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そのさんじゅうご
襲撃
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昼休みの中庭。
リシェは中庭の中心にある噴水の縁にちょこんと座り、完食した弁当を膝に乗せてぼんやりしていた。
天気は快晴。こんな天気のいい日はぼんやりするに限ると思いながら空を見上げている。
「あ!また居る」
「………」
また、とは何なのか。
声が上がった方向に顔を向ければ、いつぞやの中等部の双子の少年達。リシェは面倒臭そうに表情を曇らせる。前に遭遇したのはパンの切れ端をばら撒いていた時だったような気がする。
こいつら、またハトを呼び寄せて来ないだろうな…とちょっとだけ身構えた。
「んっふ…こんにちはぁ」
双子と言えども、性格は極端に違うようだ。
生意気そうな短髪と、ゆるふわな印象を与える少年二人。
「お前、見る度いっつも一人だな。友達いねぇのか?」
短髪の少年はリシェに突っかかるように言う。
随分失礼な事を言い放ってくれるな、と不愉快に感じながらリシェは「お前達と会うのはこれで二回目だと思うぞ」と突き放した。
たった二回程度で俺の何が分かるのかと呆れた。
「あー、何回も会ってるような気がしたけどそんなもんだったのか。でもお前友達全然居なさそうだよな。暗い部屋でメダカとか飼ってそうだし、学校から帰ったら唯一の友達のサボテンに今日も誰からも話しかけられなかったって声かけてそう」
何だそれは…とリシェは短髪に向けて顔を顰めた。大体、サボテンなんか育ててないしと心の中で突っ込む。
大体、友達が居ない事を前提にして喋っているのが気に入らない。
「うんうん。何回も会ってるような気がしたよねぇ。僕の目からだと君はとっても経験豊富に見えるよぉ」
二人から好き勝手なイメージを持たれている模様。
「お前ら俺に何か恨みでもあるのか」
双子はほぼ同時にお互いの顔を見合わせた。そしてすぐにリシェに向き直ると、一緒ににっこり笑いながら「無いよぉ」と答える。
「何だか可愛いからいじめたくなっちゃうんだよねぇ。ねっ、ルイユ?」
「そうそう、目立つしな。頬っぺたなんか凄えぷにぷにしてそうだし」
そう言いながら、二人はリシェの両側にくっついてきた。
居心地の悪さを感じ、「何だお前ら」と威嚇するように言い放つ。
「中坊の癖に生意気だぞ。気安くくっついてくるな」
「お前だってガキ臭い顔してるじゃねーか。俺らと大して変わんねーぞ」
舌打ちした後、リシェはくっついてくる二人から離れようと立ちあがろうとした。しかし肩を掴まれ、逃げるのを完全に阻まれてしまう。
ゆるふわが「ああん」と非常に色気のある声を上げた。
可愛い顔立ちだからまだ許せるが、これから大人になれば彼はどう変化を遂げるのだろうか。流石に色っぽい声は出さないとは思うが。
「逃げたらダメだよぉ」
「そうだぞ、逃げんな」
雰囲気は違えど、同じ顔二人が自分を掴んで離れない。
「休み時間が終わるだろ!くっつくな、鬱陶しい!!」
ぐいぐいと引っ張り合いをしながら、リシェは半ギレ状態で二人に吐き捨てる。
「大人しそうな顔面のくせに強気だなー」
「余計なお世話だ!!」
もう少しで昼休みが終わるのはお互い分かっていた。
しかし双子はリシェに構いたくて構いたくて仕方ないのだろう。まるで良い玩具とばかりに引っ張ってくる。
「俺らは大量のハトに懐かれてたお前に興味があるんだよー」
「ねえ、どうやってハトを手懐けてるのー?」
こいつらは俺よりハトに興味があるのか?と訝しみながら「知るか!!」と怒鳴った。そもそもハトを手懐けているつもりはない。
奴らは勝手に寄ってくるだけなのだ。
「お前、常に豆を持ち歩いてるんじゃねーのか?」
「アホ抜かせ!何で俺がハトに好かれる為に豆を持ち歩かなきゃならないんだよ!!」
必死に二人から逃れようとしていると、ようやく昼休み終了の予鈴が校舎に鳴り響いた。
やっと解放される…と安心していたその時だ。頭上から不穏な羽音が聞こえてきた。
「!!!」
三人は同時に顔を上げた。
「うわああ、なんだこれ!またハトだ!!ハトが来た!」
「ハトだー!すごぉおい!!」
歓喜の声を上げる二人とは違い、リシェは鬼気迫る表情をしながらその場から逃げ出していた。
そしてやはり大量のハトはリシェを追いかけていく。
「何なんだよもう!!俺ばっかり狙ってきやがって!」
うわー!!と悲鳴を上げながら彼は中庭から去って行った。
「………」
「…凄げぇな、ハトにめちゃくちゃ好かれてるじゃん」
「うーん…ハトって人間とエッチ出来る?発情期じゃなくって?」
何故その話になるのだろうか。
「どう考えてもそれは無理だろ…いや本当、何なんだあれ」
