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5巻
5-3
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もしも町内、いや少しぐらい離れていても、空き地があったら頼みに行ったかもしれない。その空き地の使い道が決まるまでの間だけでもいいから、野菜を作らせてくれないか、と交渉しただろう。けれど、ツキミも言っていたとおり、この界隈に空き地などひとつもない。唯一空き地になった社宅の跡地は、ショッピングセンターになることが決まり、あっという間に工事が始まってしまった。
やっぱりどうにもならないのか、と思っていたところに要がやってきて、ショッピングセンターの屋上の話を始めたのである。土はあるが、そこに何かを植える予算はない、と……
それならば、その土を畑に使い、借りた人に好きなものを植えてもらえばいいではないか。もともと庭園にするつもりだったのなら、水道ぐらい引いてあるはずだ。水の使用料も含めて、賃料を取ればいいではないか――
美音は必死に言い募った。
要がどれほどの権限を持っているかはわからない。でも、プランを話し合う立場にあるのならば、提案してもらうことぐらいはできるだろう。取り入れてもらえるかどうかなんてわからないけれど、とにかくツキミのために何かしたかった。
「わかった! わかったから、ちょっとそれは置いて!」
要が降参、とばかりに両手を上げて言う。それもそのはず、美音は右手に包丁を持ったまま熱弁をふるっていたのだ。要が白旗を揚げるのも無理はない。
「ごめんなさい、つい……」
美音は照れ笑いを浮かべつつ、刃先をズッキーニに戻した。今度は脱線することなく切り終え、フライパンに火をつける。料理人の務めに戻った美音に安心したのか、要は屋上の使い道について、施主に提案してみると約束してくれた。
「受け入れてもらえるという保証はできないけど、とにかく提案してみる。市民農園にするなら、しばらく土を入れたままで放置しておいても言い訳が立つし、案外施主も気に入るかもしれない」
「ありがとうございます!」
「まあ、なんにしても君が野菜を作り始めるんじゃなくてよかったよ」
「え、どうしてですか?」
「ただでさえ、荒れやすい肌なのに、毎日水仕事。その上、土いじりなんてとんでもないよ」
「え……あ、そう、ですね……」
要の母、八重が、美音の手荒れを心配してハンドクリームをくれたのは、つい最近のことだ。
体調を崩した八重のために作った茶がゆのお礼ということだったが、それにしてはあまりにも高価なブランド品。だがそれだけに効果は覿面だった。
あのハンドクリームを使い始めてから、美音の手は娘らしい柔らかな肌に戻っていた。
「せっかくのお母様のお気遣い、台なしにするわけにはいきませんよね」
「いや、どうしてもやりたいなら止めないけど、君のことだからとことん熱中して大変なことになりそうじゃないか。もうさ、堆肥とかも手作りしそうだ」
「やりませんってば。第一、私、プランターとか植木鉢なら得意ですけど、それ以上は手に負えません」
「ああそうか。夏休みの自由研究……」
「そういうことです」
来る夏、来る夏、自由研究は植物の観察だった。忙しい両親の手を煩わせずに済むから……という話を要は覚えていてくれたらしい。
「私って、運動神経もなければ筋力もないんです。耕したり、草を抜いたり、堆肥をひっくり返したりなんて無理に決まってます」
「それを聞いて安心したよ。畑でへとへとだから営業時間を短くする、遅い客はお断り、なんて言われたらどうしようかと思った」
「言いませんって」
軽く返しながら、美音は要をそっと窺う。
馨が帰ったあと、もう暖簾をしまおうかと思うような時間に、からりと引き戸が開けられる。その瞬間を自分がどれほど待っているか、この人はちっともわかっていないだろう。他の客を迎えるときとは違う感情を、もう否定することはできなかった。
けれど、居酒屋の店主としてそんな感情を表に出すわけにはいかない。あくまでも他の客と同じように接する努力を続けてきた。だから、気持ちに気付かれていないことを喜ぶべきなのに、込み上げる寂しさを持て余す。
複雑な心情の中、美音はズッキーニと豚肉を炒め終え、要の酒の減り具合を確かめた。
グラスに入っているのは、『澤乃井 涼し酒』。東京都青梅市にある小澤酒造による季節限定の生貯蔵酒である。
かすかに漂う酸味が夏の暑さを忘れさせ、柔らかな口当たりはつい「もう一杯」とグラスを差し出させる。しかも、アルコール度数は十三度から十四度と日本酒にしては低めで、多少呑み過ぎても大丈夫な造り。
東京の地酒、しかも四月下旬から八月の間しか手に入らない限定品という要素も加わって、『ぼったくり』では夏の人気商品となっていた。
