討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 十八の罪――地獄元帥(参)

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「その筋、ねえ――――」
 茅原はゆっくりと息を吐き出し、それだけ言い残すと、階段を降りてゆく。置き去りにされた紫煙が、潮風に溶けていった。
「魔力の器としても優秀と見たが、大切なものを差し出すことで、使い魔として本来は手に負えぬような格、数の人外を使役できるようになる、か」
 一人に戻った彼は独白する。
「……そうか。フフフ、そんなにも――そんなにも私に天下を治めよと……!」
 震えが混じる声。三日月のように、その口元は歪む。
「いいだろう。くれてやろうとも……! そう、凡てくれてやる! 新たに従えた怪魔で手放した肉体の再構成を繰り返し、力とそれを揮い続ける永遠を手に入れるのだ。あの時、届かなかった奇跡を今こそなし得る時! 迷うことは無い。対価だと? 上等だ。私ごと持ってゆくが良い……!」
 両腕を広げて空を仰ぐ真備の哄笑が、青天に響き渡った。


「魔道に手を出してから、しゃべりかた変わってきたとは思ってたけど、見た目も今や別人だね」
 茅原の言葉は嫌味ではなく、心身共に若返った結果ゆえの純粋な感想である。
「気に入らぬか? 覚悟はしていたが、いざなってみると醜いものよ」
 問いかける真備の全身は、包帯で覆われていた。
「いやいや、前も言ったじゃん。キミが一生懸命やった結果なら、ボクにとってそれが美しいんだよ。それに、どんな見てくれになろうと、友だちであることには変わりないさ」
 無邪気な笑顔で、彼は答える。
「今日も儀式あれかい?」
「ああ、この世界を塗り替えるには、いまだ及ばぬゆえな」
「……そう。くれぐれも、無理はしすぎないようにね――そのために、ボクがいるんだから」

 暗がりの中、禍々しい祭壇の前に倒れ込み、呻く男が一人。
「あ……ッ、ぐッ! ふぅうう……ぬふぅうううう――――」
 彼は右面を押さえて悶えつつ、嗤っていた。
「フフ、フッフフフ……クハハハハハ! 眼を捧げてなおも足りないと!?」
 隻眼を瞠り、虚空に吼える。
「いや、私にとってさして大切なものではなかったというだけのこと……そうか――人類の未来と引き換えだものな。秤にかけるのなら、私にとって重ければ重い程いい……!」
 石室に木霊するのは、自嘲と高揚が織り成す不気味な叫喚だった。


 閑静な居間に、少年が入ってくる。
「親父、今日は早いね」
 声をかけられた男は、背広を脱ぎながら振り返った。
「ああ、珍しくあいつが帰ってくるらしいって言ったら、残業なしで帰らせてくれたよ。ほら、最近イケメン外交官だのなんだのって、テレビよく出てるだろ。上司たちの間でも好青年って評判でな。そう言う信雄はちゃんと剣道やってきたのかー?」
「失礼な。俺は部長候補だぜー。今日なんて、また強くなったって顧問にほめられたとこだよ」
 勝ち気に応じる彼だったが、その面持ちにふと寂しげな色が差す。
「……兄貴もたまには試合観に来られるといいんだけど――って、言ってるそばからお帰りみてーだ。おーい、兄貴―! 久しぶりー」
 玄関へと走る信雄。
 しかし、

「兄貴……?」


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