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そのはちじゅうご
【つい】リシェ、粉砕する【うっかり】
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ある日の昼休み時間。
リシェはうっかりスティレンのお気に入りの手鏡を割ってしまった。
割ったと言えば普通なのだが、厳密に言えば彼の机の上に置かれていた手鏡をふとした拍子に滑らせてしまい、落下したと同時に思いっきり踏ん付けてしまった。
しかも拾おうとして自分も前のめりになってしまい、バランスを崩して足がもつれ、拾うべきその鏡を全体重を乗せて思いっきり修復不能レベルに砕いてしまったのだ。
粉砕され、怒りのあまりスティレンは「何破壊してんのさ!リシェのデブ!!」と乱暴な言葉で責める。
そのような暴言を言われた事が無かったリシェは、わざとじゃ無い!と顔を真っ赤にして怒った。
「気に入ってたのに!ああぁもう、どうしてくれるのさ!これ限定の鏡なのにさぁ!!信じらんない!」
「鏡なら後で買ってやるよ」
「その辺に売ってるショボいのとは訳が違うんだけど!これだからリシェはムカつくんだよ!!」
砕かれた鏡の一部を拾い、スティレンは「もう、ほんと凹む…」と頭を垂れる。
それを見たリシェは流石に悪いと思ったのか、分かったよと前置きしてから「お前の気に入るようなの買って弁償するから」と渋々口にした。こう言わなければ相手も納得しない性格なのは良く理解しているのだ。
スティレンは顔を上げ、当然でしょと文句を呟くと彼の襟元に指を引っ掛けてぐいっとひき寄せた。
わ、とリシェは慌てる。
眼前に彼の顔を近づけさせるスティレンは「そして俺の言う事を聞いてもらうから」と美しい顔をやや意地悪く歪めた。
「な、何をさせる気だ」
えらい剣幕でスティレンが怒ったせいで、周囲のクラスメイトらは何だ何だとばかりにこちらをちらちら注目している。それを理解した上で、彼はふふんと勝気に笑った。
美少年二人組が揉める姿はどうしても目線を引いてしまうようだ。
「簡単な事だよ。このまま俺にキスしな、リシェ」
「嫌だ!」
弁償する事はいい。何故この場でスティレンにキスしなければならないのだろうか。あまりの理解不能な発言を受け、反射的にリシェは嫌がった。
しかしスティレンも引かない。
茶色の全体的な緩い癖っ毛を揺らし、特徴的な垂れ目を細めると「お前に拒否権は無いんだよ」と断言する。
「別の鏡と、この場でのキスで妥協してやるっての。俺はね、お前のせいでこの学校に来たようなもんなんだよ?お前が自覚無しに他人に色目を使わないように見張ってなきゃいけないんだから感謝するべきさ。お前は俺のものなんだからね」
襟元に引っ掛けた指をくいくいと引っ張る。
リシェはううと唸り、首を振って「嫌だ」と拒否した。
「なら俺とエッチする?そうしたら許してあげてもいいよ、リシェ?」
「嫌だぁあ…鏡を壊しただけで何でそうなるんだ」
自分の体は鏡と同じレベルなのか。
…確かに。
確かに、だ。
「うわー!!うっかり鏡を滑らせて落としてしまった!!」と叫びながら落とし、その後で「うわー!うっかりよろけて踏んでしまったー!!」とトドメに粉砕するという、わざとらしい壊し方に見えたのかもしれない。
だが許す条件が酷過ぎやしないだろうか。
ひたすら嫌だ嫌だと首を振っていると、やはり昼休みのひと時をリシェと過ごしたいラスがいつものようにやってきた。
険悪な雰囲気の二人を見るなり、彼は「何してるんだよ!」と慌てて駆け寄る。
スティレンはちいっと舌打ちすると「この馬鹿が俺の鏡を踏ん付けて壊したのさ」と説明する。リシェはわざとじゃないのだと慌てた。
ラスは二人を交互に見た後、「まあまあ」と宥めた。
「とりあえず今は喧嘩しちゃダメだ。みんなに迷惑かかるだろ?とりあえずスティレン、手を離して」
迷惑がかかる、と言われて仕方無くスティレンはリシェから手を離した。雰囲気を悪くしてはならないと少し冷静になったようだ。
「そうだなぁ、割ってしまったのは仕方ないとして」
「仕方無くないんだよ!気に入ってたんだぞ!」
食ってかかるスティレンを押さえると、ラスは無邪気に笑いながら妥協案を口走った。
「お詫びに俺と先輩のエッチをスティレンに見せてあげるから、それでチャラにしよう。ねっ」
リシェは頭で思うより先に体が動き、ラスの胸元に激しくパンチした。スティレンも彼の頭を思いっきり叩く。
ぼこん!と鈍い音が響いた。
「いたたたた!二人して何するんだよ、もう!」
ラスはぼこぼこと叩かれながら抗議する。
「お前しか得して無いじゃないか!!ふざけないでよ!」
