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真・らぶ・TRY・あんぐる 二十九
しおりを挟む傍から見ると、暢気で平和なこの学園にも不良学生はいる。
かなり自由な校風なので仕方がない部分もあるのだが、生徒会が人呼んで『弱小生徒会』と異名をとるような存在感なのも多分にあった。
その影響で弱気な風紀委員を舐めきったり、しかも情報局のことを理解していない世間知らずがいるのである。
ある意味『命知らず』と言い換えてもいい。
この学校では体育会系よりも文化部系の方が、場合によってはよっぽど恐ろしいというのを理解していない生徒がごく一部にいる、というわけだ。
そういうのの大体は、小・中と他の学校で高等部から編入した連中だった。
来るもの拒まず的な学校側の姿勢のためもあるのだろう。
そしてそんな中にも留美のファンはおり、その連中は今現在トサカにきていた。
1年A組委員長が留美が
「自ら男にしなだれかかるような奔放な女だった」
とそう報告したのだ。
念のために言っておくがそれは悪意に満ち充ちた中傷以外の何ものでもない。 留美はあれで純愛をしているつもりなのだから。
1年A組委員長こと鷹栖川がそんなことを不良たちに言ったのは、他でもない嫉妬の故である。
だがその口車にあっさり乗った不良4人組は
「やっちまうか?」
と口々にいった。
留美を襲おうというのである。
『堕ちた偶像』と化した(勝手に持ち上げて勝手に堕としたのだが)留美などそこいらの女となんの変わりもない。 今まで理想の美少女と奉ってきたのがバカに思える。
可愛さ余って憎さ百倍を地でいった、というわけである。。
はっきり言って逆恨み以外のなにものでもないが、留美の行動にも問題なしとは言い難い。
積極的と言えば積極的すぎで、大胆と言えばかなり大胆だからである。
とは言っても別にその連中の計画を正当なものと言うつもりは全くない。
ただ、留美の行為が学校内でおこなうこととしてはかなり問題があったのは事実であり、そのためいらない刺戟を与えてしまったのもそうであった。
ちなみに『襲う』と言っても殴る蹴るをしようというのではない。
まるっきりしないかといえばそうではないかもしれないのだが、それが目的ではない。
詳しく説明や描写をするのは、この話の本筋でもないし、主旨でもないし、下手をするとヒカれると思うのでちょっと避けたい。
あえて表現するなら
「自分がされて最も嫌なことを無理矢理にされてしまう」
ということだと言っておこう。
襲撃者達にとって少々誤算だったことに、下校の際、留美は一人ではなかった。
佑とそれから由香も一緒だったのだ。
だが4人組は佑のことを
「校内でも有名な腰抜けだ」
と高をくくっていた。
その意気地無しに女がひとり加わったところでどうなるものでもない、とも。
「待ちな!」
と佑たち三人を呼び止める。
「な、ななな、なんですか」
佑の声は震えていた。 あからさまに『不良でございます』と言わんばかりの風貌であるから無理もない。
「お前なんかにゃ用はねえよ。 さっさといっちまいな」
そう言いながら顎をしゃくった。
しばらくしても佑がそのままでいたので4人組は少々驚いたらしい。
「へぇえ? こいつ逃げねえぜ、ヘタレのくせに?」
そう言って笑いあう。
どうやら佑が二人をおいて我先に逃げ出すと思っていたらしい。
佑の情けなさといったら確かにひととおりではないから、不良どもがそう思うのは当然かもしれない。
だがたとえ人後に落ちないヘタレでも、どんなに気が弱かろうとも、佑は卑怯者ではない。
勝てないまでも、二人を守る!と決意していたのだ。
腕には自信がないのを通り越してマイナスの自信があるというのに……健気である。
「こいつ震えてやがるぜ」
そいつが言うように佑の身はすくみ、脚はガクガク震えていた。
が、数を頼み、なおかつか弱い女の子を襲おうかというような連中よりは遥かにマシである。
「こんなヘタレ、そろそろ愛想もつきただろ?」
へらへら笑いながらそんなことをいう相手に、留美は毅然と
「佑クンの方があなたたちより千倍も1万倍も……ううん! 千億倍も素敵よ!」
可憐な美少女にそんなことを言われて男たちは激昂した。
「言わせておきゃいい気になりやがって!」
いい気になっていい程言ってるのはお前らの方だろう。
もっとも、そういう『下衆』だからそんな計画を立てるのだろうが。
ギャラリーがいたとするなら、そういう評を下すと思われる。
「ちょっとカワイイからってちやほやしてやりゃつけあがってやがるぜ、このメス!」
ちやほやしたのはその連中の勝手だし、留美はつけあがっているわけでも何でもない。
更に『メス』と来た。
実にボキャブラリーの貧困な連中である。
「ちょっと思い知らせる必要があるな……こいつ!」
頭の中身も負けず劣らず貧困らしく、グループのリーダーらしき男が恥知らずにもか弱い女の子である留美にむかってビンタをくわせようとした。
だが、幸いにもその掌が留美に当たる事はなかった。
佑が身を挺して留美をかばったのである。
「きゃっ、佑クン!?」
佑の鼻からは鮮血が吹きだした。 それを拭い、
「お、女の子に手を出すな……殴るなら僕を……」
何度も言うが、佑は腕っぷしにはまるで自信がないのである。
自信がないのみならず、事実、ケンカもからっきしなのであった。
「佑くん!」
「佑クン!」
「この野郎! 望みどおりにしてやるぜ!」
かくて、佑は全身血だらけになり、ボコボコにされた。
一人には足蹴にされ、一人には腕を逆手に取られ、一人にはサンドバッグよろしく断続的に殴られ、次の奴にはパンチングボールがわりに連続してパンチを受けさせられたのである。
とうとう我慢しきれなくなった由香は、倒れた佑をかばうようにその男の前に立ちはだかった。
「あんたたちそれでも男なの!? たった一人によってたかって……」
しかし、佑はふらふらと立ち上がり、そんな由香を背にかばうように
「い、いんだ……由香ちゃん……ぼ、くで済むなら……」
「このバカヘタレが! 済むわけねえだろ!」
男の手が伸びてくるのを由香と佑は必死ではねのけた。
特に由香の方では服部数三から習った身のこなしが思わぬところで役だったようであった。
「こ、こいつら」
そうして一瞬、男たちはひるんだ。
由香の身のこなしと、佑の、血を流しながらもそれでも抵抗の止まない予想外の頑丈さとにだった。
その隙に留美に声をかける。
「留美! 誰か呼んできて!! 早く!」
「うん!」
留美は必死で走りだした。
そして彼女は結構足が早かったのだ。
だから由香は自分自身で、ではなく留美に行かせたのだと佑は頭の隅で理解した。
それを思い出したのはだいぶ後だったが。
更に、二人が――主に佑が身を挺して阻止したため、暴漢たちは留美の後を追えなかった。
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