4M のメモリー 16 完

asabato

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行き場のない感情を知った 16

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 私よりも可愛く綺麗に化けてるから気が付かない。先輩は千春を見て会釈するだけで何も言わなかった「先輩は何でここに?」と、話題を変えていた。

「あ、そうか知らなかった?私はここが地元なのよ」

紙袋が膨らむほどの荷物を持って「池田さんたちは?・・」

「夕飯を食べに行くとことです」

「へぇ~じゃ、美味しいお店紹介するよ。一緒に食べようか?」
  
「あ!予約してあるのよ」

「そうか、じゃ明日会社で会いましょう」 

バレなくて助かったと感謝した女装の成瀬。何しろ緊張感が無くなると、女を忘れ大口でムシャムシャ食べる癖があるから、すぐ男と分かってしまうのだ。

女性らしく食べるのは苦手らしくて「可愛く食べるのはムリ」そう話していたので、食事の話が先輩から出たときは誤魔化して断るしかなかった。

先輩はこの駅から通勤していると思うと、ここで一緒に乗降するのは注意することになり「マンションに泊まるなら別行動だね」と、秘密めいてしまう。

2人が食事をしてマンションに戻ったのは別々にした。いつもは水やりして帰るだけなのに、今夜はラブホテルに泊まるかのように、異性を意識して緊張してしまう。

ただ、部屋には佐々木の趣味の観葉植物が、生活感の雰囲気を出している事でホッとさせてくれていた。

「池田さんと居ると、男に戻れなくなっちゃうわね」そんなことを部屋に入ると言ってくる。

私が「一緒に居るときは可愛い女でいてね・・男に変貌することを恐れた」冷えたビールを一口飲み始めると、私は女装千春のスカート生地が心地よくて太腿に手をすべらせてやった。

 「あ、ヤダーそこは勘弁して・・」と、手で押さえた。そこは禁断の場所であり、女装の限界だったのだ。

・・
明日はここから出勤、夜はここで泊まるようになり、佐々木のマンションは隠れ家のようになる。私たちは植物に水やりという目的で、時間差でマンションに訪れるようになる。

いつの日か、成瀬は仕事の帰りの時、男の恰好で現れるようになる。私は憧れでもあった千春に会えなくなってしまうと「水遣りは成瀬くんに任せるね」と、言ってしまった。

すると優しい目をして頷いてくれたのだ。成瀬も私の言葉で、何かに気が付いたようだ。 


千春で現れなくなると、男の成瀬の方が仮の姿のようにみえてしまい・・言ってみれば、可愛いミニーちゃんを被らないだけの存在に見えてくる。

私は千春に心を奪われたが、着ぐるみ内部の成瀬までも好きになることは出来なかった。成瀬も女装の限界を知り、行き場のない感情を知ったようで「女装・・疲れちゃった」と、ハグした時に悲しそうな声で話してくる。

成瀬という男は着ぐるみの土台であり、憧れの千春では無かった。そんな架空の千春・・この世に存在しないのだと思うと、1人の女性を失ったかのような寂しさを覚えた。完
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