4 / 52
真・らぶ・TRY・あんぐる 四
しおりを挟むしかし、それにしてもつらつら見るに対照的な二人である。
留美は、白いリボンでポニーテールにした髪型で、栗色よりは黒っぽいよう見える色だ。 ごく軽い巻き毛風なおくれ毛?を両耳の前からくるくる……ではなく『く~る~』と垂らしている。 端的に言えば、巻き毛というよりは『軽いクセっ毛』あるいは『長い猫っ毛』と表現したほうがいいだろうか。
2、3本くらいが軽く束になって螺旋状に上顎辺りまで垂れているのであった。
ここのところ、絵がないとわかってもらいづらい。
目は少し垂れて、トロンとした様子である。 そこがまた育ちの良さを感じると評判なのだった。
そして、由香はほぼ対極といった感じだった。
髪は少し長めのショートカット、髪の分け目からときおり額が覗くが、その位置は一定していないようだ。 つまり由香は直毛で、日頃、髪にはあまり構っていないのである。
目はキリリとして、いくぶんツリ目気味にも見える。 が、時折見せる笑顔に、佑は魅せられているのであった。
で、何故彼女たちがあの後、昼休みなどに佑をたずねてこなかったかというと……詳しい事情は後にゆずるが、簡単に言うとクラスメートへの対応に追われ、彼女たちも大変だったのだ。
ある意味、自業自得とも言えるが、よく考えたら由香にとってはトバッチリである。
佑が意を決して口を開く。
「留美さん」
その出端をくじくように留美がにこやかに訂正した。
「『留美ちゃん』、ね?」
「あ、その……留美ちゃん、僕のこと、知ってる……の?」
その問いに答える留美。
「えーとね、サイエンス・クラブの部員で、情報局の大部くんやアメージング・クラブの結城くんと仲がよくて、誕生日は六月二七日。 家族構成は、ご両親及び4つ離れた妹さん。 好きな食べ物はドリアで」
以下延々と5分間に及ぶ興信所の調査並みのプロフィールを述べられ、佑の顔からは血の気が引いていた。
「……ってくらいかな? これはユカちゃんが調べてくれたんだけど」
ありがとユカちゃん、と愛らしくニッコリ微笑むと由香が
「はいはい」
と軽く苦笑しながら応える。
佑の方は苦笑どころではなかった。
(『……ってくらいかな?』……じゃないよ……その量……)
それでもなんとか
「留美ちゃんの方は、それだけ知ってるのに……」
「ん?」
上目づかいになって先を促すように聞き返す留美。
「その……僕、留美ちゃんのことほとんど知らないから……」
「そうよね」
「え」
「佑クン、あたしのこと」
ふと由香に目をやり、軽く首をふって
「ううん、あたしたちのことあんまり知らないでしょ?」
留美や由香は佑と同じクラスではないので当然である。
もっとも世の中には、同じ学年の女子すべてのプロフィールを心得ている強者もいたりするから『絶対に』ではない。
とはいえ、佑はクラスメイトの女子のこともほとんど知らない。 性格的に、あまり他人のことを……特に女子のことを詮索しないのである。 例外的に由香のことは多少知っているが、それとて由香及び留美が知っている『佑のこと』の十数分の一の量なのだ。
「あたしたちだってそんなに佑クンのこと知らないし……」
少しうつむきながら言う留美。
さっきの『調査結果』を聞く限り、どこが『そんなに佑クンのこと知らない』のかまるっきり分からないが、恋する相手のことを何でも知りたいのが乙女心なのかもしれない。
「だからこれから知り合おうと思って」
そう言ってにっこり微笑む。
大体の男は、その可愛らしくあどけない笑顔に負けて交際を即承諾してしまうだろう。
しかし、佑にはそうするわけにはいかない理由があった。
困ったことに、冷たく断るわけにもいかない理由もあったのだ。
しかし、留美も由香もそんなことはまるで知らない。
「お互いのことを知らないから、知り合うために交際するんじゃない? つきあわずに相手を知る……なんて私立探偵の調査じゃないんだから」
充分それに近いくらい佑のことを知っている留美と由香である。
しかし、佑はそういう指摘が出来ない性格なのだ。 特に女性相手には。
「だいいち、よくよく知り合ってから交際が始まるのなら、援助交際って成り立たないモン。 違う?」
過激な台詞を聞いて、顔を真っ赤にする佑。
赤面した佑を見てにっこりと笑いながら、
「ね、佑クン? あたしは佑クンが好きになっちゃったの。 これは、もうどうしようもないことで、もしキライだって言われても、あたしは佑クンのことが好き」
そう告げた留美の表情は輝いていた。
「……でも、だからってあたしの気持ちを押しつける気はないけど、ね?」
そして、そう言った留美の微笑みは、少し淋しそうに見えた。
押しつけられているも同然の状況だが、留美も初めての告白なのでとても相手の心情を思いやる余裕はないのだ。
それに、今のところ彼女は自分の気持を伝えているだけで、強要をしているわけではない。
そして、真顔になり、佑の目をじっと見つめて
「だから、もしあたしを嫌いでないのなら付きあって下さい」
と留美は深々と頭を下げた。
ことここに至り、勘が鈍くて察しが悪く血の巡りが悪い佑にも、彼女こと水瀬瑠美が、真摯に、真面目に、真剣に告白してきたのが確信できた。
しかも彼女は、美人であるうえに気立てもいいというウワサなのだった。
……どこから流れてきたウワサなのかわからないのが困るのだが、ウワサというのは大体そういうものである。
そして無論のこと、佑は彼女のことが嫌いではない。 由香ほどに、ではないが好ましいと思っていたし、しかもこの十数分くらいの間にその『気立ての良さ』は単なるウワサではないことが裏付けられていたのだ。
『美人である』という部分も、こんなに至近距離で会話をしているのだから、完全に検証できていたのである。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