汗を掻いて入ってきて、まずはこちらを、と差し出された酒を一口呑んだ要は、軽い呑み口に目尻を下げた。これなら呑んだあとでも仕事ができそうだ、と喜んだところをみると、今でも夜中まで仕事をせねばならない状況は続いているらしい。
ショッピングセンターの工事は大詰め、しかも彼が携わっている仕事は他にもあるのだろう。窓際に追いやられるよりは忙しいほうがいいとは思うけれど、やはり身体のことが気にかかる。
ツキミを思うあまりつい口にしてしまったものの、屋上を市民農園にしてはどうかという提案が彼の仕事を増やすことにならなければいいが……と、美音は心配でならなかった。
†
「要さんって、もしかしたらけっこう力のある人かもしれないっす……」
ツキミの一件を要に話してから一週間ほどしたある日、カウンターの一席を占めたリョウが少し遠い目をしながら呟いた。
「どういうこと?」
隣に座っていたアキが怪訝そうに問い返す。
今日は土曜日で、ふたりは例によってテニス対決を済ませてきた帰りである。なんでも、珍しく土曜日の午後三時に予約が取れて喜んだのはいいが、あまりの暑さにのどはからから、動き回ってお腹もぺこぺこ。これはもう『ぼったくり』に突撃するしかない、ということで、開店を待ちかねたように現れた。何かにつけ意見を異にするふたりだが、今日に限っては完全一致。他に選択肢なし、とばかりにぎんぎんに冷えたビールを一気呑みした。そのあと、肴も二、三、お腹に入れて、ようやく人心地がついたところである。
手酌でビールをグラスに注いだリョウは、考え考え言葉を繋ぐ。
「昨日、アンケートサイトを見てたんすけど……」
市場調査会社に勤めているリョウは、よその会社がどんな調査を請け負っているかが気になってアンケートサイトを見て回ることがあるらしい。先日も、とある大手アンケートサイトを見に行ったら市民農園に関する調査があった。ツキミの件が気になっていたリョウがそのアンケートページを開いてみたところ、この界隈に家庭菜園に興味を持っている人がどれぐらいいるか、という調査だったそうだ。
リョウからツキミの一件について簡単に説明を受けたアキは訝しげな顔をした。
「ええ? あんたって、そういうアンケートには答えられないんじゃないの?」
調査会社に勤めている人間は、アンケートの対象から外されるはずなのに、とアキが言う。リョウは頷きながらも、実際に答えなくてもある程度のことはわかるのだと言った。
「設問はたいてい、性別、年齢、居住地区……って訊いていくんす。どこかで条件から外れれば質問は終了。で、職業は結構あとのほうで訊かれるから、それまでの段階で、どんな年齢層のどういう場所に住んでる人が対象の調査かがわかるっす。で、たまにアンケート自体にタイトルが付いてるときがあるんすけど、俺が昨日見たのはものすごくわかりやすかったっす」
「どんな?」
「家庭菜園についてのアンケート」
「まんまだね。で、このあたりが対象だってのはどうしてわかったの?」
「俺のアパートは、結構離れてるけどここの商店街と同じ区内。居住地区入力で弾かれなかったんだから、対象はこの区を含んでるんす。どこまでが対象かはわかんないけど……」
「なるほどねえ……さすが同業」
感心したように頷くアキを放置して、リョウはカウンターの向こうの美音を見上げた。
「美音さん、新しいショッピングセンターの屋上を市民農園にしてはどうかって要さんに提案したって言ってましたよね。あれからまだ四、五日しか経ってないのに、もう調査会社に依頼が入ってる。相当なやり手じゃないと、こんなことにはならない気がするっす」
「そうよね……ものすごく忙しそうだし……」
「あんなに忙しそうにしているのに仕事ができないとしたら、気の毒すぎるよね。空回りもいいとこじゃない」
「アキさん、辛辣~」
からからと笑っている馨の横で、美音はちょっと首を傾げる。少なくとも要は一生懸命仕事をしている。定時で仕事を終える日などないのだろう。ただ、『力のある人』かどうか、美音にはわからなかった。
「オープンも迫ってるし、他のアイデアもないし、ってことじゃないのかしら? 必ずしも力があるとは……」
「でもね、美音さん。たとえ工期がぎりぎりだって、とりあえず上に掛け合って会議の二つ三つ通してから、っていうのが普通じゃない? 会社ってそういう面倒くさいところあるでしょ? それをすっ飛ばして調査を依頼してきたってことは、会社は要さんを相当認めてるってことだと思う。この人が言うんだから問答無用……とか?」
「俺もそう思うっす。しかも、この短期間でアンケート作らせて調査開始なんて、普通ならあり得ないスピードです。それをやらせるだけの力があるってことっす」
「へえ、そうなんだ……だとしたら頼もしいねえ」
馨が感心したように呟いた。
