【完結】愛が乗っ取られた私に手を差し伸べたのは領主様でした

ユユ

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片想い

【 レオナードの視点 】

馬鹿みたいにチラチラと頬を染めて上目遣いを送るソフィーヌ。アイリーンに勝てるところといえば貴族に生まれたということだけ。抱きたいとも思わなければ妻にしたいとも思わない。

「よろしければ今夜は一緒にお酒でも、」

「疲れを取りたいんだ。遠慮しておく」

「そうだ、明日はソフィーヌを同行させましょう」

「子爵。視察は遊びじゃないんだ。他領なら交流として考慮しただろう。だが此処は違うだろう?カート家にはセイラス家の領地の一部の管理を任せているのにそのような交流をしなければならないと本気で思っているのか?
ソフィーヌは薬草の知識に長けているのか?質問をしても他の者に頼ることなく答えられるのか?」

「…いいえ」

「役に立たない者をわざわざ同行させるのは、私の仕事を軽んじているからか?
ためにならない持て成しは止めてくれ。知識のない令嬢を伴わせるなど足手纏いなだけだ。
視察は此処だけではない。他にも回らなくてはいけない。疲れさせないでくれ」

「申し訳ございません」

「そういえば、伯爵の侍女は可愛いですね」

ソフィーヌの一つ上のカート子爵家長男パトリックが笑顔で話を振った。

「……」

「アイリーンでしたね。彼女、借りてもいいですか?」

「駄目だ」

「彼女だって視察に連れて行っても役に立たないでしょう」

「3カ所で役に立つ。アイリーンはハーブに詳しい」

「そうなのですね」

「カート家にも侍女はいるだろう。気軽に他家の侍女を借りようとしないでくれ。彼女は物ではない」

嫌な奴だ。


食事を終えて客室へ行き、湯浴みをしてアイリーンの客室へ向かった。
アイリーンは無防備に寝巻きの姿で誰かも確かめずにドアを開けた。
思わず肩を掴み押し入るように部屋に入り注意をした。

私と離れた後の話を聞いて愕然とした。
騎士達とすっかり親しくなり休日に一緒に出かけるという話にまでなっていた。
しかもリヨン卿のことをよく知っていて、既に一緒に出掛けていたらしい。とても信頼しているようだった。

アイリーンと恋仲にならないという誓約書をリヨン卿に書かせたが、それを理由にしてリヨン卿から手を引かせても、そのことがバレたらアイリーンから嫌われてしまう。

駄目だ。


アイリーンの客室を出て、自分の客室に戻った。だが香りが違うことに気が付いた。
灯りを強めて部屋を見回すとベッドの毛布が盛り上がっていた。
近寄って捲るとソフィーヌだった。下着を着けずに透けるほど薄いナイトドレスを着ていた。この異臭はソフィーヌの香水の臭いらしい。

呼び鈴をけたたましく鳴らすとメイドが駆けつけた。

「今すぐ急いで子爵を呼んでくれ」

「かしこまりました」

ソフィーヌの着てきたガウンを窓から投げ捨てた。
ソフィーヌはかなり戸惑っていた。
きっと離婚してから時が経って溜まってるだろうからそのまま既成事実を狙ったのだろう。
どっちの入れ知恵だ?


少し待つと子爵が現れた。

「どうしましたか」

ベッドに居座るソフィーヌの髪を掴んで引き摺りだした。

「キャア!痛いっ!」

「ソフィーヌ!?」

子爵は知らないようだな。

「客人の部屋に勝手に忍び込むとはな」

続いて子爵夫人が駆け付けた。

「ソフィーヌ!」

「こんな娼婦のような真似事をするのは何故だ」

「ソフィーヌは伯爵を癒そうとしただけです!」

夫人の入れ知恵か。

「私は領主ではなかったのか?」

「申し訳ございません」

「ソフィーヌがこんなに慕っているのにあんまりですわ!」

「何を言い出すんだ!」

「だって あなた」

「縁談も断ったし、視察は遊びではないとも言ったし、疲れを取りたいとも言ったはずだ。娼婦を寄越せとは言っていない」

「キャア!」

「ひっ!」

ソフィーヌを夫人に向かって投げるように押し、掴んだ髪を放すと、2人で倒れこんだ。

「子爵、部屋を変えてくれ。そしてソフィーヌに一番長く働いている私兵と夫人の甥だと言った私兵を監督役につけてくれ。次に問題を起こせばその2人に責任を取ってもらう」

「マ、マリクはっ」

「夫人、ソフィーヌが問題を起こさなければいい話だ。簡単だろう。彼女は成人していて学園も卒業しているのだから。
まさか、問題しか起こさない娘を私の妻にと縁談を申し込んだのか?」

「そ、そんなことは」

「子爵。本当はこの部屋に潜んでいる不審者を見つけた時点で殺されても文句を言えなかったのだぞ。
もう我々全員分の部屋を確保できる宿は無いのだから、明後日の朝まで子爵の責任で何とかしてくれ」

「はい。申し訳ございませんでした」


子爵はメイドに2人を部屋に下がらせて、私を別の客室へ案内して戻っていった。

手を洗うも、香水が移ってなかなか臭いが消えない。アイリーンの香水だったら…。


翌朝、外に出ると、先に外に出て待っていたアイリーンが長男パトリックと話をしていた。

「おはようございます、伯爵。僕は薬草もハーブも詳しいです。同行します」

「そうか。助かるよ」

「アイリーン、馬に乗せてあげるよ」

「遠慮をさせていただきます」

「どうして?」

「パトリック。移動しながら教えているんだ。アイリーンは私と馬車で行く」

「では、僕も乗せてください」

何なんだこいつは。

仕方なく乗せると アイリーンに話しかけ続けていた。だが内容はハーブのことなので文句の言いようがない。

「アイリーンは菓子にもハーブを使うのか。すごいね」

「時々ですけど。
子供にはその方が摂取しやすいので」

「ハーブティーは子供向けではないからね。実に素晴らしい」

「いえ、母がやっていたことですので私は何も」

「君の作った菓子が食べたかったな。
今度セイラス邸に遊びに行こうかな」

「私は大奥様付きですので、調理はしません。厨房にレシピをお伝えします」

「アイリーンに作って欲しいんだよ。
そうだ、」

「パトリック。君とアイリーンを関わらせるつもりはない」

明らかにパトリックはアイリーンに興味があるどころか手を出そうとしている。

アイリーンを妻に迎えない限り、こんな心配を続けないとならないのだな。


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