1 / 1
見習い「だから来過ぎなんだって」
しおりを挟む
ああ、何度目だろう。
やたら定期的に来るねえ、この手の種類が。
みんな異世界に憧れ過ぎじゃないの?それとも、時空が歪んで引き摺り込まれたパターンなのかな。うーん、分からん。
とにかく、『似たようなお客様』が多い事。
こっち側に運悪く引っ張り込まれたのは同情するけど、動揺しないでスカした顔して仕方ないからやってやるかみたいな態度をする奴。そのくせ無駄に能力欲しがる。
は?チートが欲しい?
前はモテなかったから女にモテるスキルが欲しい?
はい?最強魔法を最初から使いたい?
贅沢言うな!お前に特殊能力渡す度にこっちは無意味にペナルティ喰らうんだよ!だいたい、備わってもお前ら使いこなせないだろーが!
確かに力を与えるよ、人並み以上の能力をさあ。
でもよ、お前達練習しないでいきなり最強になれると思うか!?
モテたいならとりあえず対人スキル磨け!仏頂面になるな!面倒臭がるな!
ああ、また無駄なペナルティ喰らったよ。
ろくな努力をしない人間を下界に送り出したって…。
次は慎重にしなきゃ。くそ。
神様の端くれだって、そりゃあ悩むのだ。
「帰りたいでござる!!」
…今回はかなり珍しいパターンだった。
見慣れない場所に居るだけで、大体の者は無感動なのに。
「ここはどこでござるか!?ぼぼぼ僕はさっきまで公園に居たはずなのに!!」
辺りをキョロキョロ見回す小太り。
背中にはリュック。何を詰めているのか気になる。
とりあえず、説明だけしてあげないと。
「珍しいねぇ、開口一番帰りたいって言ったのは君が初めてだよ?帰してあげたいのはやまやまなんだけどねぇ。異世界側に来た者はなかなか戻れないんだよ。代わりに僕が、何らかの能力を君にあげるから帰るまでの時間潰しをして欲しい訳」
その来訪者は、甘いものを今までたらふく食べてきたのか、やたら肌はボツボツに荒れていた。健康的には程遠いその姿。
彼はきょとんとした目をして僕を見た。そしてパアッと目を輝かせながら叫ぶ。
「君は魔法少女のマーテルちゃんに似ていますね!」
「…誰だよ!」
マジで、誰なんだよ!
「知らないとな!?確か切り抜きがあったとおも」
「いや、探さなくていい!見せなくていいから!」
リュックを下ろして中身を探そうとする彼に、僕は慌てて止めに入った。
このタイプは絶対話が長くなる。
人物紹介から始まって、家族構成やら何やら、挙句には萌えポイントまで事細かく説明してくれたりするのだ。
「ほんとにいいから!…とにかく君は元の世界に戻るまで、こちらで時間を潰していて欲しい。ただ、こちらは魔物とかが徘徊する物騒な世界だから、僕から君へ少しだけ力を分けてあげられる。もしかしたら命を落とすかもしれないからね。こっちで死んだら、もう元には戻れないのさ」
「夢かな?夢なら別にこのままでもいいのですよ。ここで宝物を眺めてれば目が覚めるだろうし」
…変わってるなー。
大抵の人は勇み出してくるんだけど。
「うーん…残念だけど、君はここにずっと居られるって訳にはいかないんだよ。生か死かの境目なんだ。死ぬ間際で僕が引き止めてる感じだから、ずっと境目で君を引っ張ってられないの」
「は!?わ、我輩は死んだのでありますか!?」
「死んでる訳でもないねぇ。時空の歪みで彷徨ってる状態だ。生きてはいない状態だけど、死んでない。眠ってるに似た状態だね。最近多くてねえ。こっち側で強くなって悪を倒したいだの、世界中の美女を集めてハーレムしたいだの、欲張りが沢山やってくる。まあ、戻れる時まで好きなように過ごしていいよって事。さ、君はどうする?」
彼はまだピンとこないようだ。
それはそうだろう。今まで平和に好きな物に囲まれて生活していたのだから。
今までの来訪者と違い、とにかく大人しく慎ましく生きていきたいタイプなのだろう。