「この町からの要望もばんばん伝えて、取り上げてもらえばいいんじゃない?」
そそのかすようなアキの言葉に、さすがの馨も、そんなことできないよ、と笑う。
「とにかく、このまま行けば新しいショッピングセンターの屋上は市民農園になって、川原で畑をやってる人もそこに移って問題解決。きっとツキミさんも大喜びね」
お孫さんのためにもよかった、とアキはほっとしている。もちろん、利用者が多ければ抽選になるのだろうけれど、可能性がゼロよりはよほどいい、ということだろう。
ショッピングセンターの開業は十月。要によると、川原の畑は年明け早々に強制撤去となるらしい。逆に言えば、川原の畑で秋の収穫を終えたあとショッピングセンターの畑に移ればいいということになる。それからでも春野菜の種蒔きや苗付けには間に合う。ツキミも娘さんも、そしてお孫さんも胸をなで下ろすに違いない。
「うまく決まればいいね。でもって、そろそろショッピングセンターがどんな風になるのかも知らせてほしいなあ……」
中に入る店はおおよそわかってきた。馨がぬかりなく求人情報をチェックし続けていたからだ。依然としてわからないのは、トモの言うところの『核になる店』だけである。商店街の敵とならず、なおかつ閉店する『スーパー呉竹』の代わりになるような店が入ってほしい。それは、この界隈の人々の共通した願いだった。
†
『核となる店』についての情報がもたらされたのは、オープンまであと一ヶ月となった九月初旬のことだった。しかもそれは、想像以上に好情報で、馨などは安堵のあまり怒り始めたほどだ。
「もう! それならそうと言ってくれればいいじゃない!」
「まあまあ、そう鼻息を荒くしなさんな。呉竹さんがショッピングセンターの中に移ってくれるなら、御の字じゃねえか」
カウンターに座ったシンゾウが笑いながら宥めても、馨の怒りは収まらない。
「あたしたちみんな、あんなに心配したのに! 呉竹さん、大丈夫なのかな、これからの買い物はどうなるのかなってーーー!!」
お姉ちゃんなんて、ウォーキングの行き先がなくなって全然運動しなくなっちゃうんじゃないかとまで思ってたのに、なんなのこのオチは、と馨が文句を言い続けているところに入ってきたのはトモだった。
「こんばんは。どうしたの馨ちゃん? 外まで声が丸聞こえよ」
「トモさん! 新しいショッピングセンターに入るのって、呉竹さんだったんだよ! それならそれで、閉店じゃなくて移転だって知らせてくれればいいと思わない?」
「はいはい、きっと馨ちゃんがそんなことを言ってるだろうと思ってたのよ、来て正解だったわ」
トモは、意味ありげに微笑んだあと、とりあえず一杯呑んでから、とライムチューハイを注文した。今日は恋人のイクヤと一緒ではないから、軽めの酒を選んだらしい。
「私も今日聞いた話なんだけど、『スーパー呉竹』は最初は閉店するつもりだったらしいわよ」
「え、そうなんですか?」
目を丸くして問い返した美音に、トモはライムチューハイを一口呑んで答えた。
「そう。新しいショッピングセンターができるなら、その中にスーパーかデパートが入るだろう。きっと輸入食材や雑貨も扱う。今でさえぎりぎりの経営状態なのに、これ以上はもう持ちこたえられない、って撤退を決めたらしいの。でも……」
あの場所からの撤退、土地の売却を決めたところで、ショッピングセンターを作ろうとしている大手流通会社から連絡があり、『スーパー呉竹』の跡地を駐車場及び巡回バスのステーションとして利用したいと言われた。
『スーパー呉竹』としては願ってもない話で、早速商談が始まった。ところが話が半ば決まりかけたころ、少し値を下げてもらえないか、という申し出がなされた。
驚いて事情を聞いてみると、計画に変更が相次いだことで、資金繰りが厳しくなった。けれど駐車場や巡回バスステーションは是非とも作りたい。ついては売価を下げてもらえないか、その代わりに、賃貸料を割り引くから新しくできるショッピングセンターに『スーパー呉竹』を出店してみてはどうか、という話だったそうだ。
「もうすっかり撤退する気になってたから、呉竹さんの経営者は面食らったそうだけど、土地は売れるし、商売も続けていける。しかも、呉竹さん自身がショッピングセンターに入るのであれば競合問題もなくなる。多少土地の値段を下げてもメリットは大きい、って考え直したそうなの」
「はあ……そいつはなんというか、都合のいい話だなあ」
シンゾウが半ば呆れたように言った。
「でしょ? 渡りに船って感じよね。で、急遽方針変更して、出店準備を進めたそうよ。あれこれ検討や手配をして、やっと告知できるようになりました、って事情だったんですって」
「なんだ……そうだったの。じゃあ、仕方ないわね。最初から移転って決まってたんじゃないんですもの」
