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第2章:第二学院創設編
第23話:最強賢者は任せる
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当たり前ではあるが、王都にはたくさんの人が集まる。住民だけでなく、商人や冒険者、果ては浮浪者なども行き交っている。
そんな街には、自然に商店が並ぶようになる。
俺がゲームの中でプレイヤーとして遊んでいた時は、NPCだけじゃなく各々のプレイヤーが露店を開いて物の販売や買取をしていたものだ。
流れるようにシャウトが飛び交っていたパソコンの画面を嫌でも思い出す。
この世界でもたくさんの商店と露店が並び、叫んでいる者がいる。俺は十五年ぶりに見たこの光景に懐かしさを覚えていた。
「どうしたの? なんか遠い目をして」
リーナの声で飛びそうになっていた意識が戻る。
「いや、なんでもないよ。ちょっと懐かしいなって思っただけでさ」
「王都に来たのって入学試験の時が初めてだったんじゃ?」
「ああ、そうなんだがちょっと似た景色を見たことがあってな」
「ふうん」
そう、ここはゲームではない。いくら懐かしくても、ここはゲームじゃない。現実だ。
「……しかしよく考えればティアナを魔改造するとは言ったものの、どこに行けばいいのかわからないな」
「あっそれなら私良い床屋さん知ってるよ」
「おお! それは助かる」
リーナの案内で商店街から少し離れた小さな路地に入った。
「こんなところに店があるのか?」
「うん、地味な店だけどね」
そのまま進んでいくと、一軒の古びた建物があった。扉には『OPEN』と書いてあるので、営業はしているみたいだが、それでも潰れているんじゃないかと心配になる。
今日お世話になるのはティアナだけなので、俺とリーナだけでティアナを連れていくことにした。
エリス、レム、アミの三人には待機してもらう。
木製の扉を開けると、一人の年配の女性が暇そうに新聞を読んでいる姿が飛び込んできた。多分この人が店主なのだろう。
「ごめんくださ~い お久しぶりです」
リーナが挨拶をすると、店主の女性は新聞をその場にポンと置いて振り向いた。
「あらっ、リーナちゃんじゃないの!」
「知り合いなのか?」
リーナは俺と同じで、王都育ちというわけではないはずだ。それなのに、店主の態度は二度目や三度目のお客さんへの対応ではない。
「うん。レイラおばさんは私のお母さんの妹なの。先月に王都に来たんだって!」
先月て。
その割には建物がかなりボロいような気がするのだが……。
「この物件が空いたおかげで店を開けたようなものなのよ。王都の地価は高すぎてとてもじゃないけど新築は……」
「色々と事情があるんだな……」
と、この辺で本題に入ろうか。
「まあそんなリーナの紹介なんですけど、この子をめちゃくちゃ可愛くしてやってほしいんです」
後ろに隠れていたティアナを、レイラさんに見せる。
レイラさんはジーとティアナを観察して、正面、横、後ろなど、くまなく調べている。
調べ終わると、レイラさんは熱の籠った目でティアナを眺めた。
「これは絶対に可愛くなるわ……!」
力強い一言。
俺とリーナはほっと胸を撫で下ろした。
「では、よろしくお願いします」
「ええ、任せて。ただ、色々と弄りたいから二時間くらいかかってしまうんだけれど……」
「外に待たせている仲間がいるので、俺たちは終わった頃に戻ります」
ティアナのことはレイラさんに任せ、俺たちは建物の外に出た。
「待たせたな。ティアナは二時間くらいかかるみたいだからその間になにかできることがあればいいんだが、どこか周るか?」
「周るといってもあんまりお金は使えないですし……その辺を適当に散歩するに一票ですっ」
レムの主張はまったく女の子らしからぬものだった。普通はウィンドウショッピングをしたいとか言うものなのだろうが……贅沢を知らないのかもしれない。
「えーと、どうする?」
エリスを見た。
「わ、私!? えっとまぁ……金欠だし散歩に一票」
「アミも散歩」