リシェの姿を目で追っていた二人は、あまりの光景に呆気に取られていた。
リシェは中庭の中心にある噴水の縁にちょこんと座り、完食した弁当を膝に乗せてぼんやりしていた。
天気は快晴。こんな天気のいい日はぼんやりするに限ると思いながら空を見上げている。
「あ!また居る」
「………」
また、とは何なのか。
声が上がった方向に顔を向ければ、いつぞやの中等部の双子の少年達。リシェは面倒臭そうに表情を曇らせる。前に遭遇したのはパンの切れ端をばら撒いていた時だったような気がする。
こいつら、またハトを呼び寄せて来ないだろうな…とちょっとだけ身構えた。
「んっふ…こんにちはぁ」
双子と言えども、性格は極端に違うようだ。
生意気そうな短髪と、ゆるふわな印象を与える少年二人。
「お前、見る度いっつも一人だな。友達いねぇのか?」
短髪の少年はリシェに突っかかるように言う。
随分失礼な事を言い放ってくれるな、と不愉快に感じながらリシェは「お前達と会うのはこれで二回目だと思うぞ」と突き放した。
たった二回程度で俺の何が分かるのかと呆れた。
「あー、何回も会ってるような気がしたけどそんなもんだったのか。でもお前友達全然居なさそうだよな。暗い部屋でメダカとか飼ってそうだし、学校から帰ったら唯一の友達のサボテンに今日も誰からも話しかけられなかったって声かけてそう」
何だそれは…とリシェは短髪に向けて顔を顰めた。大体、サボテンなんか育ててないしと心の中で突っ込む。
大体、友達が居ない事を前提にして喋っているのが気に入らない。
「うんうん。何回も会ってるような気がしたよねぇ。僕の目からだと君はとっても経験豊富に見えるよぉ」
二人から好き勝手なイメージを持たれている模様。
「お前ら俺に何か恨みでもあるのか」
双子はほぼ同時にお互いの顔を見合わせた。そしてすぐにリシェに向き直ると、一緒ににっこり笑いながら「無いよぉ」と答える。
「何だか可愛いからいじめたくなっちゃうんだよねぇ。ねっ、ルイユ?」
「そうそう、目立つしな。頬っぺたなんか凄えぷにぷにしてそうだし」
そう言いながら、二人はリシェの両側にくっついてきた。
居心地の悪さを感じ、「何だお前ら」と威嚇するように言い放つ。
「中坊の癖に生意気だぞ。気安くくっついてくるな」
「お前だってガキ臭い顔してるじゃねーか。俺らと大して変わんねーぞ」
舌打ちした後、リシェはくっついてくる二人から離れようと立ちあがろうとした。しかし肩を掴まれ、逃げるのを完全に阻まれてしまう。
ゆるふわが「ああん」と非常に色気のある声を上げた。
可愛い顔立ちだからまだ許せるが、これから大人になれば彼はどう変化を遂げるのだろうか。流石に色っぽい声は出さないとは思うが。
「逃げたらダメだよぉ」
「そうだぞ、逃げんな」
雰囲気は違えど、同じ顔二人が自分を掴んで離れない。
「休み時間が終わるだろ!くっつくな、鬱陶しい!!」
ぐいぐいと引っ張り合いをしながら、リシェは半ギレ状態で二人に吐き捨てる。
「大人しそうな顔面のくせに強気だなー」
「余計なお世話だ!!」
もう少しで昼休みが終わるのはお互い分かっていた。
しかし双子はリシェに構いたくて構いたくて仕方ないのだろう。まるで良い玩具とばかりに引っ張ってくる。
「俺らは大量のハトに懐かれてたお前に興味があるんだよー」
「ねえ、どうやってハトを手懐けてるのー?」
こいつらは俺よりハトに興味があるのか?と訝しみながら「知るか!!」と怒鳴った。そもそもハトを手懐けているつもりはない。
奴らは勝手に寄ってくるだけなのだ。
「お前、常に豆を持ち歩いてるんじゃねーのか?」
「アホ抜かせ!何で俺がハトに好かれる為に豆を持ち歩かなきゃならないんだよ!!」
必死に二人から逃れようとしていると、ようやく昼休み終了の予鈴が校舎に鳴り響いた。
やっと解放される…と安心していたその時だ。頭上から不穏な羽音が聞こえてきた。
「!!!」
三人は同時に顔を上げた。
「うわああ、なんだこれ!またハトだ!!ハトが来た!」
「ハトだー!すごぉおい!!」
歓喜の声を上げる二人とは違い、リシェは鬼気迫る表情をしながらその場から逃げ出していた。
そしてやはり大量のハトはリシェを追いかけていく。
「何なんだよもう!!俺ばっかり狙ってきやがって!」
うわー!!と悲鳴を上げながら彼は中庭から去って行った。
「………」
「…凄げぇな、ハトにめちゃくちゃ好かれてるじゃん」
「うーん…ハトって人間とエッチ出来る?発情期じゃなくって?」
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リシェの姿を目で追っていた二人は、あまりの光景に呆気に取られていた。
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