トモの説明を聞いて、美音はようやく納得がいった。移転することが決まっていながら『閉店します』なんて貼り紙をするのはおかしすぎる。お客さんが離れる理由にしかならない、と首を傾げていたのだ。途中で事情が変わったのであれば、無理もない話である。
「そっか……じゃあ、仕方ないか。でもまあ、あの流通会社もいいところあるよね。自分のところのスーパーじゃなくて、地元の呉竹さんに声をかけるなんて」
「いいところがあるのか、他にやむにやまれぬ事情があったのか、ちょっと読めねえところだがな」
シンゾウは、もしかしたらタクのとーちゃんあたりが一枚噛んでるのかもな、と呟いた。それでも、『スーパー呉竹』がこれからもこの町で営業を続けると聞いて、嬉しそうだった。相変わらず、要のことを『タクのとーちゃん』と呼び続けるシンゾウに、周囲から小さな笑いが起こる。笑いが収まるのを待って、トモがまた口を開いた。
「でね、呉竹さん、今まで店頭で小さく扱ってた苗や種、園芸用品なんかも置くんですって。あんな場所なのに、そんなところに手を広げて売れるのかしら?」
「あ……」
それを聞いた美音と馨は、思わず顔を見合わせた。ショッピングセンターに入るスーパーが園芸用品を置く理由は、屋上の市民農園に関係があるとしか思えなかった。
「じゃあ、市民農園の話も決まったんだね! やったー!」
「よかった……これでツキミさんも一安心だわ」
「え? ツキミさんってどなた?」
「あのね、この間……」
きょとんとしているトモ、そしてシンゾウに事情を説明する馨は、先ほどまで怒り心頭だったことなど忘れ去ったようだった。
「そうか……これはますますあの男がらみだな。よし、美音坊、今度あの男が来たら、俺からだって一杯出してやってくれ。それぐらいのことしてやっても罰は当たらねえだろう」
「シンゾウさん、太っ腹ー! じゃあ、お姉ちゃん、とびっきりのお酒、用意しておこうね!」
「とびっきりって言われても、うちじゃあ限界がありますけどね」
「あいつは値段をありがたがって酒を呑むような男じゃねえ。美音坊がこれぞと思うものなら喜んで呑むだろうさ。ついでに、つまみもいくつか見繕ってやってくれ。よろしくな」
「はーい」
明るく返事をして、美音は頭の中にある酒リストのページをめくる。
もうしばらくすれば残暑も遠のき、秋がやってくる。秋は新酒の季節だ。要が好きだと言った何本かの酒を照らし合わせて、とびっきりの酒を選ぼう。
シンゾウからだと告げながら枡にたっぷり溢れさせた酒をすすめる。要はちょっと驚き、それでも嬉しそうに口を付けることだろう。『よろしくお伝えください』なんて、照れたような顔で言うかもしれない。そんな要を想像して、美音はほっこりと笑った。
『新しいショッピングセンターはこの町にとって敵じゃない』――そう言った要の言葉を疑った日もあった。大丈夫だというのならば、根拠を示してほしいと願った日もあった。
けれど、ショッピングセンター内に入るのはこのあたりにはない種類の店ばかり、閉鎖されると思っていた『スーパー呉竹』も移転に留まった。無料バスは駅と新しいショッピングセンターの往復だけではなく、『スーパー呉竹』の跡地、つまり商店街の入り口近くまで来ることとなった。屋上には近隣住民が利用できる市民農園も設置される。ツキミだけではなく、悪いとわかっていながら川原を利用し続けていた人たちも、これからは安心して園芸に励めるのだ。
新しいショッピングセンターは敵どころか、この町の暮らしを豊かにしてくれるものだった。
彼の言葉は本当だった……。いや、むしろ本当になるように、必死に頑張ってくれたのだろう。
以前彼が言っていた『これまでやったことのない新しい仕事』というのは、きっとあのショッピングセンターの企画全般に関わることだったに違いない。経験がなく、新しい知識も必要とされる大変な仕事なのに、彼は一生懸命に取り組んだ。彼はこの町の住民ではないし、彼の家族が住んでいるわけでもないのに……
そう考えると、さらに要に対する感謝の念が大きくなった。
彼がこの町を大事に思ってくれているのは、ここに『ぼったくり』があるからだ。この店は居心地がいい、ここに来ると元気になれると言ってくれるし、家や職場から離れた場所にあるのにわざわざやってきてくれるのだからおそらく間違いない。この町を守るために、彼は懸命に努力してくれた。疲れ果て、愚痴を漏らすことを自分に禁じてまで、頑張り続けてくれた。
要が何を思っているかなんてわからない。もしかしたら彼は、この町のためというよりも、自分にとって心地よい場所を守りたかっただけなのかもしれない。それでも結果として、彼の行動はこの町のみんなを救った。どれだけ感謝しても足りないほどだ。そう思っているのは美音だけではないだろう。
――この場所をそれほど大事に思ってくれてありがとう。お礼にできることなんて何もないけれど、あなたにとっての居心地の良さを保てるように努力します。あなたが疲れてやってきたときには、ちょっとだけ元気にして送り出せるように……
