51 / 101
そのごじゅう
変質者防止
しおりを挟む
またリシェが同級生からおかしげなものを貰って来た。
ラスはうむむむと唸りながら彼が喜んでいる様を見つめる。
「何でそれなんですか?」
彼が持っているのはひょっとこのお面。何でもどこかのイベントの出店で売っていたらしく、何故かくれたらしい。全くもって意味が分からない。
何故リシェにそれをプレゼントしてきたのか。彼にあげるためにお面を買ってきたというその事実がラスには気に入らなかった。
「さあ…?」
「欲しいとでも言ったんですか、先輩?」
「そんな訳あるか。別に欲しいから買ってこいなんて一切頼んで無いぞ。でも面白いお面だな」
「やけにマニアックな物ばっかりくれるようですけど、それは同じ人がくれるんですか?」
マタンゴのフィギュアといい、ツチノコの模型といい、プレゼントにしては非常に特殊感を感じる。そして現在、ひょっとこのお面。
余程リシェに構って欲しいのかと歯軋りしたくなるのだ。
リシェは無表情のまま、ふるふると首を振った。
「いや、それぞれ別だ」
「えぇ…」
「どうだ?このお面」
しかも本人は乗り気でお面を被る始末。ひょうきんな顔を向けられ、ちょっとふふっと笑いそうになったが我慢する。
「先輩」
「何だ」
「きっとその人達は先輩を狙っていますよ。プレゼント攻撃で凋落させようと画策しているのです。気を付けた方がいいですよ」
ひょっとこの顔を向け、リシェは「そんな馬鹿な」と返す。
「何でもお前基準で考えない方がいいぞ」
「いやいやいや…ここは男子校ですがね、分かりますよ。先輩は黙ってても人の目を惹きつけやすいんですから。きっと狙っています。俺には分かるんです。だから俺がこうして常に見張ってないと」
ぎりぎりと歯軋りしながらラスはリシェに訴える。
一方のリシェはお面を被ったまま、お前じゃあるまいしと突っぱねた。目の部分にちょうど穴が空いていて、お面のままでも周囲が良く見えた。
外さないという事は気に入ったようだ。
「俺、このままで食堂に行こうかな」
「やめて下さいよ…先輩、いつも無表情じゃないですか。いきなりそのお面を被ってみんなの前に出たら頭でも打ったのかと思われてしまいますって」
「うーん、そうか…」
冷静に突っ込まれ、リシェはかくりと肩を落とした。
「これ、どこに置こうかな。置く場所に悩むな」
リシェの専用の棚は置く場所があまり無かった。ラスは「そうですねぇ」と考える。
「あ、そうだ」
間を置き、ラスは顔を上げる。
「外に向けて窓に貼り付けるのってどうですか?カーテンレールから紐か何かで吊り下げるとか」
「ほう」
変質者防止にもなりそうですし、とニコニコしながら言う。
リシェはなるほど、と満更でもない様子でその提案を聞いた後、早速紐を取り出してお面の上部分に穴を開けてそれを通した。
「この部屋目がけて吹き矢を飛ばしてくるのも居ますからね」
稀に出現するスナイパーを思い出しながらラスはリシェからお面を受け取ると、早速カーテンレールに繋ぎ始める。多少は抑止になるはずだ。
外部から見ると、部屋にひょっとこの顔だけが浮かび上がって見えるという不気味な状況になった。それでもラスは満足げにうんうんと頷く。
「まあ、これでいいでしょう」
出来映えに満足し、そのままカーテンを閉めた。
晩ご飯を終え、湯を浴びた後それぞれ好きな時間を過ごしていると窓から異音が聞こえた。
ピス、ピスという窓に何かが貼り付く音。
ラスは読んでいた雑誌から顔を上げ、何だろうとカーテンを開く。
「うっわ!!」
異常な状況につい大声を上げてしまった。リシェはゲーム画面から現実に戻り、何だ?と眉を寄せる、
「こ、怖っ!!キモっ!!」
ラスはそう言いながらリシェに窓を見せると、彼もまた「うわ!」と悲鳴を上げる。
ちょうどひょっとこを吊り下げた部分目掛けて吸盤付きの吹き矢が数個刺さっていたのだ。よくまぁピンポイントで差し込めるなと感心する。
「何だこれ!」
「あの保健医ですよ…気持ち悪…」
窓を開けて吹き矢に括り付けていた手紙を開いた。
『顔が浮かび上がって怖いから吊り下げるのを今すぐやめて下さい』
手紙にはそう書かれている。ラスはぐしゃりとその手紙を捻り潰すと、リシェに「このお面ってどこのお祭りでしょうかね?」と笑顔で問う。
リシェはきょとんとした顔で首を傾げた。
「さぁ…何だ?欲しくなったのか?」
「ううん、どうせならいっぱい吊り下げてやろうかなーって思っただけですよぉ」
…怖いだって?それならめちゃくちゃ吊り下げてやろうじゃないか。
毎度ピンポイントでこちらに吹き矢を飛ばしてくる保健医の顔を思い出しながら、ラスは近場で開催されているイベントの検索を始めていた。
