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真・らぶ・CAL・てっと 五十六
しおりを挟むさて――
各々のその夜である。
留美は夜空を見上げ
「あの日の治クン、嬉しそうだったなあ……佑も果報者よね」
自分の恋人とその相手の美少年の様子を思い出してにこ、と微笑む。 あまり一般的な情景ではないそれは留美の心に癒しをもたらすかのようだ。
「でもユカってば」
窓を閉め、
「やっぱり誤解だと思うけど」
パジャマのまま、部屋の中を歩き回りながら
「……誤解だけに、治クンのこと理解して貰うのは難しいわよね」
理解されたらそれはかえってまずいような、まずくないような。
「よぉし、その時はあたしが一肌脱がなきゃ!」
輝明の妹分の面目躍如!とばかりにベッドの上に仁王立ちになった。
しかし
「でも」
と思い直した。
「明日になっても、由香はまだ怒ってるわよね」
もっともな推察である。
「佑には悪いけど、少し様子を見ようっと。 多分今のままじゃ話なんか聞いてくれなさそうだし」
枕を抱えるようにして思いを巡らす。
「下手に近づいてあたしも絶交されたら、仲直りなんか出来なくなるモンね」
どうやら、冷却期間をおいた方がいい、という結論に達したらしい。
「うん」
と頷いた留美は、睡魔に襲われたらしくそのまま俯せになって寝入っていった。
寝床の中の由香は、カッカカッカと燃えていた。
もちろん怒りで、である。
(留美を放っておいて後輩の男の子とキスなんて! 許さない! もう絶交なんだから! 留美が可哀想よ!)
義侠心と留美への愛から、留美の気持ちを知らないままに、見当違いな佑への腹立ちで眠れない由香なのだった。
当然、佑がそういうことをしそうもないタイプの草食系男子だということは、きれいさっぱり頭からは消えているのであった。
最近、部活に邁進していて佑と接する時間が短くなっていた為もあるのかも知れない。
悩める美少年は、当然悩んでいた。
「留美さん……いい人だよね、先輩の……彼女なんだもんね、当然だよね」
当然だからどうしたのか、ということが段々心に染みてくると、自分の恋心が『あきらめ』を告げるようだ。
「今度言おう! 『留美さんのこと好きでした』って」
それで、自分の気持ちにケリを付けよう……と、薄く涙ぐみながら照明を消して横になる治。
眠ってしまうのはなかなか難しそうだった。
そして肝心かなめの佑は、未だにグダグダであった。
布団に突っ伏してウダウダと言葉を洩らす。
「うん、いいんだよ……北条は元気になったんだし、可愛い後輩なんだし」
顔を上げるが、その目は何も見ていない。
平手ショックからの三連コンボ、とどめの一撃「絶交よっ!」はかなり効いたようである。
「でも、由香に……由香が……由香……」
治とのことに関して、佑は今更責任をとることを拒む卑怯者ではない。
しかし、そちらはそちらとして由香のことは未練たらたらなのであった。
たとえ再び恋愛関係に戻れなくても、せめて絶交だけは取り消してほしいという気持ちで一杯なのだ。
「由香への愛」は佑の数多いウィークポイントの中でも、最大級の部分であった。
佑も不死身ではなかったのだ……そんな状態でぐうぐう眠れるほどには。
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