秋の気配が徐々に近づき、自分の中にも今までとは違う感情がある。それに気付いた今、美音は実りの季節の訪れが少し怖いような気がしていた。
やっぱりどうにもならないのか、と思っていたところに要がやってきて、ショッピングセンターの屋上の話を始めたのである。土はあるが、そこに何かを植える予算はない、と……
それならば、その土を畑に使い、借りた人に好きなものを植えてもらえばいいではないか。もともと庭園にするつもりだったのなら、水道ぐらい引いてあるはずだ。水の使用料も含めて、賃料を取ればいいではないか――
美音は必死に言い募った。
要がどれほどの権限を持っているかはわからない。でも、プランを話し合う立場にあるのならば、提案してもらうことぐらいはできるだろう。取り入れてもらえるかどうかなんてわからないけれど、とにかくツキミのために何かしたかった。
「わかった! わかったから、ちょっとそれは置いて!」
要が降参、とばかりに両手を上げて言う。それもそのはず、美音は右手に包丁を持ったまま熱弁をふるっていたのだ。要が白旗を揚げるのも無理はない。
「ごめんなさい、つい……」
美音は照れ笑いを浮かべつつ、刃先をズッキーニに戻した。今度は脱線することなく切り終え、フライパンに火をつける。料理人の務めに戻った美音に安心したのか、要は屋上の使い道について、施主に提案してみると約束してくれた。
「受け入れてもらえるという保証はできないけど、とにかく提案してみる。市民農園にするなら、しばらく土を入れたままで放置しておいても言い訳が立つし、案外施主も気に入るかもしれない」
「ありがとうございます!」
「まあ、なんにしても君が野菜を作り始めるんじゃなくてよかったよ」
「え、どうしてですか?」
「ただでさえ、荒れやすい肌なのに、毎日水仕事。その上、土いじりなんてとんでもないよ」
「え……あ、そう、ですね……」
要の母、八重が、美音の手荒れを心配してハンドクリームをくれたのは、つい最近のことだ。
体調を崩した八重のために作った茶がゆのお礼ということだったが、それにしてはあまりにも高価なブランド品。だがそれだけに効果は覿面だった。
あのハンドクリームを使い始めてから、美音の手は娘らしい柔らかな肌に戻っていた。
「せっかくのお母様のお気遣い、台なしにするわけにはいきませんよね」
「いや、どうしてもやりたいなら止めないけど、君のことだからとことん熱中して大変なことになりそうじゃないか。もうさ、堆肥とかも手作りしそうだ」
「やりませんってば。第一、私、プランターとか植木鉢なら得意ですけど、それ以上は手に負えません」
「ああそうか。夏休みの自由研究……」
「そういうことです」
来る夏、来る夏、自由研究は植物の観察だった。忙しい両親の手を煩わせずに済むから……という話を要は覚えていてくれたらしい。
「私って、運動神経もなければ筋力もないんです。耕したり、草を抜いたり、堆肥をひっくり返したりなんて無理に決まってます」
「それを聞いて安心したよ。畑でへとへとだから営業時間を短くする、遅い客はお断り、なんて言われたらどうしようかと思った」
「言いませんって」
軽く返しながら、美音は要をそっと窺う。
馨が帰ったあと、もう暖簾をしまおうかと思うような時間に、からりと引き戸が開けられる。その瞬間を自分がどれほど待っているか、この人はちっともわかっていないだろう。他の客を迎えるときとは違う感情を、もう否定することはできなかった。
けれど、居酒屋の店主としてそんな感情を表に出すわけにはいかない。あくまでも他の客と同じように接する努力を続けてきた。だから、気持ちに気付かれていないことを喜ぶべきなのに、込み上げる寂しさを持て余す。
複雑な心情の中、美音はズッキーニと豚肉を炒め終え、要の酒の減り具合を確かめた。
グラスに入っているのは、『澤乃井 涼し酒』。東京都青梅市にある小澤酒造による季節限定の生貯蔵酒である。
かすかに漂う酸味が夏の暑さを忘れさせ、柔らかな口当たりはつい「もう一杯」とグラスを差し出させる。しかも、アルコール度数は十三度から十四度と日本酒にしては低めで、多少呑み過ぎても大丈夫な造り。
東京の地酒、しかも四月下旬から八月の間しか手に入らない限定品という要素も加わって、『ぼったくり』では夏の人気商品となっていた。
汗を掻いて入ってきて、まずはこちらを、と差し出された酒を一口呑んだ要は、軽い呑み口に目尻を下げた。これなら呑んだあとでも仕事ができそうだ、と喜んだところをみると、今でも夜中まで仕事をせねばならない状況は続いているらしい。
ショッピングセンターの工事は大詰め、しかも彼が携わっている仕事は他にもあるのだろう。窓際に追いやられるよりは忙しいほうがいいとは思うけれど、やはり身体のことが気にかかる。
ツキミを思うあまりつい口にしてしまったものの、屋上を市民農園にしてはどうかという提案が彼の仕事を増やすことにならなければいいが……と、美音は心配でならなかった。
†
「要さんって、もしかしたらけっこう力のある人かもしれないっす……」
ツキミの一件を要に話してから一週間ほどしたある日、カウンターの一席を占めたリョウが少し遠い目をしながら呟いた。
「どういうこと?」
隣に座っていたアキが怪訝そうに問い返す。
今日は土曜日で、ふたりは例によってテニス対決を済ませてきた帰りである。なんでも、珍しく土曜日の午後三時に予約が取れて喜んだのはいいが、あまりの暑さにのどはからから、動き回ってお腹もぺこぺこ。これはもう『ぼったくり』に突撃するしかない、ということで、開店を待ちかねたように現れた。何かにつけ意見を異にするふたりだが、今日に限っては完全一致。他に選択肢なし、とばかりにぎんぎんに冷えたビールを一気呑みした。そのあと、肴も二、三、お腹に入れて、ようやく人心地がついたところである。
手酌でビールをグラスに注いだリョウは、考え考え言葉を繋ぐ。
「昨日、アンケートサイトを見てたんすけど……」
市場調査会社に勤めているリョウは、よその会社がどんな調査を請け負っているかが気になってアンケートサイトを見て回ることがあるらしい。先日も、とある大手アンケートサイトを見に行ったら市民農園に関する調査があった。ツキミの件が気になっていたリョウがそのアンケートページを開いてみたところ、この界隈に家庭菜園に興味を持っている人がどれぐらいいるか、という調査だったそうだ。
リョウからツキミの一件について簡単に説明を受けたアキは訝しげな顔をした。
「ええ? あんたって、そういうアンケートには答えられないんじゃないの?」
調査会社に勤めている人間は、アンケートの対象から外されるはずなのに、とアキが言う。リョウは頷きながらも、実際に答えなくてもある程度のことはわかるのだと言った。
「設問はたいてい、性別、年齢、居住地区……って訊いていくんす。どこかで条件から外れれば質問は終了。で、職業は結構あとのほうで訊かれるから、それまでの段階で、どんな年齢層のどういう場所に住んでる人が対象の調査かがわかるっす。で、たまにアンケート自体にタイトルが付いてるときがあるんすけど、俺が昨日見たのはものすごくわかりやすかったっす」
「どんな?」
「家庭菜園についてのアンケート」
「まんまだね。で、このあたりが対象だってのはどうしてわかったの?」
「俺のアパートは、結構離れてるけどここの商店街と同じ区内。居住地区入力で弾かれなかったんだから、対象はこの区を含んでるんす。どこまでが対象かはわかんないけど……」
「なるほどねえ……さすが同業」
感心したように頷くアキを放置して、リョウはカウンターの向こうの美音を見上げた。
「美音さん、新しいショッピングセンターの屋上を市民農園にしてはどうかって要さんに提案したって言ってましたよね。あれからまだ四、五日しか経ってないのに、もう調査会社に依頼が入ってる。相当なやり手じゃないと、こんなことにはならない気がするっす」
「そうよね……ものすごく忙しそうだし……」
「あんなに忙しそうにしているのに仕事ができないとしたら、気の毒すぎるよね。空回りもいいとこじゃない」
「アキさん、辛辣~」
からからと笑っている馨の横で、美音はちょっと首を傾げる。少なくとも要は一生懸命仕事をしている。定時で仕事を終える日などないのだろう。ただ、『力のある人』かどうか、美音にはわからなかった。
「オープンも迫ってるし、他のアイデアもないし、ってことじゃないのかしら? 必ずしも力があるとは……」
「でもね、美音さん。たとえ工期がぎりぎりだって、とりあえず上に掛け合って会議の二つ三つ通してから、っていうのが普通じゃない? 会社ってそういう面倒くさいところあるでしょ? それをすっ飛ばして調査を依頼してきたってことは、会社は要さんを相当認めてるってことだと思う。この人が言うんだから問答無用……とか?」
「俺もそう思うっす。しかも、この短期間でアンケート作らせて調査開始なんて、普通ならあり得ないスピードです。それをやらせるだけの力があるってことっす」
「へえ、そうなんだ……だとしたら頼もしいねえ」
馨が感心したように呟いた。
「この町からの要望もばんばん伝えて、取り上げてもらえばいいんじゃない?」
そそのかすようなアキの言葉に、さすがの馨も、そんなことできないよ、と笑う。
「とにかく、このまま行けば新しいショッピングセンターの屋上は市民農園になって、川原で畑をやってる人もそこに移って問題解決。きっとツキミさんも大喜びね」
お孫さんのためにもよかった、とアキはほっとしている。もちろん、利用者が多ければ抽選になるのだろうけれど、可能性がゼロよりはよほどいい、ということだろう。
ショッピングセンターの開業は十月。要によると、川原の畑は年明け早々に強制撤去となるらしい。逆に言えば、川原の畑で秋の収穫を終えたあとショッピングセンターの畑に移ればいいということになる。それからでも春野菜の種蒔きや苗付けには間に合う。ツキミも娘さんも、そしてお孫さんも胸をなで下ろすに違いない。
「うまく決まればいいね。でもって、そろそろショッピングセンターがどんな風になるのかも知らせてほしいなあ……」
中に入る店はおおよそわかってきた。馨がぬかりなく求人情報をチェックし続けていたからだ。依然としてわからないのは、トモの言うところの『核になる店』だけである。商店街の敵とならず、なおかつ閉店する『スーパー呉竹』の代わりになるような店が入ってほしい。それは、この界隈の人々の共通した願いだった。
†
『核となる店』についての情報がもたらされたのは、オープンまであと一ヶ月となった九月初旬のことだった。しかもそれは、想像以上に好情報で、馨などは安堵のあまり怒り始めたほどだ。
「もう! それならそうと言ってくれればいいじゃない!」
「まあまあ、そう鼻息を荒くしなさんな。呉竹さんがショッピングセンターの中に移ってくれるなら、御の字じゃねえか」
カウンターに座ったシンゾウが笑いながら宥めても、馨の怒りは収まらない。
「あたしたちみんな、あんなに心配したのに! 呉竹さん、大丈夫なのかな、これからの買い物はどうなるのかなってーーー!!」
お姉ちゃんなんて、ウォーキングの行き先がなくなって全然運動しなくなっちゃうんじゃないかとまで思ってたのに、なんなのこのオチは、と馨が文句を言い続けているところに入ってきたのはトモだった。
「こんばんは。どうしたの馨ちゃん? 外まで声が丸聞こえよ」
「トモさん! 新しいショッピングセンターに入るのって、呉竹さんだったんだよ! それならそれで、閉店じゃなくて移転だって知らせてくれればいいと思わない?」
「はいはい、きっと馨ちゃんがそんなことを言ってるだろうと思ってたのよ、来て正解だったわ」
トモは、意味ありげに微笑んだあと、とりあえず一杯呑んでから、とライムチューハイを注文した。今日は恋人のイクヤと一緒ではないから、軽めの酒を選んだらしい。
「私も今日聞いた話なんだけど、『スーパー呉竹』は最初は閉店するつもりだったらしいわよ」
「え、そうなんですか?」
目を丸くして問い返した美音に、トモはライムチューハイを一口呑んで答えた。
「そう。新しいショッピングセンターができるなら、その中にスーパーかデパートが入るだろう。きっと輸入食材や雑貨も扱う。今でさえぎりぎりの経営状態なのに、これ以上はもう持ちこたえられない、って撤退を決めたらしいの。でも……」
あの場所からの撤退、土地の売却を決めたところで、ショッピングセンターを作ろうとしている大手流通会社から連絡があり、『スーパー呉竹』の跡地を駐車場及び巡回バスのステーションとして利用したいと言われた。
『スーパー呉竹』としては願ってもない話で、早速商談が始まった。ところが話が半ば決まりかけたころ、少し値を下げてもらえないか、という申し出がなされた。
驚いて事情を聞いてみると、計画に変更が相次いだことで、資金繰りが厳しくなった。けれど駐車場や巡回バスステーションは是非とも作りたい。ついては売価を下げてもらえないか、その代わりに、賃貸料を割り引くから新しくできるショッピングセンターに『スーパー呉竹』を出店してみてはどうか、という話だったそうだ。
「もうすっかり撤退する気になってたから、呉竹さんの経営者は面食らったそうだけど、土地は売れるし、商売も続けていける。しかも、呉竹さん自身がショッピングセンターに入るのであれば競合問題もなくなる。多少土地の値段を下げてもメリットは大きい、って考え直したそうなの」
「はあ……そいつはなんというか、都合のいい話だなあ」
シンゾウが半ば呆れたように言った。
「でしょ? 渡りに船って感じよね。で、急遽方針変更して、出店準備を進めたそうよ。あれこれ検討や手配をして、やっと告知できるようになりました、って事情だったんですって」
「なんだ……そうだったの。じゃあ、仕方ないわね。最初から移転って決まってたんじゃないんですもの」
トモの説明を聞いて、美音はようやく納得がいった。移転することが決まっていながら『閉店します』なんて貼り紙をするのはおかしすぎる。お客さんが離れる理由にしかならない、と首を傾げていたのだ。途中で事情が変わったのであれば、無理もない話である。
「そっか……じゃあ、仕方ないか。でもまあ、あの流通会社もいいところあるよね。自分のところのスーパーじゃなくて、地元の呉竹さんに声をかけるなんて」
「いいところがあるのか、他にやむにやまれぬ事情があったのか、ちょっと読めねえところだがな」
シンゾウは、もしかしたらタクのとーちゃんあたりが一枚噛んでるのかもな、と呟いた。それでも、『スーパー呉竹』がこれからもこの町で営業を続けると聞いて、嬉しそうだった。相変わらず、要のことを『タクのとーちゃん』と呼び続けるシンゾウに、周囲から小さな笑いが起こる。笑いが収まるのを待って、トモがまた口を開いた。
「でね、呉竹さん、今まで店頭で小さく扱ってた苗や種、園芸用品なんかも置くんですって。あんな場所なのに、そんなところに手を広げて売れるのかしら?」
「あ……」
それを聞いた美音と馨は、思わず顔を見合わせた。ショッピングセンターに入るスーパーが園芸用品を置く理由は、屋上の市民農園に関係があるとしか思えなかった。
「じゃあ、市民農園の話も決まったんだね! やったー!」
「よかった……これでツキミさんも一安心だわ」
「え? ツキミさんってどなた?」
「あのね、この間……」
きょとんとしているトモ、そしてシンゾウに事情を説明する馨は、先ほどまで怒り心頭だったことなど忘れ去ったようだった。
「そうか……これはますますあの男がらみだな。よし、美音坊、今度あの男が来たら、俺からだって一杯出してやってくれ。それぐらいのことしてやっても罰は当たらねえだろう」
「シンゾウさん、太っ腹ー! じゃあ、お姉ちゃん、とびっきりのお酒、用意しておこうね!」
「とびっきりって言われても、うちじゃあ限界がありますけどね」
「あいつは値段をありがたがって酒を呑むような男じゃねえ。美音坊がこれぞと思うものなら喜んで呑むだろうさ。ついでに、つまみもいくつか見繕ってやってくれ。よろしくな」
「はーい」
明るく返事をして、美音は頭の中にある酒リストのページをめくる。
もうしばらくすれば残暑も遠のき、秋がやってくる。秋は新酒の季節だ。要が好きだと言った何本かの酒を照らし合わせて、とびっきりの酒を選ぼう。
シンゾウからだと告げながら枡にたっぷり溢れさせた酒をすすめる。要はちょっと驚き、それでも嬉しそうに口を付けることだろう。『よろしくお伝えください』なんて、照れたような顔で言うかもしれない。そんな要を想像して、美音はほっこりと笑った。
『新しいショッピングセンターはこの町にとって敵じゃない』――そう言った要の言葉を疑った日もあった。大丈夫だというのならば、根拠を示してほしいと願った日もあった。
けれど、ショッピングセンター内に入るのはこのあたりにはない種類の店ばかり、閉鎖されると思っていた『スーパー呉竹』も移転に留まった。無料バスは駅と新しいショッピングセンターの往復だけではなく、『スーパー呉竹』の跡地、つまり商店街の入り口近くまで来ることとなった。屋上には近隣住民が利用できる市民農園も設置される。ツキミだけではなく、悪いとわかっていながら川原を利用し続けていた人たちも、これからは安心して園芸に励めるのだ。
新しいショッピングセンターは敵どころか、この町の暮らしを豊かにしてくれるものだった。
彼の言葉は本当だった……。いや、むしろ本当になるように、必死に頑張ってくれたのだろう。
以前彼が言っていた『これまでやったことのない新しい仕事』というのは、きっとあのショッピングセンターの企画全般に関わることだったに違いない。経験がなく、新しい知識も必要とされる大変な仕事なのに、彼は一生懸命に取り組んだ。彼はこの町の住民ではないし、彼の家族が住んでいるわけでもないのに……
そう考えると、さらに要に対する感謝の念が大きくなった。
彼がこの町を大事に思ってくれているのは、ここに『ぼったくり』があるからだ。この店は居心地がいい、ここに来ると元気になれると言ってくれるし、家や職場から離れた場所にあるのにわざわざやってきてくれるのだからおそらく間違いない。この町を守るために、彼は懸命に努力してくれた。疲れ果て、愚痴を漏らすことを自分に禁じてまで、頑張り続けてくれた。
要が何を思っているかなんてわからない。もしかしたら彼は、この町のためというよりも、自分にとって心地よい場所を守りたかっただけなのかもしれない。それでも結果として、彼の行動はこの町のみんなを救った。どれだけ感謝しても足りないほどだ。そう思っているのは美音だけではないだろう。
――この場所をそれほど大事に思ってくれてありがとう。お礼にできることなんて何もないけれど、あなたにとっての居心地の良さを保てるように努力します。あなたが疲れてやってきたときには、ちょっとだけ元気にして送り出せるように……
秋の気配が徐々に近づき、自分の中にも今までとは違う感情がある。それに気付いた今、美音は実りの季節の訪れが少し怖いような気がしていた。
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