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真・らぶ・TRY・あんぐる 二十八
しおりを挟む「る、留美!」
「え、ユカちゃん、どうしたのそんなに興奮して?」
「あ、あああ」
どう堪えても声が震える。
「あたし」
そこまで言って一旦止まる。 更になけなしの勇気を無理矢理絞りだすかのように続けた。
「留美が好き」
「ん、あたしも好きよユカちゃんのこと」
無邪気な笑顔でそう答える留美。 心臓の鼓動が胸の奥から本当の気持ちを吐き出すのを急かすように早くなり、そして由香はとうとう言った。
「違うの! 恋愛の相手として好きなの! 留美のことが!」
こうして由香は佑に先んじて、自分の愛する相手に気持ちを伝えるのに成功したのである。
本人にとってはある意味、伝えてしまった、だったかもしれない。
由香は泣き出していた。
留美が冷たかったからではない。 まるっきりその逆だ。
彼女はこう言ったのである。
「うん、ありがとうねユカちゃん」
その言葉を聞き、意味が胸に沁み通ったとき、由香の両眼からは汲めども尽きぬ泉のように涙が湧き出してしまっていた。
「どうしたの? どこか痛いの?」
ある意味、胸が痛い。 でもそれはさっきまでだ。
「留美、違うの。 嬉しくて」
「そういうこと、本当にあるんだね」
こんな自分にまだあどけなく話しかけてくれる留美。 それでも確かめるように訊いてしまう自分をひどく卑小に感じた。
「あたしのこと、気持ち悪くない?」
「どうしてあたしがユカちゃんのこと気持ち悪いなんて思わなきゃいけないの?」
上目づかいで愛らしく拗ねたように問い返す留美。 由香は留美に接吻したい誘惑に打ち克つのに苦労した。
「だって、女同士だから」
涙声でそう訴える由香。 留美は怒ったように言った。 本当に怒っていたのかもしれなかった。
「女同士は好きになっちゃいけないの?」
そう言われ、由香は言葉が出なかった。
それでも、あるがまま、ただ自分の気持ちを受け止めてくれた留美を、そして彼女を好きになった自分を、あらためて誇りに思った。
「留美……る、み……」
覆い被さるように抱きついてくる由香の背中を留美は優しく愛撫していた。 まるで赤ん坊をあやすかのように。
それ以来、『ツクン』はやって来なくなった。
そのことに気づいた由香は、父・真澄が偉大な聖職者であるのをつくづく思い知った。 牧師と俳優の二足の草鞋を履いているのに、更にどちらにも多くのファンを持ちながら、ただの一度もスキャンダルを起こした事もなければ巻き込まれた事すらない。
彼は今でも亡き妻に愛を捧げているのだ。
そのことにも思い至り、由香は深い感動に包まれていた。
(あたし……パパとママの……愛の結晶なんだよ、ね?)
真澄も、そして亡き母・由子もそれには揃って頷くに違いなかった。
留美を好きだと言う気持ちは消えていない。
それどころか、由香の心の中では留美の存在がもっと大きくなっている。
でも、もう佑に対する無用の嫉妬を抱いてはいなかった。
とにもかくにも彼女は自分の告白を真剣にそして真摯に受けとめてくれたのだから。
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