焼肉は後でいつでも行けるとして。…代わりに先輩にお願いがあるんです」
突然の兄からの嫌がらせ電話を切り、苛々していたリシェは「は?」と眉間に皺を寄せたまま目線を彼に移す。
外見が甘い容姿の為に、機嫌が悪かろうとそんなに迫力が無い。
「何だ。変な事なら絶対やらないからな」
ラスは自分の机の奥からがさごそと何かを引っ張ると、ウキウキした表情でリシェの目の前に見せた。
「これ!!頭に!!被って貰えますか!?」
「はあ?」
ラスが出してきたのは猫耳の付いた黒い帽子。
どの面下げてこのようなもふもふした可愛らしいものを買って来るのかとリシェは嫌そうな顔をして彼を見上げる。
これだけ不愉快そうにしているにも関わらず、ラスは全く気にしない様子で話を続けた。
「これ、ほら!横の長いのを引っ張ると耳が動くんですよ!ぴるぴるぴるって!絶対先輩似合うでしょ!?ちょうど髪も黒いし!!」
自分で手本を見せるように帽子を被り、両サイドの長い部分を引っ張る。右を引けば右の耳、左を引けば左の耳。確かに可愛いのだが、それだけだ。
女子受けはしそうなものだが、立派な男子であるリシェには全然心惹かれない。
リシェは「何で俺がやらなきゃならないんだ」とぷいっと顔を逸らした。
「先輩!!だから!!いいんです!!」
謎の力説を受けてしまう。
うるさいなあ、とリシェは呆れ、興味無さそうに押し付けてきた帽子を受け取った。
こいつはやるまでうるさいからな…と帽子に目線を落とすと、はあと溜息をつく。段々、ラスの行動が読めてきたのが悲しい。
仕方無くそれをすぽんと被ってみた。
「おおっ!先輩、先輩似合う!!」
黒い猫耳、完成。
無表情のままで「これでいいのか」とラスに問うと、彼はまだです!と自分の携帯電話で撮影を開始した。
「耳動かして、先輩!」
「面倒な奴だなあ…」
両サイドの長い部分を交互に引っ張ってみた。
ひくひくと頭上の耳が動くのを感じる。
「あーーー!もう、いいっ!先輩似合う!!」
「本当に動くんだこれ」
へえ、と動かしながら少し興味が湧いた。
「やっぱり先輩の為に買って来て良かったああ!うんうん、可愛い可愛い!!」
耳をへこへこさせ続けていると、たまらなくなったラスは動画の撮影を止めてリシェにぎゅうっと抱きついた。
ぎゃあああ!と叫ぶリシェ。
「先輩、それあげますから!たまに俺だけに見せて下さいね!!」
頬擦りをしながら嬉しい悲鳴を上げ続けるラスを、帽子を被ったままのリシェは「離せ!」と身を引こうとする。
何かにつけてはひっついてくるラスが限りなく鬱陶しい。
「もうっ、満足しただろ!」
やがて更にくっつこうとしたラスは動きを止めると、うんんと唸った。
申し訳無さそうな顔をしながら、彼は抱きしめたリシェに問う。
「先輩」
「何」
「焼肉の匂いが半端ない…」
当然だ。食ってきたのだから。
何当たり前の事を言い出すのか、とリシェは思った。ならくっつくなと。
「キスしたいけど焼肉の味がキスの味ってのも」
どさくさに紛れてキスしようとするその思考回路も危ないと思う。
こいつはそこまでやらなきゃ気が済まないのか。
リシェはラスの頭を勢い良く叩きながら「そんなものするか!!」と怒鳴っていた。
突然の兄からの嫌がらせ電話を切り、苛々していたリシェは「は?」と眉間に皺を寄せたまま目線を彼に移す。
外見が甘い容姿の為に、機嫌が悪かろうとそんなに迫力が無い。
「何だ。変な事なら絶対やらないからな」
ラスは自分の机の奥からがさごそと何かを引っ張ると、ウキウキした表情でリシェの目の前に見せた。
「これ!!頭に!!被って貰えますか!?」
「はあ?」
ラスが出してきたのは猫耳の付いた黒い帽子。
どの面下げてこのようなもふもふした可愛らしいものを買って来るのかとリシェは嫌そうな顔をして彼を見上げる。
これだけ不愉快そうにしているにも関わらず、ラスは全く気にしない様子で話を続けた。
「これ、ほら!横の長いのを引っ張ると耳が動くんですよ!ぴるぴるぴるって!絶対先輩似合うでしょ!?ちょうど髪も黒いし!!」
自分で手本を見せるように帽子を被り、両サイドの長い部分を引っ張る。右を引けば右の耳、左を引けば左の耳。確かに可愛いのだが、それだけだ。
女子受けはしそうなものだが、立派な男子であるリシェには全然心惹かれない。
リシェは「何で俺がやらなきゃならないんだ」とぷいっと顔を逸らした。
「先輩!!だから!!いいんです!!」
謎の力説を受けてしまう。
うるさいなあ、とリシェは呆れ、興味無さそうに押し付けてきた帽子を受け取った。
こいつはやるまでうるさいからな…と帽子に目線を落とすと、はあと溜息をつく。段々、ラスの行動が読めてきたのが悲しい。
仕方無くそれをすぽんと被ってみた。
「おおっ!先輩、先輩似合う!!」
黒い猫耳、完成。
無表情のままで「これでいいのか」とラスに問うと、彼はまだです!と自分の携帯電話で撮影を開始した。
「耳動かして、先輩!」
「面倒な奴だなあ…」
両サイドの長い部分を交互に引っ張ってみた。
ひくひくと頭上の耳が動くのを感じる。
「あーーー!もう、いいっ!先輩似合う!!」
「本当に動くんだこれ」
へえ、と動かしながら少し興味が湧いた。
「やっぱり先輩の為に買って来て良かったああ!うんうん、可愛い可愛い!!」
耳をへこへこさせ続けていると、たまらなくなったラスは動画の撮影を止めてリシェにぎゅうっと抱きついた。
ぎゃあああ!と叫ぶリシェ。
「先輩、それあげますから!たまに俺だけに見せて下さいね!!」
頬擦りをしながら嬉しい悲鳴を上げ続けるラスを、帽子を被ったままのリシェは「離せ!」と身を引こうとする。
何かにつけてはひっついてくるラスが限りなく鬱陶しい。
「もうっ、満足しただろ!」
やがて更にくっつこうとしたラスは動きを止めると、うんんと唸った。
申し訳無さそうな顔をしながら、彼は抱きしめたリシェに問う。
「先輩」
「何」
「焼肉の匂いが半端ない…」
当然だ。食ってきたのだから。
何当たり前の事を言い出すのか、とリシェは思った。ならくっつくなと。
「キスしたいけど焼肉の味がキスの味ってのも」
どさくさに紛れてキスしようとするその思考回路も危ないと思う。
こいつはそこまでやらなきゃ気が済まないのか。
リシェはラスの頭を勢い良く叩きながら「そんなものするか!!」と怒鳴っていた。
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