「誰がするか!変態!変態!」
一方のリシェも半泣きになって叫び続けていた。
リシェはうっかりスティレンのお気に入りの手鏡を割ってしまった。
割ったと言えば普通なのだが、厳密に言えば彼の机の上に置かれていた手鏡をふとした拍子に滑らせてしまい、落下したと同時に思いっきり踏ん付けてしまった。
しかも拾おうとして自分も前のめりになってしまい、バランスを崩して足がもつれ、拾うべきその鏡を全体重を乗せて思いっきり修復不能レベルに砕いてしまったのだ。
粉砕され、怒りのあまりスティレンは「何破壊してんのさ!リシェのデブ!!」と乱暴な言葉で責める。
そのような暴言を言われた事が無かったリシェは、わざとじゃ無い!と顔を真っ赤にして怒った。
「気に入ってたのに!ああぁもう、どうしてくれるのさ!これ限定の鏡なのにさぁ!!信じらんない!」
「鏡なら後で買ってやるよ」
「その辺に売ってるショボいのとは訳が違うんだけど!これだからリシェはムカつくんだよ!!」
砕かれた鏡の一部を拾い、スティレンは「もう、ほんと凹む…」と頭を垂れる。
それを見たリシェは流石に悪いと思ったのか、分かったよと前置きしてから「お前の気に入るようなの買って弁償するから」と渋々口にした。こう言わなければ相手も納得しない性格なのは良く理解しているのだ。
スティレンは顔を上げ、当然でしょと文句を呟くと彼の襟元に指を引っ掛けてぐいっとひき寄せた。
わ、とリシェは慌てる。
眼前に彼の顔を近づけさせるスティレンは「そして俺の言う事を聞いてもらうから」と美しい顔をやや意地悪く歪めた。
「な、何をさせる気だ」
えらい剣幕でスティレンが怒ったせいで、周囲のクラスメイトらは何だ何だとばかりにこちらをちらちら注目している。それを理解した上で、彼はふふんと勝気に笑った。
美少年二人組が揉める姿はどうしても目線を引いてしまうようだ。
「簡単な事だよ。このまま俺にキスしな、リシェ」
「嫌だ!」
弁償する事はいい。何故この場でスティレンにキスしなければならないのだろうか。あまりの理解不能な発言を受け、反射的にリシェは嫌がった。
しかしスティレンも引かない。
茶色の全体的な緩い癖っ毛を揺らし、特徴的な垂れ目を細めると「お前に拒否権は無いんだよ」と断言する。
「別の鏡と、この場でのキスで妥協してやるっての。俺はね、お前のせいでこの学校に来たようなもんなんだよ?お前が自覚無しに他人に色目を使わないように見張ってなきゃいけないんだから感謝するべきさ。お前は俺のものなんだからね」
襟元に引っ掛けた指をくいくいと引っ張る。
リシェはううと唸り、首を振って「嫌だ」と拒否した。
「なら俺とエッチする?そうしたら許してあげてもいいよ、リシェ?」
「嫌だぁあ…鏡を壊しただけで何でそうなるんだ」
自分の体は鏡と同じレベルなのか。
…確かに。
確かに、だ。
「うわー!!うっかり鏡を滑らせて落としてしまった!!」と叫びながら落とし、その後で「うわー!うっかりよろけて踏んでしまったー!!」とトドメに粉砕するという、わざとらしい壊し方に見えたのかもしれない。
だが許す条件が酷過ぎやしないだろうか。
ひたすら嫌だ嫌だと首を振っていると、やはり昼休みのひと時をリシェと過ごしたいラスがいつものようにやってきた。
険悪な雰囲気の二人を見るなり、彼は「何してるんだよ!」と慌てて駆け寄る。
スティレンはちいっと舌打ちすると「この馬鹿が俺の鏡を踏ん付けて壊したのさ」と説明する。リシェはわざとじゃないのだと慌てた。
ラスは二人を交互に見た後、「まあまあ」と宥めた。
「とりあえず今は喧嘩しちゃダメだ。みんなに迷惑かかるだろ?とりあえずスティレン、手を離して」
迷惑がかかる、と言われて仕方無くスティレンはリシェから手を離した。雰囲気を悪くしてはならないと少し冷静になったようだ。
「そうだなぁ、割ってしまったのは仕方ないとして」
「仕方無くないんだよ!気に入ってたんだぞ!」
食ってかかるスティレンを押さえると、ラスは無邪気に笑いながら妥協案を口走った。
「お詫びに俺と先輩のエッチをスティレンに見せてあげるから、それでチャラにしよう。ねっ」
リシェは頭で思うより先に体が動き、ラスの胸元に激しくパンチした。スティレンも彼の頭を思いっきり叩く。
ぼこん!と鈍い音が響いた。
「いたたたた!二人して何するんだよ、もう!」
ラスはぼこぼこと叩かれながら抗議する。
「お前しか得して無いじゃないか!!ふざけないでよ!」
「誰がするか!変態!変態!」
一方のリシェも半泣きになって叫び続けていた。
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