ラスはうむむむと唸りながら彼が喜んでいる様を見つめる。
「何でそれなんですか?」
彼が持っているのはひょっとこのお面。何でもどこかのイベントの出店で売っていたらしく、何故かくれたらしい。全くもって意味が分からない。
何故リシェにそれをプレゼントしてきたのか。彼にあげるためにお面を買ってきたというその事実がラスには気に入らなかった。
「さあ…?」
「欲しいとでも言ったんですか、先輩?」
「そんな訳あるか。別に欲しいから買ってこいなんて一切頼んで無いぞ。でも面白いお面だな」
「やけにマニアックな物ばっかりくれるようですけど、それは同じ人がくれるんですか?」
マタンゴのフィギュアといい、ツチノコの模型といい、プレゼントにしては非常に特殊感を感じる。そして現在、ひょっとこのお面。
余程リシェに構って欲しいのかと歯軋りしたくなるのだ。
リシェは無表情のまま、ふるふると首を振った。
「いや、それぞれ別だ」
「えぇ…」
「どうだ?このお面」
しかも本人は乗り気でお面を被る始末。ひょうきんな顔を向けられ、ちょっとふふっと笑いそうになったが我慢する。
「先輩」
「何だ」
「きっとその人達は先輩を狙っていますよ。プレゼント攻撃で凋落させようと画策しているのです。気を付けた方がいいですよ」
ひょっとこの顔を向け、リシェは「そんな馬鹿な」と返す。
「何でもお前基準で考えない方がいいぞ」
「いやいやいや…ここは男子校ですがね、分かりますよ。先輩は黙ってても人の目を惹きつけやすいんですから。きっと狙っています。俺には分かるんです。だから俺がこうして常に見張ってないと」
ぎりぎりと歯軋りしながらラスはリシェに訴える。
一方のリシェはお面を被ったまま、お前じゃあるまいしと突っぱねた。目の部分にちょうど穴が空いていて、お面のままでも周囲が良く見えた。
外さないという事は気に入ったようだ。
「俺、このままで食堂に行こうかな」
「やめて下さいよ…先輩、いつも無表情じゃないですか。いきなりそのお面を被ってみんなの前に出たら頭でも打ったのかと思われてしまいますって」
「うーん、そうか…」
冷静に突っ込まれ、リシェはかくりと肩を落とした。
「これ、どこに置こうかな。置く場所に悩むな」
リシェの専用の棚は置く場所があまり無かった。ラスは「そうですねぇ」と考える。
「あ、そうだ」
間を置き、ラスは顔を上げる。
「外に向けて窓に貼り付けるのってどうですか?カーテンレールから紐か何かで吊り下げるとか」
「ほう」
変質者防止にもなりそうですし、とニコニコしながら言う。
リシェはなるほど、と満更でもない様子でその提案を聞いた後、早速紐を取り出してお面の上部分に穴を開けてそれを通した。
「この部屋目がけて吹き矢を飛ばしてくるのも居ますからね」
稀に出現するスナイパーを思い出しながらラスはリシェからお面を受け取ると、早速カーテンレールに繋ぎ始める。多少は抑止になるはずだ。
外部から見ると、部屋にひょっとこの顔だけが浮かび上がって見えるという不気味な状況になった。それでもラスは満足げにうんうんと頷く。
「まあ、これでいいでしょう」
出来映えに満足し、そのままカーテンを閉めた。
晩ご飯を終え、湯を浴びた後それぞれ好きな時間を過ごしていると窓から異音が聞こえた。
ピス、ピスという窓に何かが貼り付く音。
ラスは読んでいた雑誌から顔を上げ、何だろうとカーテンを開く。
「うっわ!!」
異常な状況につい大声を上げてしまった。リシェはゲーム画面から現実に戻り、何だ?と眉を寄せる、
「こ、怖っ!!キモっ!!」
ラスはそう言いながらリシェに窓を見せると、彼もまた「うわ!」と悲鳴を上げる。
ちょうどひょっとこを吊り下げた部分目掛けて吸盤付きの吹き矢が数個刺さっていたのだ。よくまぁピンポイントで差し込めるなと感心する。
「何だこれ!」
「あの保健医ですよ…気持ち悪…」
窓を開けて吹き矢に括り付けていた手紙を開いた。
『顔が浮かび上がって怖いから吊り下げるのを今すぐやめて下さい』
手紙にはそう書かれている。ラスはぐしゃりとその手紙を捻り潰すと、リシェに「このお面ってどこのお祭りでしょうかね?」と笑顔で問う。
リシェはきょとんとした顔で首を傾げた。
「さぁ…何だ?欲しくなったのか?」
「ううん、どうせならいっぱい吊り下げてやろうかなーって思っただけですよぉ」
…怖いだって?それならめちゃくちゃ吊り下げてやろうじゃないか。
毎度ピンポイントでこちらに吹き矢を飛ばしてくる保健医の顔を思い出しながら、ラスは近場で開催されているイベントの検索を始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる