【完結】愛が乗っ取られた私に手を差し伸べたのは領主様でした

ユユ

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ライバル

【 レオナードの視点 】

“いいこと、この視察旅行でアイリーンとの距離を縮めなさい。元婚約デリックは男前だったのでしょう?という言葉があるくらいなの。油断はできないわ。ほとんどがプラス要素の伯爵位も平民で欲のないアイリーンにとってはマイナス要素。それを少しでも取り払えるようにもっと身近で頼りになる存在になるのよ。
優しく丁重に扱うのよ。分かったわね?”

母上が作ってくれたチャンスを活かそうと馬車の中で領地の説明をしたり、食事の時にはアイリーンのことを聞き出し、夜は理性を総動員しながら就寝前の会話をした。
どれ一つ、今までの女にも妻にもしたことはない。

夜の部屋に灯るあかりに照らされるアイリーンを抱きしめたい。唇を這わせながら寝巻きを脱がせて暴きたい。風呂上がりの良い香りが立つ身体を紅潮させ、君の中に収めたい。快楽を刻み なんの危機感も持たない瞳を潤ませたい。
私の全てを受け止めて欲しい。

そんなことを思っているとは気付かないアイリーンは初日よりも私との距離に慣れていってくれたし、なんの疑いもなく夜に部屋に入れる。

私が警戒しなくてはいけないのはデリックとサロウ男爵だ。
デリックはあの町の平民の中で一番の美男子で、アイリーンも一番の美人だ。アイリーンの場合はサロウ男爵夫人より美しい。

サロウ男爵は剣術に優れ、王宮騎士団に所属したほどだ。だが長男が病に倒れ、呼び戻された。
長男は女遊びが激しく致死性の性病を何処からかうつされた。それを知らない夫は妻にうつした。父親は酒の飲み過ぎで既に男爵としての役目を果たせていなかった。
戻ってきたルイス・サロウは直ぐに父親から爵位を取り上げ、父親と兄夫婦を死ぬまで幽閉した。
そして父親と長男の懈怠の後始末を短期間で成し遂げた。
良いことも悪いことも全て報告書に記してセイラス伯爵家に提出し、そしてルイス・サロウ男爵は元セイラス伯爵父上に妻を用意させた。

父上はセイラス伯爵家の親戚から選びサロウ男爵夫人にした。

サロウ男爵は堅物で冷酷無慈悲と囁かれた。
罪を犯せば容赦はしなかった。詐欺行為をする者には舌を切り落とし、女を犯す者には去勢し、正当な理由なく暴力を振るう者には労役刑を科したり脱臼や靭帯損傷をさせたり、被害によっては処刑した。盗みに手を染めれば子供でも罰した。小さな子なら手が腫れ上がるまで打ち、分別のつく歳の子供なら打った後に町の掃除をさせ、大人で悪質なら腕を切り落とした。
人を殺せば歩けないようにして獣の出る森に置き去りにした。
だがそのおかげで彼の管理するフォレットは犯罪がほぼ起こらない町となった。

女遊びなどは全くせず娼館にも行かない。言い寄られても無視する。かといって妻を愛しているわけではなく、政略結婚の妻として尊重しているだけだった。

貴族相手には作った微笑みくらいは使う男だが、平民や言い寄る女にそんなことはしない。なのに…

“何度か差し入れをしてくださいました。デザートとお花まで付いていたのです”
“笑顔しか見たことがないのですが”

冗談だろう!?何度か会っているがそんなことをする男ではなかった。

そうだ。アイリーンの調査を命じた後にサロウ男爵から届いた手紙…てっきり、アイリーン一家の善行からの言葉だと思っていた。
 
サロウ男爵はアイリーンを女として見ていて好意があるんだ。
自らデザート付きの食事と一緒に花をアイリーンの元に訪れて贈った。デリックの見舞いは理由付けのものだろう。

しかも複数回。

あの手紙は、サロウ男爵は次にチャンスがあればアイリーンを自分のものにすると言っているのだ。

つまり、私が失敗すればサロウ男爵が動くということだ。


なにのここに来てカート子爵家に泊まらなければならなくなった。
宿に泊まりアイリーンとの仲をわずかでも深めたかったのに。

カート子爵家は、私が1人目の妻と別れた後に縁談を申し入れてきていた。直ぐに断った。理由を子供だからとしたことが間違いだった。
だが伯爵家のパーティに夫妻が娘ソフィーヌを連れて来ては私に引き合わせた。女は直ぐに育つとかなんとか言われたが、毎度適当に流した。
2人目の妻と別れた後にも縁談を申し入れてきた。
娘は学園生だから婚約しておいて、卒業したら娶ればいいと。だが、しばらくは要らないと断った。
年齢的に違う相手に目を向けると思っていたのに、卒業した今もソフィーヌに婚約者はいない。

そのソフィーヌが子爵と宿に顔を出してしまったのだ。領地の為だと言われたら断る理由がない。
仕方なく応じたが、アイリーンは他の同行者と一緒にされてしまった。

「お元気になられたのですね。安心いたしました。ソフィーヌは毎夜祈りを捧げていましたのよ」

「お母様ったら。私は出来ることをしたまでですわ」

「介護メイドが優秀で幸運でした」

ソフィーヌが祈ったからといって治るわけがない。なんの役にも立たない。献身的に母上に寄り添って仮病に付き合ってくれたのはアイリーンだ。
それをあたかも手柄のように語る母娘。恥ずかしくないのか?

ああ、食事が美味くない。アイリーンの手料理は美味かった。そのアイリーンの姿は無いし、この親子が食事を不味くする。

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