「なんかみんな賛成してるし私も」
「あ、じゃあ俺も」
二時間の待ち時間は、全員一致の平和的解決によりその辺を適当に散歩することになった。
そんな街には、自然に商店が並ぶようになる。
俺がゲームの中でプレイヤーとして遊んでいた時は、NPCだけじゃなく各々のプレイヤーが露店を開いて物の販売や買取をしていたものだ。
流れるようにシャウトが飛び交っていたパソコンの画面を嫌でも思い出す。
この世界でもたくさんの商店と露店が並び、叫んでいる者がいる。俺は十五年ぶりに見たこの光景に懐かしさを覚えていた。
「どうしたの? なんか遠い目をして」
リーナの声で飛びそうになっていた意識が戻る。
「いや、なんでもないよ。ちょっと懐かしいなって思っただけでさ」
「王都に来たのって入学試験の時が初めてだったんじゃ?」
「ああ、そうなんだがちょっと似た景色を見たことがあってな」
「ふうん」
そう、ここはゲームではない。いくら懐かしくても、ここはゲームじゃない。現実だ。
「……しかしよく考えればティアナを魔改造するとは言ったものの、どこに行けばいいのかわからないな」
「あっそれなら私良い床屋さん知ってるよ」
「おお! それは助かる」
リーナの案内で商店街から少し離れた小さな路地に入った。
「こんなところに店があるのか?」
「うん、地味な店だけどね」
そのまま進んでいくと、一軒の古びた建物があった。扉には『OPEN』と書いてあるので、営業はしているみたいだが、それでも潰れているんじゃないかと心配になる。
今日お世話になるのはティアナだけなので、俺とリーナだけでティアナを連れていくことにした。
エリス、レム、アミの三人には待機してもらう。
木製の扉を開けると、一人の年配の女性が暇そうに新聞を読んでいる姿が飛び込んできた。多分この人が店主なのだろう。
「ごめんくださ~い お久しぶりです」
リーナが挨拶をすると、店主の女性は新聞をその場にポンと置いて振り向いた。
「あらっ、リーナちゃんじゃないの!」
「知り合いなのか?」
リーナは俺と同じで、王都育ちというわけではないはずだ。それなのに、店主の態度は二度目や三度目のお客さんへの対応ではない。
「うん。レイラおばさんは私のお母さんの妹なの。先月に王都に来たんだって!」
先月て。
その割には建物がかなりボロいような気がするのだが……。
「この物件が空いたおかげで店を開けたようなものなのよ。王都の地価は高すぎてとてもじゃないけど新築は……」
「色々と事情があるんだな……」
と、この辺で本題に入ろうか。
「まあそんなリーナの紹介なんですけど、この子をめちゃくちゃ可愛くしてやってほしいんです」
後ろに隠れていたティアナを、レイラさんに見せる。
レイラさんはジーとティアナを観察して、正面、横、後ろなど、くまなく調べている。
調べ終わると、レイラさんは熱の籠った目でティアナを眺めた。
「これは絶対に可愛くなるわ……!」
力強い一言。
俺とリーナはほっと胸を撫で下ろした。
「では、よろしくお願いします」
「ええ、任せて。ただ、色々と弄りたいから二時間くらいかかってしまうんだけれど……」
「外に待たせている仲間がいるので、俺たちは終わった頃に戻ります」
ティアナのことはレイラさんに任せ、俺たちは建物の外に出た。
「待たせたな。ティアナは二時間くらいかかるみたいだからその間になにかできることがあればいいんだが、どこか周るか?」
「周るといってもあんまりお金は使えないですし……その辺を適当に散歩するに一票ですっ」
レムの主張はまったく女の子らしからぬものだった。普通はウィンドウショッピングをしたいとか言うものなのだろうが……贅沢を知らないのかもしれない。
「えーと、どうする?」
エリスを見た。
「わ、私!? えっとまぁ……金欠だし散歩に一票」
「アミも散歩」
「なんかみんな賛成してるし私も」
「あ、じゃあ俺も」
二時間の待ち時間は、全員一致の平和的解決によりその辺を適当に散歩することになった。
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