討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 十八の罪――地獄元帥(弐)

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 ルシファーも、惜しみない魔力で迎え撃つ。
「紫炎よ、奔れ――“贖いの闇十字オブスクリアス・メテオ”――――」
 以前の比ではない火力。
極大斉射ペルグランデ……!」
 さらに付け加えた詠唱で、格段に規模と威力を増した十字状の七連弾が彼に迫った。
「…………」
 明滅する世界。魔王は依然として、目を離そうとしない。
「ほう。此れを凌ぐ者が現世にいるとはな」
 あくまで彼の反応は冷静であったが、それでいて若干の感嘆がこめられている。
「なぜだ? 人間など、とっくにやめたはずなのに――こんなにも、この血がたぎる日が来るとは……!」
 満身創痍となってなお、茅原の前進は止まることを知らない。
「尚も其方そなた忘却わすれていなかったのであろうよ。人間の心とやらを」
 穏やかにルシファーが告げると、その冷淡な瞳に静かな焔が宿った。
「……いざ出でよ、魔剣カルタグラ――其処なるは、己が刃の持てる総てを揮うに足る強敵ぞ。今こそ其の真価ちからを解き放ち、かの者への手向けとせよ……!」


 十代の時分より実業家として頭角を現し、政府でもその頭脳に加え、魔法にかけられたような、との形容が流行ったほどの独特な妙味に魅了される者が後を絶たず、出世を重ねていた若き外交官・緑川真備。
 訪欧中、彼は懇意の有力者から、ある秘宝を受け取る。
「緑川くーん。ソロモン王の指環って、それ本物かなー」
「かの知恵王を登輝が知っているとはな」
 大海原をゆく船の甲板。真備はいつの間に現れた友に、手元の指環から目を移した。
「ひどいよー。ボクだって武芸以外に一般常識ぐらいは――まあ欠けてるかもしれないけどさ…………」
 露天船橋の手すりに上体を預けた茅原は、煙管をくるくると回し、口を尖らせる。
「まあ魔術オタクのキミが思うぐらいなら眉唾でもないのかもしれないけど、トランシルヴァニアの片田舎にそんなものがあったとはねー」
「古代の品ではあるが、内外共に劣化が少ない。これを賜わった方は地域の大領主。その筋に手入れをさせていたのだろうよ」
 空と海の曖昧すぎる境界に、彼は鉐色の指環をかざした。
「その筋、ねえ――――」
 茅原はゆっくりと息を吐き出し、それだけ言い残すと、階段を降りてゆく。置き去りにされた紫煙が、潮風に溶けていった。
「魔力の器としても優秀と見たが、大切なものを差し出すことで、使い魔として本来は手に負えぬような格、数の人外を使役できるようになる、か」
 一人に戻った彼は独白する。
「……そうか。フフフ、そんなにも――そんなにも私に天下を治めよと……!」
 震えが混じる声。三日月のように、その口元は歪む。


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