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大気
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窓辺からは包み込むような春の陽気が差し込む。開けられた窓からは、柔らかな風が吹き、黒板消しを叩く少女に粉が降りかかる。
「けほけほ、もう、最悪」
少女の#烏_からす__#の濡れ羽色の絹糸のような髪と、滑らかな質感の肌色の顔と、学校指定の赤いジャージを、チョークの粉が何ともいえない色に染め上げる。
「大丈夫?」
「こっちにまで粉来た!」
「煙みたいだったよ」
「ヨボヨボのおばあちゃんになるんじゃねえの?」
「あたしは浦島太郎か」
茶化すクラスメイトに、突っ込みを入れる少女。少女は、おかっぱの頭をぶるぶると震わせ、身体についた粉を落とす。クラスメイトからは「あんたは犬か」とからかわれる。
そんな少女の背後に、忍び寄る影。掃除をサボって一人、うろついていた少年は、彼女にいたずらをしようとゆっくり近づこうとした。
両の手を組んで、人差し指と親指を立てて、さながら百戦錬磨のヒットマンのように眼光をぎらつかせてターゲットを狙う。
彼は、小学校からの仲でよく少女にいたずらをする。あるときはスカートめくり、またあるときは少女のまるくふわふわとした柔らかい尻をさわったりしては怒られるのは日常茶飯事である。
少年は頭上の細く白い足と体操ズボンに隠された標的を見ながら変化に気付く。
ただ棒のように細身だけの足はしなやかな曲線を描く。自分に比べて小さく感じる背中は触れたら壊れてしまいそうで。顔立ちも小学生の時より少し雰囲気が異なっており、体育で少し赤みを帯びた彼女の表情にどきりとすることもあった。
そんな思い出に浸り、標的を撃ち抜くことをうっかり忘れかけていた少年は、彼にとっての邪念を振り払い指先を近付ける。
後10センチ。5センチ。
後1センチまで指先が近付いた。組んだ両の手に汗が滲み、震えながら彼女の柔らかそうな尻めがけて指を突き立てようとした。
だが、その指が標的を穿つことはできなかった。
それは、刹那の出来事であった。僅かな空気の抜ける音。
そして、まるで腐った卵のような熟成された空気が、少年の顔にまとわりつき、少年の動きを封じたのだ。
その空気が、黄色く染まって見える。少年はたまらずその場から逃げた。
「ちょ、くっさ!くっさ!」
「換気換気!」
「昨日の晩ニンニクでも食べた?」
「ごめんて」
少女の中で発酵された腐敗臭にクラスメイトは阿鼻叫喚。少女は軽く謝るものの、反省の色はない。
その一方で、少年はその腐敗臭に悶絶していた。密かに想いを寄せていた可憐な少女から喰らった不意討ちに。
「で、こいつどうしたの。後ろで」
「まさかこいつ……」
後日、少年が臭気によるフェチシズムを抱いているという不名誉な噂がクラス中に広まった。
「けほけほ、もう、最悪」
少女の#烏_からす__#の濡れ羽色の絹糸のような髪と、滑らかな質感の肌色の顔と、学校指定の赤いジャージを、チョークの粉が何ともいえない色に染め上げる。
「大丈夫?」
「こっちにまで粉来た!」
「煙みたいだったよ」
「ヨボヨボのおばあちゃんになるんじゃねえの?」
「あたしは浦島太郎か」
茶化すクラスメイトに、突っ込みを入れる少女。少女は、おかっぱの頭をぶるぶると震わせ、身体についた粉を落とす。クラスメイトからは「あんたは犬か」とからかわれる。
そんな少女の背後に、忍び寄る影。掃除をサボって一人、うろついていた少年は、彼女にいたずらをしようとゆっくり近づこうとした。
両の手を組んで、人差し指と親指を立てて、さながら百戦錬磨のヒットマンのように眼光をぎらつかせてターゲットを狙う。
彼は、小学校からの仲でよく少女にいたずらをする。あるときはスカートめくり、またあるときは少女のまるくふわふわとした柔らかい尻をさわったりしては怒られるのは日常茶飯事である。
少年は頭上の細く白い足と体操ズボンに隠された標的を見ながら変化に気付く。
ただ棒のように細身だけの足はしなやかな曲線を描く。自分に比べて小さく感じる背中は触れたら壊れてしまいそうで。顔立ちも小学生の時より少し雰囲気が異なっており、体育で少し赤みを帯びた彼女の表情にどきりとすることもあった。
そんな思い出に浸り、標的を撃ち抜くことをうっかり忘れかけていた少年は、彼にとっての邪念を振り払い指先を近付ける。
後10センチ。5センチ。
後1センチまで指先が近付いた。組んだ両の手に汗が滲み、震えながら彼女の柔らかそうな尻めがけて指を突き立てようとした。
だが、その指が標的を穿つことはできなかった。
それは、刹那の出来事であった。僅かな空気の抜ける音。
そして、まるで腐った卵のような熟成された空気が、少年の顔にまとわりつき、少年の動きを封じたのだ。
その空気が、黄色く染まって見える。少年はたまらずその場から逃げた。
「ちょ、くっさ!くっさ!」
「換気換気!」
「昨日の晩ニンニクでも食べた?」
「ごめんて」
少女の中で発酵された腐敗臭にクラスメイトは阿鼻叫喚。少女は軽く謝るものの、反省の色はない。
その一方で、少年はその腐敗臭に悶絶していた。密かに想いを寄せていた可憐な少女から喰らった不意討ちに。
「で、こいつどうしたの。後ろで」
「まさかこいつ……」
後日、少年が臭気によるフェチシズムを抱いているという不名誉な噂がクラス中に広まった。
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