【完結】愛が乗っ取られた私に手を差し伸べたのは領主様でした

ユユ

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3ヶ月後

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偶然町でお会いしたレオナード・セイラス伯爵様が困っていた私を雇ってくださった。

領主様のお屋敷に住み込んで3ヶ月になる。
私の職業は大奥様付きの介護メイド。先に働いている介護メイドのタラとモリーと3人で交代勤務をしている。


大奥様は大旦那様が亡くなってから徐々に異変が出てしまった。ボーッとしたり物忘れをしたり被害妄想が出たり。下の粗相は無いらしい。

現在、レオナード・セイラス伯爵様は28歳、伯爵様のお母様は53歳。
2年前に伯爵様のお父様が突然倒れて亡くなった。
伯爵家には他に2人の子がいたが、一人は伯爵のお兄様で 子供の頃に落馬して寝たきりになりそのまま亡くなった。もう一人は伯爵様の妹様で嫁いだが出産で亡くなった。


伯爵位を継ぐ前のレオナード様には妻がいた。
最初の妻は花嫁検査で引っ掛かり、政略結婚だったので婚姻はしたが閨事は8ヶ月を期限として禁じ監視下に置いた。
月のモノは来ず 吐き気に苦しんだが、心因性だと言い張った。腹が膨らみ出しても否定し、胎児の心音が確認できたところで離縁となった。
相手は学園時代にこっそり逢瀬を重ねていた令息で、全くタイプの違う人だったらしい。 
婚姻前の妊娠ということで妻の実家は多額の慰謝料を支払った。

二番目の妻はパーティでレオナード様に一目惚れ。先方から求婚し、婚姻に至ったのはレオナード様のお父様が亡くなる半年前。
彼女は浪費家だった。だけど嫁は好き勝手に伯爵家のお金を使えない。予算の中で買い物をするしかない。不満を漏らしていたらしい。
レオナード様のお父様が亡くなって、少し経つとお母様に異変が。二番目の妻は事あるごとに呼ばれてこき使われた。結果、屋敷を出て行ってしまい離縁となった。これが7ヶ月前。


私は屋敷に馴染み大奥様のお世話にも慣れた。

ライル兄さんからは週に一度手紙が届く。
休みはいつか…とか、ザンヌの町を案内しよう…とか、長い休みが取れたら一緒に里帰りの旅に出よう…とか、休みは泊まりで帰って来い…とか、とにかく会おうとする。

簡潔に断りの文を書き、返事を出す。

昨日はお屋敷の外を彷徨いていたようで、門番に声を掛けられると、“アイリーンの兄”と答え 会わせて欲しいと言ったらしい。だけど門番はライル兄さんを通さないようにと言われているので、立ち去るよう伝えて追い払ってくれた。


「アイリーン、脚を揉んでちょうだい」

「はい、大奥様」

マッサージ用の香油と布を用意して、最初はゆっくり優しく手のひら全体を使って滑らす。

「……」

「力加減はいかがですか」

「そのまま続けてちょうだい」

20分経過した後、今度は部分的に少し力を入れて指の腹で指圧する。

「……」

「大奥様、隣町のバラ園が見頃だという話を聞きました。大奥様は興味はございませんか?」

「……」

「私、バラの香りは全部一緒だと思っておりました。
こちらのお屋敷で違うことを知りました。
バラ園の話を聞いて、いろいろなバラの香りを嗅いでみたいなと思ってしまいました。
次の休みに一人で行ってきます。お土産買って参りますね」

「行くわ」

「え?」

「バラ園に行くわ」

「一緒に行ってくださるんですか!嬉しいです!」

「煩いわよ。明日晴れたら行くわ」

「私 明日はお休みではないんです」

「…私が行くのだからあなたは付き添うの」

「かしこまりました」

「昼食はまだかしら」

「ご用意しますか?」

「…やっぱり要らないわ」

「大奥様、腰も揉ませてください」

「…好きになさい」

「ありがとうございます」


私の勘では、大奥様の病気は仮病だと思っている。
わずかな仕草を見ると私達の反応を確認しているように見えた。そして時々忘れ方がわざとらしい。
食事をして数十分から2時間後に 食事をしていないと主張することがある。タラさんとモリーさんはさっき食べましたよと言って何とか回避しようとする。

ある日 部屋に大奥様と私だけのときに 1時間前に食べた朝食を食べていないと主張したので、メイドを呼んで食事を持ってくるよう頼んだ。小声で“多めにお願いします”と伝えた。
大奥様はいつもと違う対応に驚いた顔をした。

そしてメイドが多めの食事をテーブルに置いた。
大奥様を座らせたが、手を付けようとしない。

“食べないのですか?お腹が空いていらっしゃるのですよね?”と言って食べるよう促すと、私に何か言いたげな顔をしてから食べ始めた。もちろんすぐに食べるのを止めた。だけど“それだけしか食べないのですか?痩せちゃいますよ”と追い討ちをかけると、驚愕の表情を見せた。

それ以来、私だけのときに要求を通されたらまずいことは言わなくなった。
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