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そのななじゅうに
幸せそうで何より
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どうやらまた同級生から何かを貰ったらしい。
リシェは部屋のテーブルの上に上がっている黄色いトカゲのフィギュアをじっと見つめていた。
「先輩」
「ん?」
「それ、何で貰ったんですか?」
一番の疑問だったが、当の本人にも分からないらしく「さあ…?」と首を傾げていた。
「良くいろいろ貰ってきますけど」
「別に請求した訳じゃないぞ…くれるって言うから…」
貰っても何に使ったらいいのか分からないし、と言う。
確かに貰っても使い道が無い。精々部屋に飾る位しか思いつかない。
「同じ人から貰って来るんですか?もし同じ人ならきっと先輩に対するアピールだと思うんですけど…!そうなったら俺が前に出てお断りの返事をしてやろうかと!!」
ラスはそう言いながらギリギリと怒りを少しずつ放出してきた。
自分が居るのを大々的にアピールをしているにも関わらず、リシェにちょっかいを出してくるとは大した度胸だと言わんばかりに威嚇する。
しかしリシェは無表情でフィギュアを手に取ると「色んな奴が持って来る」と答えた。
「何かくれと言っている訳じゃないのにな」
「ええ…」
そんな不特定多数から貰って来るならどうしようも無いじゃないか、とラスは脱力した。
「アピールか何かだとは思うんですけど、それにしたって贈り物のチョイスがおかしく無いですか?」
「俺に言われても」
こんな分かりにくいやり方をするなら、普通に手紙の方がいいのにと思ってしまう。手紙なら差出人の名前だって把握出来るのに、こうも理解し難いプレゼントを与えられても反応し難いではないか。
ラスはリシェに隣に座ると、そのトカゲのフィギュアを手に取った。
「何してるんだ?」
上から下からと覗き込む彼に、リシェは怪訝そうな顔をする。
「盗聴器が仕込まれていないかと思って」
「何も無かったぞ。前みたいに貯金箱みたいな穴も無いし」
前は大量の包みが入っていたかと思っていたら、その先に豆が入っていた。どうやら今回は完全にフィギュアのようだ。
若干ソフトな手触り。
「それにしても何で毎回先輩に…ほんと、こういうのを送るなら手紙か何かにしてくれれば…」
「手紙なんか余計いらないぞ。それを貰って喜ぶ人間はスティレンしか居ないじゃないか…」
うーん、とフィギュアを眺めていた矢先、やはり扉が開かれた。いつものように姿を見せる生意気そうな顔の美少年。
「呼んだ?」
それに慣れ切ったようにリシェは「呼んでいない」と返した。
噂には敏感だねえ、とラスも慣れた様子で苦笑いする。
「ノックくらい出来ないのかお前は」
「そんなの、俺らの仲じゃない」
彼の手には数通の手紙らしき物が握られていた。
ラスは首を傾げながらスティレンに何それ?と問う。その瞬間、彼は満更でも無い顔をして「これぇ?」と何か得意げに言った。そして手紙をヒラヒラさせながら答える。
「ほら、俺って誰からも愛されるからさぁ…んっふ。ラブレターっていうの?毎回貰ってきちゃうんだよねえ…はぁ、愛されちゃって困っちゃうよ。やっぱり美し過ぎるっていうのも問題かなぁ」
その発言に、ラスはちらりとリシェを見る。
リシェもラスを見上げた。
「ほら」
そして小さな口を開くと、ラスに「言っただろう?」と言う。
「手紙を貰って喜んでいるだろう。相手がどうだろうが喜んでるって」
確かに。
だが、ここは男子校だ。
貰う事は確かに有難い。だが果たして貰う事に疑問は持たないのだろうか。
「何?何の話?」
話が見えない様子のスティレンはきょとんとした顔で二人を見回す。
ラスはにっこりと微笑むと、いいやと返した。
「スティレンが幸せそうで何よりだと思うよ」
彼がそう言うと、リシェも貰ったフィギュアを手にして無表情でこくこくと頷いていた。
リシェは部屋のテーブルの上に上がっている黄色いトカゲのフィギュアをじっと見つめていた。
「先輩」
「ん?」
「それ、何で貰ったんですか?」
一番の疑問だったが、当の本人にも分からないらしく「さあ…?」と首を傾げていた。
「良くいろいろ貰ってきますけど」
「別に請求した訳じゃないぞ…くれるって言うから…」
貰っても何に使ったらいいのか分からないし、と言う。
確かに貰っても使い道が無い。精々部屋に飾る位しか思いつかない。
「同じ人から貰って来るんですか?もし同じ人ならきっと先輩に対するアピールだと思うんですけど…!そうなったら俺が前に出てお断りの返事をしてやろうかと!!」
ラスはそう言いながらギリギリと怒りを少しずつ放出してきた。
自分が居るのを大々的にアピールをしているにも関わらず、リシェにちょっかいを出してくるとは大した度胸だと言わんばかりに威嚇する。
しかしリシェは無表情でフィギュアを手に取ると「色んな奴が持って来る」と答えた。
「何かくれと言っている訳じゃないのにな」
「ええ…」
そんな不特定多数から貰って来るならどうしようも無いじゃないか、とラスは脱力した。
「アピールか何かだとは思うんですけど、それにしたって贈り物のチョイスがおかしく無いですか?」
「俺に言われても」
こんな分かりにくいやり方をするなら、普通に手紙の方がいいのにと思ってしまう。手紙なら差出人の名前だって把握出来るのに、こうも理解し難いプレゼントを与えられても反応し難いではないか。
ラスはリシェに隣に座ると、そのトカゲのフィギュアを手に取った。
「何してるんだ?」
上から下からと覗き込む彼に、リシェは怪訝そうな顔をする。
「盗聴器が仕込まれていないかと思って」
「何も無かったぞ。前みたいに貯金箱みたいな穴も無いし」
前は大量の包みが入っていたかと思っていたら、その先に豆が入っていた。どうやら今回は完全にフィギュアのようだ。
若干ソフトな手触り。
「それにしても何で毎回先輩に…ほんと、こういうのを送るなら手紙か何かにしてくれれば…」
「手紙なんか余計いらないぞ。それを貰って喜ぶ人間はスティレンしか居ないじゃないか…」
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「呼んだ?」
それに慣れ切ったようにリシェは「呼んでいない」と返した。
噂には敏感だねえ、とラスも慣れた様子で苦笑いする。
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「ほら、俺って誰からも愛されるからさぁ…んっふ。ラブレターっていうの?毎回貰ってきちゃうんだよねえ…はぁ、愛されちゃって困っちゃうよ。やっぱり美し過ぎるっていうのも問題かなぁ」
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リシェもラスを見上げた。
「ほら」
そして小さな口を開くと、ラスに「言っただろう?」と言う。
「手紙を貰って喜んでいるだろう。相手がどうだろうが喜んでるって」
確かに。
だが、ここは男子校だ。
貰う事は確かに有難い。だが果たして貰う事に疑問は持たないのだろうか。
「何?何の話?」
話が見えない様子のスティレンはきょとんとした顔で二人を見回す。
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「スティレンが幸せそうで何よりだと思うよ」
彼がそう言うと、リシェも貰ったフィギュアを手にして無表情でこくこくと頷いていた。
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