『真・らぶ・TRY・あんぐる』

倉智せーぢ

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真・らぶ・TRY・あんぐる 四

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しかし、それにしてもつらつら見るに対照的な二人である。
留美は、白いリボンでポニーテールにした髪型で、栗色よりは黒っぽいよう見える色だ。 ごく軽い巻き毛風なおくれ毛?を両耳の前からくるくる……ではなく『く~る~』と垂らしている。 端的に言えば、巻き毛というよりは『軽いクセっ毛』あるいは『長い猫っ毛』と表現したほうがいいだろうか。
2、3本くらいが軽く束になって螺旋状らせんじょうに上顎辺りまで垂れているのであった。
ここのところ、絵がないとわかってもらいづらい。

目は少し垂れて、トロンとした様子である。 そこがまた育ちの良さを感じると評判なのだった。

そして、由香はほぼ対極といった感じだった。
髪は少し長めのショートカット、髪の分け目からときおり額が覗くが、その位置は一定していないようだ。 つまり由香は直毛で、日頃、髪にはあまり構っていないのである。
目はキリリとして、いくぶんツリ目気味にも見える。 が、時折見せる笑顔に、佑は魅せられているのであった。



で、何故彼女たちがあの後、昼休みなどに佑をたずねてこなかったかというと……詳しい事情は後にゆずるが、簡単に言うとクラスメートへの対応に追われ、彼女たちも大変だったのだ。
ある意味、自業自得とも言えるが、よく考えたら由香にとってはトバッチリである。


佑が意を決して口を開く。
「留美さん」
その出端でばなをくじくように留美がにこやかに訂正した。
「『留美ちゃん』、ね?」
「あ、その……留美ちゃん、僕のこと、知ってる……の?」
その問いに答える留美。
「えーとね、サイエンス・クラブの部員で、情報局の大部くんやアメージング・クラブの結城くんと仲がよくて、誕生日は六月二七日。 家族構成は、ご両親及び4つ離れた妹さん。 好きな食べ物はドリアで」
以下延々と5分間に及ぶ興信所の調査並みのプロフィールを述べられ、佑の顔からは血の気が引いていた。
「……ってくらいかな? これはユカちゃんが調べてくれたんだけど」
ありがとユカちゃん、と愛らしくニッコリ微笑むと由香が
「はいはい」
と軽く苦笑しながら応える。
佑の方は苦笑どころではなかった。
(『……ってくらいかな?』……じゃないよ……その量……)
それでもなんとか
「留美ちゃんの方は、それだけ知ってるのに……」
「ん?」
上目づかいになって先を促すように聞き返す留美。
「その……僕、留美ちゃんのことほとんど知らないから……」
「そうよね」
「え」
「佑クン、あたしのこと」
ふと由香に目をやり、軽く首をふって
「ううん、あたしたちのことあんまり知らないでしょ?」
留美や由香は佑と同じクラスではないので当然である。
もっとも世の中には、同じ学年の女子すべてのプロフィールを心得ている強者つわものもいたりするから『絶対に』ではない。
とはいえ、佑はクラスメイトの女子のこともほとんど知らない。 性格的に、あまり他人のことを……特に女子のことを詮索しないのである。 例外的に由香のことは多少知っているが、それとて由香及び留美が知っている『佑のこと』の十数分の一の量なのだ。
「あたしたちだってそんなに佑クンのこと知らないし……」
少しうつむきながら言う留美。
さっきの『調査結果』を聞く限り、どこが『そんなに佑クンのこと知らない』のかまるっきり分からないが、恋する相手のことを何でも知りたいのが乙女心なのかもしれない。
「だからこれから知り合おうと思って」
そう言ってにっこり微笑む。
大体の男は、その可愛らしくあどけない笑顔に負けて交際を即承諾しょうだくしてしまうだろう。
しかし、佑にはそうするわけにはいかない理由があった。
困ったことに、冷たく断るわけにもいかない理由もあったのだ。
しかし、留美も由香もそんなことはまるで知らない。
「お互いのことを知らないから、知り合うために交際するんじゃない? つきあわずに相手を知る……なんて私立探偵の調査じゃないんだから」
充分それに近いくらい佑のことを知っている留美と由香である。
しかし、佑はそういう指摘が出来ない性格なのだ。 特に女性相手には。
「だいいち、よくよく知り合ってから交際が始まるのなら、援助交際エンコーって成り立たないモン。 違う?」
過激な台詞を聞いて、顔を真っ赤にする佑。
赤面した佑を見てにっこりと笑いながら、
「ね、佑クン? あたしは佑クンが好きになっちゃったの。 これは、もうどうしようもないことで、もしキライだって言われても、あたしは佑クンのことが好き」
そう告げた留美の表情は輝いていた。
「……でも、だからってあたしの気持ちを押しつける気はないけど、ね?」
そして、そう言った留美の微笑みは、少し淋しそうに見えた。

押しつけられているも同然の状況だが、留美も初めての告白なのでとても相手の心情を思いやる余裕はないのだ。
それに、今のところ彼女は自分の気持を伝えているだけで、強要をしているわけではない。
そして、真顔になり、佑の目をじっと見つめて
「だから、もしあたしを嫌いでないのなら付きあって下さい」
と留美は深々と頭を下げた。
ことここに至り、勘が鈍くて察しが悪く血の巡りが悪い佑にも、彼女こと水瀬瑠美が、真摯しんしに、真面目に、真剣に告白してきたのが確信できた。

しかも彼女は、美人であるうえに気立てもいいというウワサなのだった。
……どこから流れてきたウワサなのかわからないのが困るのだが、ウワサというのは大体そういうものである。

そして無論のこと、佑は彼女のことが嫌いではない。 由香ほどに、ではないが好ましいと思っていたし、しかもこの十数分くらいの間にその『気立ての良さ』は単なるウワサではないことが裏付けられていたのだ。

『美人である』という部分も、こんなに至近距離で会話をしているのだから、完全に検証できていたのである。

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