『真・らぶ・TRY・あんぐる』

倉智せーぢ

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真・らぶ・TRY・あんぐる 四十七

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はたから見るなら、どう考えても留美に乗せられている二人なのだが、物事の渦中にいる相手に『自分を客観視しろ』といっても実行はなかなか難しい。 それに実際のところ留美本人も二人を扇動しているつもりなどないのだからどうにもしようがない。
なんだかんだでなしくずしに三人での男女々交際が始まるのだったが、由香はともかく佑は留美の主張に心から賛同しているわけではなかった。 まだまだ覚悟が足りなかったのである。
「でも」
突然難しい顔になった佑を見て、留美が首を傾げる。
「でも、何?」
「『三人で仲良く』なんてこと、うまくいくかどうか」
「だからよ」
今度は由香がきっぱりと言った。
「え」
「だから、あたしたちでやってみましょ?」
由香の言葉をひきとった留美、更に続ける由香。
「そうなのよね、何だかんだ言ってるだけより、実際にやってみる方がよっぽど建設的だっていうの。 そうでしょ、佑?」
ついに由香にまでそんなことを言い出されて、佑はとうとう観念した。
「わ、わかった……それじゃあらためて」
姿勢を正した佑は
「由香、留美、これから仲良くお付き合いして下さい」
そういって深々と頭を下げた。
「佑、こちらこそ」
鈴の転がるようなソプラノの留美、そして少しテノールがかったアルトの由香。 ふたりの返事がハーモニーを奏でるように佑の耳に響く。
そして佑は微笑んだ。 それは由香はもちろん留美でさえ初めて見る笑みで、普段の佑からはとても信じられないくらいに魅力的だった。 どのように魅力的だったかはこの際追及しない。
そして佑は、相次いでふたりの唇に軽い接吻をおくったかと思うと
「それじゃ僕これで」
帰ろうと上着を抱えて立ち上がる。
いいかげんにしろ、と誰もが思うであろう。
純で、奥手で、草食系男子なのにも程がある。
「佑、待ってよ」
由香がひきとめる。
当たり前のことだ。
「まさか『好き』だの『愛してる』だのだけで帰れると思ってないでしょう?」
「え」
もちろん彼はそう思っていたのである。
由香が怖い顔で
「ちょっとここへ座って」
と彼女の前の床をトントンとつつく。
「は、はい」
おそるおそる由香と留美の前へ正座する佑。
「佑って何を考えてるの?」
「な、なんのこと?」
小さくなりながら尋ね返す。 『質問に質問で返さない!』と言いたいところであるが、場合が場合なので由香はそんなことを言わない。
「あのね、佑? 女の子二人がソノ気になってるのよ!」
「まあそれはよくわかってるけど」
その発言がどういう意味を持つのかをまるっきり理解していない佑に、彼女は我知らず大声をあげてしまった。
「わかってない! 全然わかってなあいっ!」
両手で床を叩かんばかりの由香の剣幕に、佑は正座したまま跳ね上がりそうだった。
「女の子からこんなこと言い出すなんてはしたないとか、慎みがないとか思われるかも知れないけど」
怒りのためか羞恥のためかはわからないが、真っ赤になって更に続ける。
「あたしだって留美だって、は、恥ずかしいけど、ぬ」
「ぬ?」
ついつい聞き返す佑。 それは明々白々にヤブヘビである。
「濡れちゃってるんだからっ!」
「わ、ユカって過激っ」
由香がそんな猛烈なことを言ったことに留美は体を火照らせつつもびっくりした。 佑は佑で愛する彼女の発した強烈な単語についつい後ずさってしまう。
「ゆ、由香……声が大き」
明確に由香の声量はせり上がっていたが、留美の部屋は防音なので近所迷惑にはならない。
「まだまだあ! 佑! 別にEDじゃないんでしょうが!」
「お、女の子の言うセリフじゃないと思う」
よせばいいのに火に油を注ぐことを言った佑に反駁する由香。
「誰が言わせてるの誰が! 佑がこんなになっても手を出してくれないからでしょっ!」
だが、問答無用の草食系男子・佑にそんなことを言ってもはじまらない。
しかし、事ここに至っても行動を起こさない佑に由香は完全にキレた。 そして自分から行動を起こしたのだ。
そう、焦れに焦れ、完全に頭に血がのぼった由香は、佑の腕をつかむといきなり自分の胸に押し当てていったのだった。
「ゆゆゆ由香」
かつての佑ならもう気絶している。 それが吃るくらいで済んでいるのだから進歩したものだ。
「もっとしようか?」
目がすわっている。
(お、女の子ってこわい……)
あらためてそう思ったが、それでも由香を嫌いになる事などできない。
「あん、ユカばっかりずるぅい!」
今度は留美が左手をつかみ、下着を付けていない××へ押し当てると佑は狼狽の極致に達した。
「な」
絶句した佑に甘えるような声で
「ね、あたしだってこんなに」
と迫る留美。 と、その時
「留美」
由香が留美を引き寄せ
「んっ? んーんんんっ」
ディープキスをかました。 結果、姿勢の関係で佑の右腕はより強く押し当てられる。
いくらか留美よりもボリュームに欠けるとはいえ、最愛の女の子のその柔らかさが引き金となり、ついに佑のアタマにも血がのぼった。 自分の方から由香そして留美の順で次々と、平均一分間に及ぶディープキスを敢行したのだ。


だが、留美も由香も佑の性格を甘く見ていた。 まことに遺憾かつ驚くべきことにその時点で佑の方から行動を起こしたのはただそれ止まりだったのだから。
こんな事態になったのにそれだけとは、天下無敵の草食系男子・育嶋佑の真骨頂と申さねばなるまい。
が、興奮冷めやらぬというか、それとも火に油を注がれたというか、である状態の二人の方は当然それでおさまるはずがなかった。
「罪よ! 佑?」
「そうよ、佑!?」
「で、でもまだ僕たちには早過ぎると思うし」
だんだん声が小さくなっていく。
『自信がついた、もしくはキレた』という前言を撤回しよう。
佑はやはり佑であった。
「それに僕まだ心の準備が」
あんたは一体どこの乙女だ、と由香が突っ込まなかったのは奇跡に近い。

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