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そのきゅうじゅうに
それは大層甘く口溶けて
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この変態!変態!!と言いながらリシェはラスの胸にぽこぽこと殴りかかる。殴られてもラスはあはははと照れたように笑いながら彼の手を掴んだ。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
ああ、可愛い。
ラスは顔を真っ赤にしたままのリシェを抱き締め、はあっと幸せそうな吐息を漏らす。
「全部お前のせいだ!お前のせいだからな!!」
「わ、分かりました。分かりましたよぉ先輩…とりあえず、シャワー浴びなきゃ」
「言われなくても分かってる!!」
泣きながらリシェは立ち上がろうとするが、やはり恥ずかしいのか前を隠しながらラスに「あっち向いてろ!」と叫んでいた。
何もそこまで、と苦笑いしながら大人しく横を向く。
その隙に彼はぱたぱたと足音を立てて部屋の浴室の方へと駆けて行った。
…キスだけでああいう反応なら、それ以上になると先輩は気絶してしまうのではないだろうか。
先程の可愛い反応を思い出しながらラスは胸をドキドキさせていた。あまりにも敏感過ぎて、後々困るかもしれない。
そうならないように少しずつ慣れさせないといけないのではなかろうか。むしろ、元の世界のリシェはどんな感じだったのだろう。
向こうでは先輩後輩以上にはならなかったから、彼がどんな甘い表情を見せるのかは分からない。リシェの相手はロシュ一人だけで、彼は一途にロシュを慕い続けていた。
あんな奴のどこに惹かれたのか、とラスはむくれた。
元の世界では相当の猫被りだったようだ。こちらで見せるロシュは、確実に素の姿。あの美しい外見で皆騙されているに違いないのだ。
彼はまたリシェを取り込もうとするに違いない。
ぐぬぬ、と歯軋りしていると、シャワーを終えたリシェが戻って来た。全て着替えて来たようで、前と違う姿になっていた。
「あれ、先輩…全部着替えて来たの?」
「当たり前だろう!に、匂いがつくと嫌だから」
「えー」
別にいいのにぃ、と膨れて見せる。
湯を浴びて顔を紅潮させているリシェはラスを睨むと「他人事だと思いやがって」と苛々と吐き捨てた。
まあまあ、と宥めるラスは自分の学校用の鞄をがさがさと探り、中から数個の丸い棒付きの飴をリシェに突き出す。
膨れっ面のリシェは反射的にそれを掴んだ。
「何だ?これで俺の機嫌を取ろうとしているのか」
そうはいかないぞと言いながらも、彼はラスが突き付けた飴をしっかり握っていた。
「…先輩」
何と正直なのか。
試しにラスは飴を引っこ抜こうとした。だが、リシェは掴んだまま全く離さない。
「先輩」
「ん」
「俺、まだあげるって言ってません」
「なら何故俺に突き出す?くれるんだろう?」
お互いぐいぐいと引っ張り合いをしていた。
「俺に渡そうとしてたくせに勿体ぶるな!」
余程食べたいのか、リシェはムキになりながら引っ張り続けた。ラスも反射的にまだですって、と離さずに苦笑する。
「それなら最初から出してこなきゃ良かったのに」
「まあまあ」
仕方無いなぁ、とラスは飴を握る力を緩める。
リシェは普通にくれるなら普通に寄越せと眉を寄せ、包みを開けた。ピンク色の丸い棒付き飴を口に入れようとしたその時だ。
ラスはリシェに抱き着き、リシェが口に含もうとした飴に逆側から口に含みながらそのまま押し倒してしまう。
「!?」
驚いて目を見開くリシェ。
飴を挟む形で密着する。そして唇を微かに開き、舌をちらつかせて間にある飴を舐め始めた。
「ん、んん」
きゅうっと両目を閉じながら、リシェは小さく呻いた。飴は苺の味で、甘い匂いが鼻を刺激してくる。稀に触れてくるお互いの唇の感触が、胸を甘く締め付けてきた。
「限定品なんです、この味。美味しいでしょ?先輩」
しばらく飴と、リシェの唇の感触を堪能した後でようやくラスはリシェから身を離す。
悪戯っ子のような無邪気な笑顔を見せ、ラスは「ご馳走様でした」と完全に力が抜けたまま横たわるリシェに言った。
飴を口に乗せたリシェは、顔を真っ赤にしてラスを呆然と見上げる。
「えへへ…だって俺も食べたかったから。それなら二人で味わった方がいいでしょ?」