「いやあ、僕は別に何かしたい訳でもないんで」
「下界は危ないんだよ?せめて武装したいとか言ってくれないとさあ、あまり死人出したく無いんだよね」
ここまで説明しているのに、まだモゴモゴしていた。
ああ、面倒だなあ。
僕はデカイ図体で煮え切らない様子の彼を見ながら、「なら僕が決めるよ」と腕組みをして告げる。
はっきりしないのも考え物だ。
「え!?」
「だって決まらないんだもん!面倒!こっちは待つ時間すら惜しいの!よし、君には棍棒と強化しまくった防弾ガラスの盾をあげる!安心して、街にはそれぞれ武器があるからお金があったら買えるし、初歩の初歩から戦える最弱エリアに下ろしてあげるから!」
僕が命じると、彼の手には棍棒と防弾ガラスの盾が出現した。
防弾ガラスの盾は重いらしく、手にした瞬間彼は重みで倒れる。
「重いでござる!!これは無理!」
「なら鍛えて!頑張ってね!」
最後は投げやりだった。
喚く彼を放り出すように、僕は下界に無理に彼を追い出した。
…まあ、これが半年前の事。
ちなみに僕は彼をすっかり忘れていたのだが、ある日報酬を貰った。いつも罰せられていただけに何事かと思ったのだが。
何故なのかと聞いてみれば、あの帰りたがっていた小太りの男が今では歴戦の魔物ハンターになっているのだという。弱きを助け、強さを驕る事無く、困った者には手を差し伸べるという本物の勇者になっているのだとか。
あのおどおどモゴモゴしていた小太りが。
大剣を背にして、筋肉を備え、精悍な顔と変化していた。
さすがに僕は彼の存在を忘れていたとは言えなかった。忘れていた間、あの小太りは成長していったようだ。
そしていつ、彼を元の世界に帰そうかと悩んでいる。
前の原型すら留めていないのに、戻ったら関係者もびっくりするだろう。
…また一つ、余計な悩みが増えた。
やたら定期的に来るねえ、この手の種類が。
みんな異世界に憧れ過ぎじゃないの?それとも、時空が歪んで引き摺り込まれたパターンなのかな。うーん、分からん。
とにかく、『似たようなお客様』が多い事。
こっち側に運悪く引っ張り込まれたのは同情するけど、動揺しないでスカした顔して仕方ないからやってやるかみたいな態度をする奴。そのくせ無駄に能力欲しがる。
は?チートが欲しい?
前はモテなかったから女にモテるスキルが欲しい?
はい?最強魔法を最初から使いたい?
贅沢言うな!お前に特殊能力渡す度にこっちは無意味にペナルティ喰らうんだよ!だいたい、備わってもお前ら使いこなせないだろーが!
確かに力を与えるよ、人並み以上の能力をさあ。
でもよ、お前達練習しないでいきなり最強になれると思うか!?
モテたいならとりあえず対人スキル磨け!仏頂面になるな!面倒臭がるな!
ああ、また無駄なペナルティ喰らったよ。
ろくな努力をしない人間を下界に送り出したって…。
次は慎重にしなきゃ。くそ。
神様の端くれだって、そりゃあ悩むのだ。
「帰りたいでござる!!」
…今回はかなり珍しいパターンだった。
見慣れない場所に居るだけで、大体の者は無感動なのに。
「ここはどこでござるか!?ぼぼぼ僕はさっきまで公園に居たはずなのに!!」
辺りをキョロキョロ見回す小太り。
背中にはリュック。何を詰めているのか気になる。
とりあえず、説明だけしてあげないと。
「珍しいねぇ、開口一番帰りたいって言ったのは君が初めてだよ?帰してあげたいのはやまやまなんだけどねぇ。異世界側に来た者はなかなか戻れないんだよ。代わりに僕が、何らかの能力を君にあげるから帰るまでの時間潰しをして欲しい訳」
その来訪者は、甘いものを今までたらふく食べてきたのか、やたら肌はボツボツに荒れていた。健康的には程遠いその姿。
彼はきょとんとした目をして僕を見た。そしてパアッと目を輝かせながら叫ぶ。
「君は魔法少女のマーテルちゃんに似ていますね!」
「…誰だよ!」
マジで、誰なんだよ!
