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真・らぶ・TRY・あんぐる 四十八
しおりを挟む留美が由香に耳打ちをする。
そして、二人は入り口の前に陣取って少しの間相談をしていたが、うってかわって静かな声でニッコリと微笑んだ由香が
「佑の言いたいことはわかったわ」
次に留美が
「じゃ、今度はあたしたちの話を聞いてくれるよね?」
このセリフ、この状況で、ニコニコと笑っている二人を見て少しホッとするのだから、ほとほとカンのニブい男子であった。
あらためて居住まいを正した留美と由香は、佑に向かって交互に話しはじめた。
「あたし達は、佑としたい、と思ってるのよ」
「それが『ソノ気になってる』ってことで。 佑言ったよね? 『わかってる』って」
「なのに、あたし達の意志を無視して帰るって、とても酷いとは思わないの?」
「残酷だよ、佑……」
留美が上目づかいになり、涙を浮かべて佑の顔をじっと見る。
「あたしと留美だけでシちゃってもいいんだけど、それじゃ今度は佑を仲間はずれにしてることにならない?」
あたしとしちゃまずはそれでもいいけどね、と心の中で呟いて由香は続けた。
「いつになったら『早過ぎない』のか、いつになったら『心の準備ができる』のか、ちゃんと明確な時期を言える?」
言える筈がない。
『早過ぎる』とか『心の準備』とかいうのは、一時しのぎの決まり文句にすぎないのだから。
「せ、性欲に流されるのはあんまり」
それでもなんとか言い訳を考えついたが、あっさりと
「なに言ってるの、佑! どうして、性欲は愛じゃないなんて思うの?」
と切り返された。
「確かに『与える愛』は性欲じゃないけど、『奪う愛』は性欲じゃないっていう保証はないでしょう?」
留美の影響か、それとも本性が現れたのか、過激な論理を展開する由香。
彼女が留美と相談していたのはいいとこ3分くらいのものなので、そんなに詳しい打合わせができたとは考えづらい。
「そして『奪われたい』って思ってる相手なら、それも本望、なんじゃない?」
というわけで、これらは『由香自身のなかから出た言葉』と考えていいだろう。
「で、あたしたちは佑に『奪われたい』って思ってるモン。 ね、ユカ?」
「そうよ、その通りよ」
大劣勢になっている佑は頭を抱えんばかりだ。
こんな劣勢なら是非なりたいのが一般男性かもしれないが。
「佑は、あたしと留美が好きなんでしょう?」
「そ、そりゃそうだけど」
「だったら奪って」
由香に迫られ、後ずさりしつつも無駄な反論を試みる。
「でも」
「でも、なあに?」
「ふたりとも、もっと自分を大事に」
「あら」
またもや出た、いかにも『紋切り型』を絵に描いたような口上に、からかうような口調で返す由香。
「『大事』ってつまりどういうこと?」
その切り返しには、一言もない佑。
「あたしたち自分を大事にしてるよ? ね、ユカ?」
「そうよ、留美の言う通り。 佑はどうしてあたし達が自分を大事にしてないって思うの?」
「そ」
常套句で切り抜けようとしていた佑は『それは』すらも言えなかった。
彼自身も実感として『彼女たちが自分を大事にしていない』などと思っていないのだから当然である。
「いい、佑? ここに茶碗があったとして、その茶碗にとっては『しまい込んで使わない』のが大事にしていることだと思う? それとも『慈しんで使う』のが大事にしていることだと思う? どっち?」
明らかに誘導尋問である。
それにバカ正直に答えるのだから、バカなのか人がいいのか、あるいは両方か……。
「しまい込んで使わないのは茶碗の意味がないから、やっぱり慈しんで使うのが大事にしてることだと思う」
「女の子だってそうよ」
「え」
思ってもいないことを言われ、いくらか思考停止に陥る佑。
「女の子だって、好きな人にシてもらわなきゃ本当には大事にしてもらってないのよ」
留美の考えだとありありとわかる内容が、由香の口から紡ぎだされる。
「で、あらためて訊くね? 佑はあたしたちを大事にしてくれるの? してくれないの?」
「そ、そ、そ」
「それは?」
由香が促すが、彼は絶句したままだった。
何かを言えば墓穴を掘りそうな気がしてどうにもこうにもならなかったのである。
数秒の沈黙ののち、留美が言った。
「佑があたしたちを『大事にして』くれないなら、あたしたちの方で佑を『大事にしちゃう』よ?」
彼女の意見は極端なので参考にしてはいけない。
ともあれ、佑は陥落寸前であった。
(由香と留美のふたりに……されるなんて……男としてはそれだけは避けたい……)
そうは言ってもどうしたものやら、佑にはまだ踏ん切りが付かない。
あれこれ迷っている佑に対し、留美は前から、そして由香は後ろから佑の身体を柔らかに抱きしめた。
そのふんわりとしたふくよかなバストを、彼の前後から触れさせ、互いに体温を感じ合う。
「佑……大好き」
「好きよ、佑」
耳元で囁かれて、弱気の虫を一時的に追いやり覚悟の決まる佑。
『北風と太陽』の譬えどおり、強引な行為よりこっちの方が佑には効いたのだった。
「由香……留美……ごめん……する、よ?」
「うん」
「して、佑」
ふたりは制服の前をはだけ、体を佑にゆだねていった。
いくら天下御免の草食系男子とはいえ、佑も年頃で健康なオトコノコである。
まるっきり性欲がないといえばウソになる。
やっと、というかおずおず、というかとにかく、亀の歩みのごとく遅々としてでも、ようやく佑の方から二人に愛撫をしはじめた。
今まで散々苦労した留美には感慨無量だったことだろうが、由香も由香で陶酔していた。
そして佑の手が触れるたびに彼女らは、心からの歓喜に涙を流していた。
佑にテクニックがあったのではない。 たぶん、焦らしに焦らされたせいだろう。
それもひとつのテクニックといえるかもしれないが、彼はそういう類いの知識は全然まるっきり本当に知らない。
それに、つい今さっきまでは本気で逃げ腰だったのだ。
そして、ふたりはただ愛撫を受けていたわけではなく、お互いに、そして佑にも愛撫をおくっていた。
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