「うう…それならそう言えば良かったのに…」
リシェは押しに弱い。
ラスはそう確信した。
はあはあと呼吸を整え、リシェはラスの予想外な激しい行動に胸を押さえていた。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
ああ、可愛い。
ラスは顔を真っ赤にしたままのリシェを抱き締め、はあっと幸せそうな吐息を漏らす。
「全部お前のせいだ!お前のせいだからな!!」
「わ、分かりました。分かりましたよぉ先輩…とりあえず、シャワー浴びなきゃ」
「言われなくても分かってる!!」
泣きながらリシェは立ち上がろうとするが、やはり恥ずかしいのか前を隠しながらラスに「あっち向いてろ!」と叫んでいた。
何もそこまで、と苦笑いしながら大人しく横を向く。
その隙に彼はぱたぱたと足音を立てて部屋の浴室の方へと駆けて行った。
…キスだけでああいう反応なら、それ以上になると先輩は気絶してしまうのではないだろうか。
先程の可愛い反応を思い出しながらラスは胸をドキドキさせていた。あまりにも敏感過ぎて、後々困るかもしれない。
そうならないように少しずつ慣れさせないといけないのではなかろうか。むしろ、元の世界のリシェはどんな感じだったのだろう。
向こうでは先輩後輩以上にはならなかったから、彼がどんな甘い表情を見せるのかは分からない。リシェの相手はロシュ一人だけで、彼は一途にロシュを慕い続けていた。
あんな奴のどこに惹かれたのか、とラスはむくれた。
元の世界では相当の猫被りだったようだ。こちらで見せるロシュは、確実に素の姿。あの美しい外見で皆騙されているに違いないのだ。
彼はまたリシェを取り込もうとするに違いない。
ぐぬぬ、と歯軋りしていると、シャワーを終えたリシェが戻って来た。全て着替えて来たようで、前と違う姿になっていた。
「あれ、先輩…全部着替えて来たの?」
「当たり前だろう!に、匂いがつくと嫌だから」
「えー」
別にいいのにぃ、と膨れて見せる。
湯を浴びて顔を紅潮させているリシェはラスを睨むと「他人事だと思いやがって」と苛々と吐き捨てた。
まあまあ、と宥めるラスは自分の学校用の鞄をがさがさと探り、中から数個の丸い棒付きの飴をリシェに突き出す。
膨れっ面のリシェは反射的にそれを掴んだ。
「何だ?これで俺の機嫌を取ろうとしているのか」
そうはいかないぞと言いながらも、彼はラスが突き付けた飴をしっかり握っていた。
「…先輩」
何と正直なのか。
試しにラスは飴を引っこ抜こうとした。だが、リシェは掴んだまま全く離さない。
「先輩」
「ん」
「俺、まだあげるって言ってません」
「なら何故俺に突き出す?くれるんだろう?」
お互いぐいぐいと引っ張り合いをしていた。
「俺に渡そうとしてたくせに勿体ぶるな!」
余程食べたいのか、リシェはムキになりながら引っ張り続けた。ラスも反射的にまだですって、と離さずに苦笑する。
「それなら最初から出してこなきゃ良かったのに」
「まあまあ」
仕方無いなぁ、とラスは飴を握る力を緩める。
リシェは普通にくれるなら普通に寄越せと眉を寄せ、包みを開けた。ピンク色の丸い棒付き飴を口に入れようとしたその時だ。
ラスはリシェに抱き着き、リシェが口に含もうとした飴に逆側から口に含みながらそのまま押し倒してしまう。
「!?」
驚いて目を見開くリシェ。
飴を挟む形で密着する。そして唇を微かに開き、舌をちらつかせて間にある飴を舐め始めた。
「ん、んん」
きゅうっと両目を閉じながら、リシェは小さく呻いた。飴は苺の味で、甘い匂いが鼻を刺激してくる。稀に触れてくるお互いの唇の感触が、胸を甘く締め付けてきた。
「限定品なんです、この味。美味しいでしょ?先輩」
しばらく飴と、リシェの唇の感触を堪能した後でようやくラスはリシェから身を離す。
悪戯っ子のような無邪気な笑顔を見せ、ラスは「ご馳走様でした」と完全に力が抜けたまま横たわるリシェに言った。
飴を口に乗せたリシェは、顔を真っ赤にしてラスを呆然と見上げる。
「えへへ…だって俺も食べたかったから。それなら二人で味わった方がいいでしょ?」
「うう…それならそう言えば良かったのに…」
リシェは押しに弱い。
ラスはそう確信した。
はあはあと呼吸を整え、リシェはラスの予想外な激しい行動に胸を押さえていた。
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