「知らないとな!?確か切り抜きがあったとおも」
「いや、探さなくていい!見せなくていいから!」
リュックを下ろして中身を探そうとする彼に、僕は慌てて止めに入った。
このタイプは絶対話が長くなる。
人物紹介から始まって、家族構成やら何やら、挙句には萌えポイントまで事細かく説明してくれたりするのだ。
「ほんとにいいから!…とにかく君は元の世界に戻るまで、こちらで時間を潰していて欲しい。ただ、こちらは魔物とかが徘徊する物騒な世界だから、僕から君へ少しだけ力を分けてあげられる。もしかしたら命を落とすかもしれないからね。こっちで死んだら、もう元には戻れないのさ」
「夢かな?夢なら別にこのままでもいいのですよ。ここで宝物を眺めてれば目が覚めるだろうし」
…変わってるなー。
大抵の人は勇み出してくるんだけど。
「うーん…残念だけど、君はここにずっと居られるって訳にはいかないんだよ。生か死かの境目なんだ。死ぬ間際で僕が引き止めてる感じだから、ずっと境目で君を引っ張ってられないの」
「は!?わ、我輩は死んだのでありますか!?」
「死んでる訳でもないねぇ。時空の歪みで彷徨ってる状態だ。生きてはいない状態だけど、死んでない。眠ってるに似た状態だね。最近多くてねえ。こっち側で強くなって悪を倒したいだの、世界中の美女を集めてハーレムしたいだの、欲張りが沢山やってくる。まあ、戻れる時まで好きなように過ごしていいよって事。さ、君はどうする?」
彼はまだピンとこないようだ。
それはそうだろう。今まで平和に好きな物に囲まれて生活していたのだから。
今までの来訪者と違い、とにかく大人しく慎ましく生きていきたいタイプなのだろう。
「いやあ、僕は別に何かしたい訳でもないんで」
「下界は危ないんだよ?せめて武装したいとか言ってくれないとさあ、あまり死人出したく無いんだよね」
ここまで説明しているのに、まだモゴモゴしていた。
ああ、面倒だなあ。
僕はデカイ図体で煮え切らない様子の彼を見ながら、「なら僕が決めるよ」と腕組みをして告げる。
はっきりしないのも考え物だ。
「え!?」
「だって決まらないんだもん!面倒!こっちは待つ時間すら惜しいの!よし、君には棍棒と強化しまくった防弾ガラスの盾をあげる!安心して、街にはそれぞれ武器があるからお金があったら買えるし、初歩の初歩から戦える最弱エリアに下ろしてあげるから!」
僕が命じると、彼の手には棍棒と防弾ガラスの盾が出現した。
防弾ガラスの盾は重いらしく、手にした瞬間彼は重みで倒れる。
「重いでござる!!これは無理!」
「なら鍛えて!頑張ってね!」
最後は投げやりだった。
喚く彼を放り出すように、僕は下界に無理に彼を追い出した。
…まあ、これが半年前の事。
ちなみに僕は彼をすっかり忘れていたのだが、ある日報酬を貰った。いつも罰せられていただけに何事かと思ったのだが。
何故なのかと聞いてみれば、あの帰りたがっていた小太りの男が今では歴戦の魔物ハンターになっているのだという。弱きを助け、強さを驕る事無く、困った者には手を差し伸べるという本物の勇者になっているのだとか。
あのおどおどモゴモゴしていた小太りが。
大剣を背にして、筋肉を備え、精悍な顔と変化していた。
さすがに僕は彼の存在を忘れていたとは言えなかった。忘れていた間、あの小太りは成長していったようだ。
そしていつ、彼を元の世界に帰そうかと悩んでいる。
前の原型すら留めていないのに、戻ったら関係者もびっくりするだろう。
…また一つ、余計な悩みが増えた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる