討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
3 / 139

† 一の罪――堕天使斯く顕現す(弌)

しおりを挟む

 冬を目前にした街。行き交う人々は皆、どこか急かされているようだった。

「しっかし、天下の執政官様の力を前に、たてつこうって輩がいるもんなんすね」
「力で獲得したものは、力によって奪われるものさ。ほら」
 多聞さんが指した、ビルの最上階の窓に視線を注ぐ。常人なら気づくはずのない距離だが、過酷な実験と訓練の末に完成する俺たち妖屠は、殺気を見逃しはしない。
「……人間を撃つのは罪悪感があるけど、こういうときに備えての副武装だもんね」
「まあ俺は殺すって決めたらデスペルタルもガンガン使ってくけどな。要は標的を仕留めりゃ口封じはいらねー」
 銃を取り出す三条を尻目に、相棒を起動させた。
「効率主義者なのはいいけど、人払いの結界も自分で張ってくれるようになったらおじさん嬉しいなー」
「さーせん。でも――――」
 三条に二人が撃ち抜かれ、残った数名が即座に死角へ身を潜めたが、逃がすつもりなどない。
「敵の殲滅を優先しちゃうのが癖なんすわ。昔、それで後悔したことがあって」
 駆け出した俺は、バス停の屋根を踏み台に跳躍。足元に魔法陣を生じさせ、爆発的な上昇で最上階へと達した。
 ガラスを突き破って飛び込み、着地と同時に宙返りで、出会い頭の銃撃を躱す。
「な……ッ!?」
 唖然と立ち尽くす最寄の一人を斬り捨て、死体が倒れるより早く、身を翻しざまに次の男へと刀を投擲した。
「こっ、こいつ人間か……?」
 貫かれた仲間を流し見つつも、最後の刺客は発砲を止めない。壁を駆け上がりながら銃を手にすると、対人の実弾に切り替える。
「まむぅッ!」
 さすがに空中からヘッドショットは敵わなかったが、右腕を吹き飛ばされて、男は尻餅をついた。
「めへめへ……ななななんでも話す! いっ、命だけは――」
「命以外も強欲に望んだゆえの結果だろうが」
 告げ終え、銃声が木霊した直後。
「なァにイキがってんだザコが。はんっ、三人ぶっ殺すのにどんだけ時間かかってんだよ」
 吐き捨てるような太い声に、俺は耳を疑った。
(……!? いつの間に――――)
 反射的に身構えた先にいた偉丈夫は構えてもいないのに、その圧力が続く動作を許さない。
「いやー、久しいね、林原くん。新しい組織でもご活躍のようで何よりだ」
「けっ。再会を祝してェとこだが、てめェがいるっつーこたァ気に入らん輩どもが出しゃばりやがったかァ多聞丸?」
 俺に感知されることなく現れた二人の大男が対峙した。
「お偉いさんのボディーガード、軍から要請があったんだよねー」
「まだクソどもとつるんでやがんのか。ま、誰に頼まれてようがここァ俺が指揮するって決まってんだわ。命令に従わなきゃどうなっか、んなこたァわかりきってる立場だよなァ多聞丸?」
 林原、と呼ばれた壮年は、多聞さんに対しても高圧的極まりない。
「おいあんた、んなことが許されると――」
「政府直属にゃゆるされんだよォ! ここァ日本だぞ。従わねェってのか?」
 振り向きざまに俺の鼻先へ、赤銅色のトンファーが突きつけられた。先端には銃口が開いている。しかし、撃鉄がない――これもデスペルタル、なのか……?
「のっ、信雄……!」
 慌てふためいて三条が駆け寄ってきた。
「ああ、あのメスガキかァ。結構いい女に育ってんな」
 得物を解除すると、彼女の顎を掴む林原。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

処理中です...